レントゲン異常なしでも腰痛・しびれが続く方へ。MRIでわかる本当の原因とは?

「レントゲンは異常なしと言われたのに、なぜこんなに痛いんだろう…」
「湿布や痛み止めで様子を見ていても、一向に良くならない…」
その長引く腰痛や足のしびれ、もしかしたらレントゲンでは見つけられない「隠れた病気」が原因かもしれません。
この記事では、レントゲン検査だけではわからない痛みの原因を突き止める「MRI検査」について、分かりやすく解説します。
この記事でわかること
- レントゲンで「異常なし」と言われる本当の理由
- なぜMRIが腰痛・しびれの診断に不可欠なのか
- 似ているようで違う「ヘルニア」と「脊柱管狭窄症」
- レントゲンに映らない「隠れ骨折」を見抜くMRIの仕組み
長年のつらい症状の原因を突き止め、適切な治療への第一歩を踏み出しましょう。
なぜ?レントゲンで「異常なし」でも腰痛が続く理由
腰の検査には主に「レントゲン」「CT」「MRI」がありますが、それぞれ見えるものが全く違います。これを建物に例えるなら、以下のようになります。
- レントゲン: 建物の骨組み(骨の形)を見る検査
- CT: 骨組みをいろいろな方向や3Dで、より詳しく見る検査
- MRI: 建物の中の配線(神経)やクッション材(椎間板)、壁の内部(骨の中)まで見る検査
腰痛やしびれの多くは、骨の形だけでなく、神経や椎間板、骨の内部で起きている異常が原因です。MRIは、その核心部分を直接見ることができる、唯一の検査なのです。
レントゲン・CT・MRIの違いを比較|あなたの症状に必要な検査は?
検査の種類 | 得意なこと(見えるもの) | 不得意なこと(見えないもの) |
---|---|---|
レントゲン | 骨の形(骨折線、変形、ずれ) | 神経、椎間板、筋肉、骨の内部の変化 |
CT | 骨の立体的な構造、微細な骨折、石灰化病変 | 神経や椎間板の詳細はMRIに劣る |
MRI | 神経、椎間板、筋肉、骨の内部(骨髄) | 骨の表面の細かい情報はCTに劣る |
MRIで発見できる腰痛・しびれの2大原因
腰痛、特に足のしびれを伴う場合、その多くは神経が圧迫されることで起こります。MRIは、「何が、どのように神経を圧迫しているか」を驚くほど鮮明に描き出します。代表的な病気が「腰椎椎間板ヘルニア」と「腰部脊柱管狭窄症」です。
1.腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)|歩くと痛む、休むと楽になる
- 原因
- 加齢などにより、神経の通り道である「脊柱管」というトンネルが狭くなることで神経を圧迫します。古いトンネルが老朽化して狭くなるイメージです。
- 症状の特徴
- 歩くと足が痛くなったりしびれたりする(間欠性跛行(かんけつせいはこう))
- 少し休むとまた歩けるようになる
- 前かがみになると楽になることが多い
2. 腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんへるにあ)|急な激痛や坐骨神経痛
- 原因
- 背骨のクッションである「椎間板」の中身が飛び出し、神経を圧迫します。あんパンを強く押したら中身のあんこが飛び出すイメージです。
- 症状の特徴
- 急な強い腰の痛みや、お尻から足にかけての痛みやしびれ(坐骨神経痛)
- 咳やくしゃみをすると痛みが強くなる
- 特定の姿勢で痛みが強くなる
項目 | 脊柱管狭窄症 | 椎間板ヘルニア |
---|---|---|
原因 | 加齢による脊柱管の狭窄(トンネルが狭くなる) | 椎間板の飛び出し |
症状 | 歩くと痛むが、休むと治る(間欠性跛行) | 急な強い痛みや足のしびれ |
イメージ | 古いトンネルの老朽化 | クッションの中身の飛び出し |
レントゲンでは「骨と骨の間が狭い」という間接的な情報しか得られませんが、MRIは原因となっている組織と、被害を受けている神経そのものを直接写し出すことができるのです。
レントゲンに映らない「隠れ骨折」もMRIなら一目瞭然
「骨折ならレントゲンでわかるはず」そう思うかもしれません。しかし、特に高齢の方の圧迫骨折などでは、レントゲンやCTでははっきりとしない「隠れ骨折(不顕性骨折)」が存在します。
症例:CTでも不明瞭だった圧迫骨折がMRIで明らかに
下の画像は、尻もちをついて腰痛を訴えた患者様のものです。CT画像では骨の形に大きな異常は見られませんが、MRI画像では骨の内部に白い信号がはっきりと確認できます。これが、骨折に伴う内出血や炎症(骨髄浮腫)のサインです。

明らかな骨折・変形はわかりにくい


椎体内に骨髄浮腫(こつずいふしゅ:白い部分)(➡)が認められる。
このように、MRIは骨折に伴う内部の「内出血」や「むくみ」を捉えることで、骨折の「新鮮度」まで評価できます。これにより、「現在の痛みの原因がこの骨折である」と確定でき、コルセット固定などの適切な治療につなげることができるのです。
なぜ見える? MRIが骨の内部の変化まで捉える仕組み
その秘密は、MRIが体の中にある無数の「水分子」を巧みに利用して画像を作っている点にあります。私たちの体の約60%は水分でできています。MRIは、この水分(水分子)に対して、強力な磁石と特殊な電波を使って「元気ですか?」と呼びかけるようなものです。
体の中の水分は、場所によって状態が異なります。例えば、炎症を起こしていたり、内出血していたりする場所(浮腫)には、水分子が普段より多く集まってきます。MRIは、この水分が集まっている場所からの信号を強くキャッチします。
この信号の強弱をコンピューターが解析し、信号が強い場所(=水分が多い場所)を白く、弱い場所を黒く表示することで画像を作ります。これが、MRIで骨の中の内出血(骨髄浮腫)が白く光って見える理由です。
撮影方法(T1とT2)で白黒が変わる
面白いことに、MRIは撮影の仕方を変えることで、意図的に白と黒の写り方を変えることができます。
T2(ティーツー)強調画像やSTIR(エスティーアイアール)画像
異常がある場所(炎症や浮腫など)の水分を白く写し出します。特にSTIR画像は、T2強調画像の特徴に加え、脂肪からの信号を意図的に抑制して黒く写すという強力な機能を持っています。骨の中(骨髄)には脂肪が多く含まれるため、通常のT2画像では炎症(白)と脂肪(白)が見分けにくいことがあります。STIRでは脂肪が黒くなるため、炎症や内出血による水分だけの変化が純粋に白く際立ち、椎体に起きた異常をより鮮明に捉えることができるのです。
T1(ティーワン)強調画像:
逆に水分を黒く写し、脂肪を白く写します。体の基本的な構造(解剖)を見たり、慢性的な変化を捉えたりするのに適しています。
このように、特徴の違う複数の写真を撮り比べることで、医師は病気の性質をより正確に診断しているのです。
よくあるご質問(Q&A)
MRI検査の時間はどのくらいかかりますか?
検査する範囲や目的によりますが、腰椎の場合、撮影自体は10分~15分程度です。
閉所恐怖症なのですが、MRI検査は受けられますか?
MRIは狭いトンネル状の装置の中で行いますが、当院では閉所が苦手な方でも安心して検査を受けていただけるよう、様々な工夫をしております。不安な方は、事前に遠慮なくご相談ください。
腰痛やしびれは、何科を受診すれば良いですか?
まずは整形外科または脳神経外科の受診をお勧めします。整形外科は骨、関節、筋肉、神経といった運動器の専門家であり、脳神経外科は脳、脊髄、末梢神経を専門としています。
特に当院はMRI検査が可能ですので、レントゲンでは診断のつかない椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、隠れ骨折などの原因を精密に調べることができます。
MRI検査の結果、手術や専門的な治療が必要と判断された場合には、近隣の連携病院や専門の整形外科へスムーズにご紹介することも可能ですので、ご安心ください。
長引く腰痛・しびれは諦めずに専門医へ相談を
「レントゲン異常なし」は、決して「問題なし」ではありません。その痛みの裏には、神経や椎間板からのSOSが隠れているかもしれません。
- レントゲンに映らない神経のトラブルや隠れ骨折は、MRIでなければ発見できないケースが非常に多いです。
- つらい症状を自己判断で放置せず、まずは専門医に相談することが大切です。
- 原因がはっきりと分かれば、あなたに合った最適な治療法が見つかり、症状改善への道が開けます。
あなたの「体からのサイン」を見逃さず、まずはご相談ください。
当院ではMRI検査も可能です。ご自身の症状について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。