パーキンソン病と運動|「無理のない運動」が睡眠や動きを支える理由【最新研究論文より】

2025年に発表されたパーキンソン病に関する最新の研究論文を紹介
パーキンソン病の4大兆候
パーキンソン病というと、
- 手足がこわばる(固縮)
- 足が出にくい、小刻みになる(無動・歩行障害)
- 転びやすい(姿勢反射障害)
- 楽にしていても手足が震える(安静時振戦)
といった運動の症状がよく知られています (過去のブログにも掲載されていますので、こちらをご参照ください)
一方で、実際の生活の中では、
- 夜ぐっすり眠れない
- 日中の疲れが取れない
- 生活の質(QOL)が下がっていると感じる
といった “睡眠や日常生活の困りごと” に悩まれている方も非常に多いのが現実です。
運動がパーキンソン病患者の睡眠の質と身体機能に及ぼす影響
記載:PLOS(Public Library of Science) Oneという国際学術誌に、
Exercise:The key to enhancing sleep quality and physical function in Parkinsons disease?(運動はパーキンソン病における睡眠の質と身体機能を高める鍵となるのか?)という論文が掲載されました
本研究は、パーキンソン病のある方に対する「運動」の効果について、これまで世界中で行われてきた研究を統合・解析した※1システマティックレビュー、メタアナリシス研究です
※1システマティックレビュー・メタアナリシスとは、世界各地で実施された多数の研究結果を集め、一定の基準に基づいて整理・統合し、全体としてどのような傾向や効果があるのかを検証する研究方法です
単一の症例や一施設の結果ではなく、62件・3,274名分のデータを統合して分析している点が大きな特徴です
この論文では、運動がパーキンソン病の方の
- 睡眠の質
- 運動機能
- バランス能力
- 歩行能力
- 生活の質(QOL)
を有意に改善することが示されました
特に「運動=筋力や体力をつけるもの」という狭い視点ではなく、睡眠や生活の質といった非運動症状にも効果があることが、統計学的に示された点が重要です
ここでいう「運動」とは何か?
本論文でいう「運動」とは、単なる体操や自主トレを指すものではありません
計画的・継続的に行われたリハビリテーション的運動介入を指しています
- 有酸素運動(ウォーキング、トレッドミル、自転車エルゴメーターなど)
- 中国伝統運動(太極拳、気功、八段錦、五禽戯など)
- レジスタンストレーニング(筋力トレーニング、負荷を伴う運動)
- 水中運動・アクアセラピー
- ヨガ、ダンス(タンゴ)などの運動療法
専門家の管理下で一定期間・一定頻度行われた運動である点が重要です
その結果、次のような傾向が示されました。
睡眠の質
運動を取り入れている方は、睡眠の質が改善する傾向 がみられました。
「寝つき」「途中覚醒」「熟睡感」などに良い影響が出る可能性が示唆されています
動きやすさ(運動機能)
- 動作のスムーズさ
- 立ち上がりや歩行の安定
といった 基本的な動き に、前向きな変化が見られました
バランス・歩行
- 転びにくさ
- 歩幅や歩くスピード
など、日常生活の安心感につながる部分でも改善が確認されています
生活の質(Quality Of Life : QOL)
「できることが増える」「不安が減る」ことで、生活の満足度が向上する可能性 も示されました
今回のメタ分析から、運動はパーキンソン病の方にとって、睡眠の質や動きやすさ、バランス、歩行、そして生活の質を支える大切な非薬物療法の一つである可能性が示されました
どんな運動が良いか?
- ウォーキングなどの有酸素運動
- 筋力トレーニング
- 水中運動
- 太極拳・ヨガ・ダンス など
重要なのは、「激しい運動」ではなく「続けられる運動」 が評価されている点です
パーキンソン病の運動、どのくらいが目安? ― 種類と頻度 ―

研究では、運動の種類によって、期待される効果に違いがあることも示唆されています
有酸素運動
1回60~90分、週2~3回、12~24週間ほど継続することで、
動きやすさや睡眠の質が改善する可能性があるとされています
ヨガ・太極拳・気功などの運動
1回60分、週2~3回、24週間以上の継続により、
特にパーキンソン病の初期段階で、バランスや睡眠を支える効果が期待されています
レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)
中~高強度で週2~3回、8~12週間行うことで、運動機能の向上につながる可能性が示されています
水中療法
水温28~38℃の環境で、45~60分、週2~3回行うことで、バランスや歩行の安定をサポートする可能性があると報告されています。
週3回以上、6~14週間にわたり、合計12~42時間程度の運動量を目安に設定した場合、より効果が認められやすい傾向も示されました
運動は、動きと眠りをそっと支える選択肢のひとつです
病気の進行度、体力、体調、生活環境は一人ひとり異なります
そのため、個々の状態に合わせた運動やリハビリの調整が、無理なく続けること、そして効果を引き出すために重要だと考えられます
けやき脳神経リハビリクリニックでは
・短時間通所リハビリテーション(介護保険)
・ニューロフィット(自費、集団リハビリ)
において、
・レッドコードを使ったストレッチ、筋力トレーニング
・マシンを使った筋力トレーニング
・バイクを使った有酸素運動
などを取り入れています

参考文献
Li Z, Hu P.
Exercise: The key to enhancing sleep quality and physical function in Parkinson’s disease? A systematic review and meta-analysis.
PLOS ONE. 2025;20(11):e0336381.
doi:10.1371/journal.pone.0336381