肥満はなぜ起こるの?食べ過ぎだけではない肥満の原因

肥満の原因となるストレスホルモン「コルチゾール」とは?
「最近、体重が増えてきた。」
「食べる量は変わっていないのに太ってきた。」
このようなお悩みを持つ方は少なくありません。
実は肥満は、「食べ過ぎ」と「運動不足」だけでは説明できない病気です。
近年の研究では、ストレス・睡眠不足・ホルモン・脳の働きなどが食欲や代謝に大きく関わっていることが分かっています。
最近、忙しくなっていませんか?
体重が増え始める時期を振り返ると、
- 仕事が忙しくなった
- 昇進して責任が増えた
- 子育てが始まった
- 受験勉強が始まった
- 家族の介護をするようになった
- 人間関係のストレスが増えた
という方が非常に多くいらっしゃいます。
「忙しくなって運動しなくなったから」と思われるかもしれません。
もちろんそれも一因ですが、それだけではありません。
忙しさやストレスそのものが、身体を太りやすい状態へ変えてしまうことが知られています。
ストレスで「コルチゾール」が増える
ストレスを感じると、副腎という臓器からコルチゾールというホルモンが分泌されます。
コルチゾールは、本来は命を守るために必要なホルモンです。
例えば、
- 感染症
- ケガ
- 睡眠不足
- 精神的ストレス
などに対応するため、身体にエネルギーを供給します。
しかし、ストレスが長期間続くとコルチゾールが慢性的に高い状態となり、肥満につながりやすくなります。

コルチゾールはなぜ太りやすくするのでしょうか?
コルチゾールには次のような作用があります。
① 食欲が増える
特に、
- 甘いもの
- 脂っこいもの
- 高カロリー食品
を食べたくなることが知られています。
「ストレスがたまると甘いものが欲しくなる」
というのは、意志が弱いからではなく、ホルモンの影響でもあります。
② 内臓脂肪がつきやすくなる
コルチゾールが高い状態では、脂肪が特にお腹周り(内臓脂肪)に蓄積しやすくなります。
内臓脂肪は、
- 糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
- 脳卒中
- 心筋梗塞
などの原因となることが分かっています。

③ 筋肉が減り、基礎代謝が低下する
慢性的なストレスでは筋肉が分解されやすくなり、基礎代謝が低下します。
つまり、以前と同じ食事量でも太りやすい身体になってしまうのです。
睡眠不足も肥満の大きな原因です
睡眠不足は、単に疲れるだけではありません。
肥満に関係するホルモンのバランスを大きく崩します。
睡眠不足になると、
- コルチゾールが増える
- 食欲を抑える「レプチン」が減る
- 食欲を高める「グレリン」が増える
ことが知られています。
その結果、
- 夜食が増える
- 甘いものが欲しくなる
- 食べても満足しにくい
という状態になります。
睡眠時間が短い人ほど肥満になりやすいことは、多くの研究で示されています。
「意志が弱い」から太るわけではありません
肥満は、「自己管理ができないから」と考えられがちです。
しかし現在では、肥満は脳・ホルモン・遺伝・生活環境が複雑に関係する慢性疾患と考えられています。
だからこそ、「頑張る」だけでは限界があります。
では、どうすればよいのでしょうか?
ストレスをゼロにする必要はありません
仕事や子育てをやめることはできません。
大切なのは、
- 趣味を持つ
- 軽い運動をする
- 家族や友人と話す
- 入浴やリラックスする時間を作る
など、自分なりのストレス解消法を持つことです。
睡眠を「ダイエットの一部」と考えましょう
ダイエットというと、
- 食事
- 運動
ばかりに目が向きがちですが、
睡眠も立派な治療です。
できれば毎日7〜8時間程度の睡眠を目標にし、就寝・起床時間を一定に保つことをおすすめします。
必要に応じて医学的な治療を受けましょう
生活習慣の改善だけでは十分な減量が難しい方も少なくありません。
近年では、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬(マンジャロ・ゼップバウンドなど)により、食欲をコントロールしながら健康的な減量を目指せるようになりました。
当院では、薬だけに頼るのではなく、生活習慣の改善と組み合わせることで、「薬を卒業できること」を目標にサポートしています。
まとめ
肥満は、食べ過ぎだけで起こるものではありません。
ストレスや睡眠不足は、コルチゾールや食欲ホルモンのバランスを変化させ、知らないうちに太りやすい身体をつくってしまいます。
「最近太りやすくなった」と感じる方は、食事や運動だけでなく、睡眠やストレスにも目を向けてみてください。
当院では、医学的な視点から肥満の原因を一緒に考え、一人ひとりに合った治療をご提案しています。
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参考文献
- 日本肥満学会. 『肥満症診療ガイドライン2022』
- European Association for the Study of Obesity (EASO). Obesity as a chronic disease.
- Adam TC, Epel ES. Stress, eating and the reward system. Physiol Behav. 2007.
- Spiegel K, Leproult R, Van Cauter E. Impact of sleep debt on metabolic and endocrine function. Lancet. 1999.
- Knutson KL, Van Cauter E. Associations between sleep loss and obesity. Nat Rev Endocrinol. 2008.