手が震える原因とは?振戦の種類・考えられる病気・MRIが必要な場合を解説

目次
手の震えでお悩みではありませんか?
「文字を書こうとすると、手が細かく震えてうまく書けない」 「お茶を飲もうとしたときにコップが揺れてこぼれそうになる」 「人前で話すとき、予想以上に手が震えて恥ずかしい思いをした」
日常生活のふとした瞬間に手が震えると、「何か重大な脳の病気なのではないか」と不安を感じてしまうものです。
このような「手の震え」は医療の世界では「振戦(しんせん)」と呼ばれており、病名ではなく、あくまで「症状」の名前です。手の震えが起こる背景には、緊張や疲労といった一時的な原因から、本態性振戦、パーキンソン病、あるいは甲状腺の病気など、さまざまな原因が隠されています。
この記事では、手の震えの種類や考えられる原因、受診の目安について、脳神経外科の診療に加え、脳神経内科の診察にも対応している当院が分かりやすく解説します。
手の震え(振戦)には種類があります
手の震え(振戦)の原因を考えるうえで重要なのは、どのような姿勢や動作で震えが現れるかを確認することです。
手の震えは、じっとしているときに起こる「安静時振戦」と、姿勢を保つときや動作中に起こる「動作時振戦」に大きく分けられます。動作時振戦は、さらに姿勢時振戦、運動時振戦、企図振戦などに分けられます。ここでは、読者の方が震え方を確認しやすいよう、代表的な4つのタイプに分けて説明します。
① 安静時振戦(あんせいじしんせん)
手を机の上や膝の上に置いて、リラックスしてじっとしているときに起こる震えです。手を使って何か動作を始めると、一時的に震えが止まるか軽くなるのが特徴です。
② 姿勢時振戦(しせいじしんせん)
「前へならえ」のように腕をまっすぐ伸ばして一定の姿勢を保ったり、コップを手に持ったままじっと静止させようとしたりするときに目立つ震えです。
③ 運動時振戦(うんどうじしんせん)
手を動かしている最中に現れる震えです。お箸で食べ物をつかむ、文字を書く、コップを口元へ運ぶなどの動作中に震えが目立ちます。
④ 企図振戦(きとしんせん)
特に、指先で自分の鼻に触れる、コップを口元へ運ぶなど、目標に近づくほど震えが大きくなるタイプです。

手が震える主な原因(一時的な原因と病気)
手が震える原因は、日常生活の中にある一時的なもの(生理的なもの)と、医療機関での適切な診断が必要とされる病気によるものの2つに大別されます。
一時的・生理的な原因
緊張や疲労などによる一時的な震えは、誰にでも起こることがあります。ただし、震えが繰り返す、長く続く、日常生活に支障がある場合は、ほかの原因がないか一度確認することが大切です。
- 緊張・不安: 人前で発表するときなど、交感神経が優位になると手が細かく震えます。
- 睡眠不足・疲労: 体が極度に疲れていると、筋肉のコントロールが不安定になり震えが出やすくなります。
- カフェインの過剰摂取: コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインの摂りすぎで手が震えることがあります。
病気が原因の震え
長引く手の震えや、徐々に強くなる震えの背景には、以下のような病気が隠れている可能性があります。
- 本態性振戦: 手の震えを訴えて受診される方の中で最も頻度が高いとされる疾患です。
- パーキンソン病: 脳内のドパミンという物質が減ることで、スムーズな運動ができなくなる神経の病気です。
パーキンソン病では手の震えだけでなく、歩幅が小さくなる、何もないところでつまずきやすくなる、動作がゆっくりになるなどの症状がみられることがあります。
→「何もないところでつまずく原因とは?脳の病気のサイン?」もあわせてご覧ください。 - 小脳疾患(小脳梗塞・小脳腫瘍など): 体のバランスを司る「小脳」に病変があると、目的の物に近づくほど震えが大きくなる「企図振戦」や、ふらつきなどが現れることがあります。
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血): 脳の運動やバランスに関係する部分が障害されると、不随意運動や手の震えが現れることがあります。ただし、[脳卒中(※脳梗塞の初期症状解説記事へリンク)]では震えだけでなく、突然の麻痺やしびれ、言葉の障害、ふらつきなどを伴うことが重要なサインです。
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など): 甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。若い女性にも多く、手の細かい震えのほか、動悸、急激な体重減少、汗をかきやすいなどの症状を伴うことがあります。
- 薬剤性: 服用しているお薬(胃腸薬、精神安定剤、気管支拡張薬など)の副作用として手が震えることがあります。
本態性振戦とパーキンソン病の違い(比較表)
手の震えを起こす代表的な2つの疾患、「本態性振戦」と「[パーキンソン病の特徴をまとめました。ご自身の震えがどちらに近いか、目安として参考にしてください。

| 特徴 | 本態性振戦 | パーキンソン病 |
|---|---|---|
| 震えやすい場面 | 姿勢を保つとき・動作時 | 安静時(じっとしているとき) |
| 左右差 | 比較的少ない(両側性) | 片側から始まることが多い |
| 主な部位 | 両手、頭(首)、声など | 手足など |
| ほかの症状 | 原則として震えが中心 | 動作の遅さ、筋肉のこわばり、歩行障害など |
| MRIの役割 | 別の病気がないかを確認 | 別の病気がないかを確認 |
| 診断 | 診察を中心に判断 | 診察を中心に判断 |
※上記は典型的な傾向です。本態性振戦でも左右差がみられる場合や、パーキンソン病でも動作時に震えが現れる場合があります。震え方だけで自己診断せず、ほかの症状と合わせて医師が判断します。
- 本態性振戦: 本態性振戦そのものは、一般に生命を直接脅かす病気ではありません。家族内で同じような震えがみられる(家族歴)こともありますが、家族歴がない方にも発症します。ただし、ほかの病気による震えと区別するため、一度は医師の診察を受けることが大切です。
- パーキンソン病: 早期に診断し、薬物療法やリハビリテーションを適切に組み合わせることで、症状を抑え、日常生活を長く維持できる可能性があります。また、近年では、無理のない運動を継続することが、運動機能だけでなく睡眠や生活の質(QOL)の維持にも役立つことが報告されています。
▶ パーキンソン病と運動|「無理のない運動」が睡眠や動きを支える理由【最新研究論文より】
【セルフチェック】こんな手の震えは受診を
手の震えの状態や、同時に現れる症状によって、受診の緊急性が異なります。
次の症状が突然現れたら、速やかに救急要請を
脳卒中など緊急性の高い病気の可能性があります。診療時間を待たず、救急車を呼ぶなど、速やかに受診してください
[ ] 突然、片側の手足に力が入らなくなった(麻痺)
[ ] 顔のゆがみや、ろれつの回りにくさがある
[ ] 急に立てない、歩けないほどふらついた
[ ] 突然の激しい頭痛や意識の異常がある
[ ] 震えとともに、これらの症状が突然現れた
早めに専門外来へ相談したい症状
じわじわと進行する慢性の病気が隠れている可能性があるため、診療時間内に受診しましょう。
[ ] 震えが数週間〜数ヶ月かけて徐々に強くなっている
[ ] 片側だけの震えが続いている
[ ] 以前に比べて全体の動作が遅くなった
[ ] 書字、食事(お箸やコップ)、着替えなどに支障が出ている
[ ] 歩くときの歩幅が小さくなった、前かがみになる
[] 何もないところでつまずくことが増えた
何もないところでつまずく症状が気になる方は、こちらの記事も参考にしてください。
手が震えるときは何科を受診する?
手の震え(振戦)の専門科は、一般的に「脳神経内科」または「脳神経外科」です。
- 脳神経外科: 脳梗塞、脳出血、脳腫瘍など、脳の構造や血管に関係する病気を診療し、必要に応じてMRIなどの画像検査を行います。
- 脳神経内科: パーキンソン病や本態性振戦など、脳・神経・筋肉に関係する病気を、診察や薬物療法を中心に診療します。
当院では脳神経外科の診療に加え、脳神経内科の診察にも対応しています。そのため、「どの科に行けばいいかわからない」という段階でも迷わずご相談いただけます。
診察・血液検査・MRIの役割

手の震えの原因を見極めるためには、適切な検査ステップが重要です。それぞれの検査に異なる役割があります。
医師による診察(問診・神経学的診察)
手の震えの診断では、震え方を確認する診察が重要です。医師が「いつ、どのように震えるか」「他の神経症状(動作の遅さや筋肉のこわばり)がないか」「現在どんなお薬を飲んでいるか」を詳しく確認し、総合的に判断します。
血液検査
症状に応じて、甲状腺機能や電解質などを調べる血液検査を行います。
MRI・MRA検査の役割
本態性振戦やパーキンソン病は、一般的なMRI・MRAだけで確定診断する病気ではありません。 MRI検査(※[MRIで分かる病気の解説記事へリンク])では、脳梗塞、脳腫瘍、正常圧水頭症など、手の震えや動作の変化に関係する脳の病気がないかを確認します。また、症状や診察所見に応じて、脳血管の状態を確認するためにMRAを組み合わせることもあります。
MRI検査が初めてで「どのように検査を受けるのか不安」という方は、検査当日の流れをまとめた「MRI検査の流れ」の記事も参考にしてください。
➡ MRI検査の流れ
また、「MRAとは何を調べる検査なの?」「MRIとの違いは?」という方は、MRAについて詳しく解説した記事をご覧ください。
MRIの結果だけで本態性振戦やパーキンソン病を診断することはできないため、問診や神経学的診察と合わせて判断します。当院では院内で頭部MRI・MRA検査に対応しています。
治療とリハビリ

手の震えの治療は、原因となった病気に合わせて選択します。日常生活への影響が大きい場合には、患者さんの持病や症状に応じて薬物療法を検討します。薬の効果や使用できる条件(持病による制限など)には個人差があるため、医師の診察を受けて選択することが大切です。
手の震えに対するリハビリテーション
手の震えによって食事、書字、着替えなどに支障がある場合は、原因疾患の治療に加えて、リハビリテーションを検討することがあります。
作業療法では、震えによる生活上の影響を減らすため、動作方法や道具を工夫します。たとえば、食具や筆記具の持ち方、姿勢、動作手順を確認し、必要に応じて持ち手の太さや重さ、形状を調整した自助具を検討します。パーキンソン病の診療では、薬物療法に加えてリハビリテーションも治療の一部として扱われています。
近年では、適度な運動を継続することが、動きやすさだけでなく睡眠や生活の質(QOL)の維持にも役立つ可能性が報告されています。
▶ パーキンソン病と運動|「無理のない運動」が睡眠や動きを支える理由【最新研究論文より】
当院で行っている診療
当院では、脳神経外科の診療に加え、脳神経内科の診察にも対応しています。問診や神経学的診察を行い、症状や診察所見に応じて、院内で頭部MRI・MRA検査を実施します。
また、手の震えや原因となる病気によって日常生活に支障がある場合は、患者さんの状態に応じて治療やリハビリテーションを検討します。
よくある質問(FAQ)
緊張すると手が震えるのは病気ですか?
多くは緊張によって生理的な震えが強くなったものです。ただし、特定の動作のときだけ震える、震えによって仕事や日常生活に支障がある場合は、ほかの原因も含めて医療機関にご相談ください。
手が震えるのは年齢のせいですか?
年齢とともに増える「本態性振戦」の可能性もありますが、自己判断で放置するのはおすすめしません。パーキンソン病などの初期症状であるケースもあるため、まずは一度医師の診察を受けましょう。
手の震えで受診したら必ずMRIは必要ですか?
すべての方に必須なわけではありません。手の震えの診断では、震え方を確認する診察が重要です。そのうえで、脳梗塞や脳腫瘍、小脳の病気などが疑われる場合に、それらの病気を確認するためにMRI検査をご提案します。
パーキンソン病は治る病気ですか?
現代医学において根本的に完治させることは難しいですが、優れた治療薬が多く開発されています。早期に診断し、薬物療法やリハビリを適切に組み合わせることで、症状を抑え、日常生活を長く維持できる可能性があります。
本態性振戦は遺伝しますか?
本態性振戦には、家族内で同じような震えがみられる(家族歴がある)ことがあります。ただし、家族歴がない方にも発症します。
「これくらいで受診してもいいのかな」と悩まれている方へ
手の震えには、緊張や疲労による一時的なものから、本態性振戦、パーキンソン病、甲状腺疾患、薬剤の影響、脳の病気までさまざまな原因があります。震えが出るタイミングや左右差、ほかに伴う症状を確認することが、原因を考えるうえで重要です。
当院では、脳神経外科の診療に加え、脳神経内科の診察にも対応しています。症状や診察所見に応じて頭部MRI・MRA検査を行い、手の震えの背景に脳の病気がないかを確認します。また、必要に応じて治療やリハビリテーションについてご案内します。
手の震えが続く、徐々に強くなる、日常生活に支障がある場合は、「これくらい」と自己判断せず、どうぞお気軽に一度ご相談ください。
医師プロフィール
院長:林 祥史
私立灘高校卒/東京大学医学部医学科卒
けやき脳神経リハビリクリニック 院長
資格・所属学会
【資格】 日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医、日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医
【所属学会】 日本脳神経外科学会、日本脳血管内治療学会、日本脳卒中学会、日本リハビリテーション医学会、日本頭痛学会、日本めまい平衡医学会、American Academy of Family Physicians、Cambodian Medical Association
クリニック情報
けやき脳神経リハビリクリニック
院長:林 祥史(・日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医・日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医)
所在地:東京都目黒区下目黒2-14-13下目黒HAPPYビル1~3階(受付2階)
診療科目:脳神経外科・リハビリテーション科・内科
検査設備:MRI、レントゲン、超音波など
公式サイト:https://keyaki-nrc.com/