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言葉が出ない・しゃべりにくいのはなぜ?急な「話しにくさ」は脳梗塞のサイン?

言葉が出ない・しゃべりにくい症状と脳梗塞のサインをFASTで解説するブログのアイキャッチ画像。

「言葉が出ない」

「なんだか、しゃべりにくい」

こうした症状が突然現れた場合は、脳梗塞などの脳卒中に注意が必要です。

脳卒中のサインに早く気づくための合言葉「FAST(ファスト)」でも、言葉や話し方の異変はS=Speech(言葉・話し方)にあたる重要なサインです。

また、本人の「なんか変」だけでなく、家族や周囲の人が感じる「いつもと違う」が、早期受診につながることもあります。

この記事では、「言葉が出ない」「言葉が出にくい」「しゃべりにくい」と感じたときに考えられる原因と、脳卒中を疑うポイント、受診の目安について分かりやすく解説します。

言葉が出ない・しゃべりにくい―突然なら脳卒中に注意

「言葉が出ない」「しゃべりにくい」と感じる原因は一つではありません。

特に注意してほしいのは、

これまで普通に話していたのに、突然しゃべりにくくなったという場合です。

脳梗塞や脳出血などの脳卒中では、

  • 言いたい言葉が出てこない
  • うまくしゃべれない
  • ろれつが回らない
  • 相手の話が理解しにくい
  • 違う言葉を言ってしまう
  • 質問とかみ合わない返答をする

といった症状が突然現れることがあります。

さらに、

  • 顔の片側がゆがむ
  • 片方の手足に力が入らない
  • 片方の手足がしびれる
  • 急にふらつく
  • 見え方がおかしい

などを伴うこともあります。

ここで知っておきたいのは、必ずいくつもの症状が一緒に出るとは限らないことです。

「手足は普通に動いているから脳梗塞ではない」 とは判断できません。

突然起こった「言葉の異変」そのものが、脳卒中を疑うサインになります。

「言葉が出ない」はFASTの「S」

脳卒中のサインに早く気づくために覚えておきたいのが、FAST(ファスト)です。

FASTとは、脳卒中を疑う代表的な症状と、そのときに取るべき行動を覚えやすくした言葉です。

F:Face ― 顔

笑顔を作ったときに、

  • 片方の口角が下がる
  • 顔の左右が非対称になる

といった変化がないか確認します。

A:Arm ― 腕

両腕を前に上げたときに、

  • 片方の腕だけ下がってくる
  • 片腕に力が入らない

といった症状がないか確認します。

S:Speech ― 言葉・話し方

今回、特に知ってほしいのがS=Speechです。

「Speechの異常=ろれつが回らない」と思われるかもしれませんが、それだけではありません。

  • 言葉が出ない
  • 言葉が出にくい
  • うまくしゃべれない
  • ろれつが回らない
  • 言おうとした言葉とは違う言葉が出る
  • 相手の言葉を理解しにくい

こうした症状も、脳卒中でみられる言葉や話し方の異変です。

T:Time ― 時間

F・A・Sのどれか一つでも突然異常が現れたら、時間が重要です。

症状が始まった時刻を確認し、脳卒中が疑われる場合には速やかに119番へ連絡してください。

「少し様子を見てみよう」

「明日になっても治らなければ病院へ行こう」

ではなく、突然の症状では早く行動することが重要です。

脳卒中を疑うFAST(顔・腕・言葉・時間)と、言葉が出ない・しゃべりにくいなどSpeechの症状を示す図

「言葉が出ない」と「ろれつが回らない」は同じ?

どちらも本人にとっては、「うまくしゃべれない」と感じるかもしれません。

しかし、実際に起きていることは少し違います。

失語症とは、脳の言葉に関係する部分が障害され、「話す」「聞いて理解する」「読む」「書く」といった言葉を扱うことが難しくなる状態です。

一方、構音障害(こうおんしょうがい)とは、何を話したいかは分かっていても、口や舌などをうまく動かせず、発音が不明瞭になる状態です。

症状が突然現れたときに、「これは失語症かな?」「構音障害かな?」と自分で判断する必要はありません。

「急にいつものように話せなくなった」こと自体が重要です。

失語症と構音障害の違いについては、当院の言語聴覚士がこちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:構音障害とは?失語症との違いって?

言葉が出ない失語症と、ろれつが回らない構音障害の違いを示した図。どちらも突然起こった場合は脳卒中に注意

本人の「なんか変」も、周囲の「いつもと違う」も大切

脳卒中が起きても、本人が自分の症状をうまく説明できるとは限りません。

むしろ、「なんか変」という漠然とした違和感が、異変に気づくきっかけになることがあります。

本人が感じる「なんか変」

たとえば、

  • 「なんか、しゃべりにくい」
  • 「言葉がうまく出ない」
  • 「言いたいことが言えない」
  • 「いつもと何か違う」
  • 「うまく説明できないけれど変な感じがする」

といった感覚です。

症状を医学用語で説明する必要はありません。

いつも普通にできていたことが、突然うまくできなくなった。

その変化が重要です。

家族や周囲だから気づける「いつもと違う」

言葉の異変では、本人より先に家族や友人、職場の人が気づくこともあります。

たとえば、

  • いつもより話さなくなった
  • 返事が遅い
  • 質問と違う答えが返ってくる
  • 言い間違いが増えた
  • 同じ言葉を繰り返す
  • 会話がかみ合わない
  • ろれつがおかしい
  • いつもの話し方と違う

といった変化です。

本人が「大丈夫」と言っていても、周囲から見ると明らかに普段と違うことがあります。

そんなときは、「本人が大丈夫と言っているから大丈夫」だけで判断せず、FASTのF・A・Sも確認してください。

脳卒中で本人が感じる『なんか変』と、家族や周囲が気づく『いつもと違う』のサインを示した図

「なんかしゃべれない」から受診につながった例

2026年8月、脳梗塞を発症したことが公表された、お笑いコンビ「サンドウィッチマン」の伊達みきおさん。

報道によると、仕事で朝に集合した際、伊達さんから「なんかしゃべれない」という趣旨の訴えがあり、相方の富澤たけしさんがすぐに病院へ行くよう促しました。

その後、伊達さんは脳梗塞と診断され、入院治療を受けていることが公表されています。

このエピソードは、

本人が感じた「なんか変」と、そばにいた人が異変に気づき、受診を促したこと

の両方が重要であることを考える一例になります。

症状を正確に説明できなくても構いません。

本人の「なんか変」。

周囲の「いつもと違う」。

その気づきを、様子見で終わらせないことが重要です。

急に言葉が出ない・しゃべりにくいときに考える病気

「言葉が出ない」「しゃべりにくい」といった症状は、脳卒中以外の病気や体調変化でも起こることがあります。

症状だけで原因を決めることはできません。

ここでは、特に見逃すと危険な脳卒中を中心に解説します。

脳梗塞

脳梗塞は、脳の血管が詰まり、その先の脳へ十分な血液が届かなくなる病気です。

障害される脳の場所によって、

  • 言葉が出ない
  • 相手の言葉を理解できない
  • ろれつが回らない
  • 顔がゆがむ
  • 片方の手足に力が入らない
  • 片方の手足がしびれる
  • 見え方がおかしい

など、さまざまな症状が現れます。

脳卒中では、突然症状が現れることが重要な特徴の一つです。

脳出血

脳出血は、脳の血管が破れて脳の中に出血する病気です。

脳梗塞と同じように、

「突然言葉が出なくなった」

「突然ろれつが回らなくなった」

「片方の手足が動かしにくくなった」

などの症状が起こることがあります。

症状だけで脳梗塞と脳出血を見分けることはできません。

一過性脳虚血発作(TIA)

一過性脳虚血発作(TIA:ティーアイエー)とは、脳への血流が一時的に悪くなり、脳梗塞のような症状が現れたあと、症状が消える状態です。

ここで特に注意したいのが、

「治ったから大丈夫」とは限らないということです。

数分で治った「言葉の出にくさ」も注意

「10分くらい言葉が出にくかったけれど、今は普通」

「さっきはしゃべりにくかったけれど治った」

症状がなくなると、安心してしまうかもしれません。

しかし、TIAでは、

  • 言葉が出ない
  • ろれつが回らない
  • 片方の手足に力が入らない
  • 片方の手足がしびれる
  • 見える範囲の一部が欠ける

など、脳卒中と似た症状が一時的に現れ、その後消えることがあります。

TIAは、その後に脳梗塞を発症する危険が高い状態です。

そのため、「症状が治った=問題がなくなった」とは考えないでください。

突然起こった言葉や手足などの異変は、現在症状がなくても、速やかな医療機関への相談・受診が必要です。

言葉が出ない・しゃべりにくいときは何科?

受診先を考えるときに、まず確認したいのは、「突然起こったのか」です。

言葉が出ない・しゃべりにくい症状が突然、一時的、徐々に起こった場合の受診判断を示すフローチャート

突然、言葉が出なくなった・しゃべりにくくなった

脳梗塞や脳出血などの脳卒中を考える必要があります。

特に、

  • 急に言葉が出なくなった
  • 急にしゃべりにくくなった
  • ろれつが回らない
  • 顔がゆがんでいる
  • 片方の手足に力が入らない

といった症状がある場合は、通常の外来予約を待たず、119番へ連絡してください。

症状が一度出て、現在は治っている

一時的な症状でもTIAの可能性があります。

「治ったから今度病院へ行こう」と先延ばしせず、速やかな受診が必要です。

徐々に言葉が出にくくなっている

以前から徐々に「言葉が出にくい」「話しにくい」と感じている場合には、さまざまな原因が考えられます。

脳や神経の病気が疑われる場合には、脳神経外科・脳神経内科などが受診先となります。

受診時には、

「いつから」「突然か徐々にか」

を伝えてください。

受診するときに伝えてほしいこと

言葉の異変で受診するときには、次の情報が診断の手がかりになります。

1.最後に普段どおりだったのは何時か

脳卒中では、症状が始まった時間が治療を考えるうえで重要になります。

正確な発症時刻が分からない場合は、

「最後に普通に話していたのは何時だったか」

を確認してください。

2.突然か、徐々にか

「朝までは普通だったのに、突然言葉が出なくなった」

という経過は重要な情報です。

3.どんな「しゃべりにくさ」だったか

うまく説明できなくても構いません。

  • 言葉そのものが出なかった
  • 違う言葉を言っていた
  • 言葉は分かっていたけれど発音できなかった
  • 相手の話を理解できなかった

など、分かる範囲で伝えてください。

4.ほかの症状がなかったか

顔のゆがみ、手足の麻痺やしびれ、ふらつき、見え方の異常などがなかったかも重要です。

本人がうまく説明できない場合には、その場にいた家族や周囲の人からの情報が診断の手がかりになることがあります。

脳卒中後も「言葉が出にくい」状態が続いている方へ

ここまでは、突然起こった言葉の異変について解説してきました。

一方、脳梗塞や脳出血の治療後も、

「言いたい言葉が出てこない」

「家族との会話がうまくいかない」

「相手の話を理解しづらい」

「発音が不明瞭になった」

といった症状が残ることがあります。

こうした症状に対しては、言語聴覚士(ST:ことばや発音、コミュニケーション、食べる・飲み込むことなどを支援する専門職)による評価やリハビリテーションが行われます。

当院でも、失語症や構音障害などに対する言語リハビリテーションを行っています。

退院後の生活で、

「言葉が出てこなくて会話が続かない」

「電話でうまく話せない」

「仕事に戻るのが不安」

などでお困りの場合には、こちらの記事もご覧ください。

関連記事:失語症でお困りの方へ。退院したら失語症のリハビリは終わり?知っておきたい「外来リハビリ」という選択肢

関連記事:構音障害とは?失語症との違いって?

よくある質問

急に言葉が出なくなったら脳梗塞ですか?

脳梗塞だけが原因とは限りませんが、突然言葉が出なくなる症状は、脳梗塞などの脳卒中でみられる症状の一つです。

顔のゆがみや片方の腕の脱力などを伴う場合はもちろん、言葉の異変だけの場合でも、突然起こったのであれば注意が必要です。

急にしゃべりにくくなるのは脳梗塞の症状ですか?

脳梗塞では、「言葉が出ない」「ろれつが回らない」「相手の話を理解できない」などの症状が突然現れることがあります。

急な「しゃべりにくさ」は軽視せず、脳卒中の可能性を考える必要があります。

「言葉が出ない」はFASTのどれですか?

S=Speech(言葉・話し方)です。

FASTのSでは、ろれつが回らないだけでなく、言葉が出ない、うまく話せない、相手の言葉を理解できないといった異変も確認します。

「言葉が出ない」と「ろれつが回らない」は違いますか?

違う症状の場合があります。

「言いたい言葉そのものが出てこない」「相手の話を理解しにくい」といった症状は失語症、「言いたい内容は分かっているけれど、うまく発音できない」といった症状は構音障害などでみられます。

どちらも脳卒中で起こることがあります。

数分だけ言葉が出なくなりました。今は治っています。受診は必要ですか?

突然起こったのであれば、今は治っていても速やかな受診が必要です。

TIAでは、脳卒中と似た症状が一時的に現れたあと、症状が消えることがあります。

「治ったから大丈夫」と自己判断しないでください。

家族が急に話さなくなりました。どうすればいいですか?

突然の変化であれば注意が必要です。

呼びかけたときの返答や話の内容に加えて、顔のゆがみや片方の腕の脱力など、FASTの症状も確認してください。

脳卒中が疑われる場合には、速やかに119番へ連絡してください。

言葉が出にくい・しゃべりにくいときは何科ですか?

突然症状が現れた場合には、脳卒中の可能性を考え、救急対応が必要になることがあります。

徐々に症状が気になる場合には、脳神経外科・脳神経内科などが受診先となります。

本人の「なんか変」と周囲の「いつもと違う」を見逃さない

「言葉が出ない」

「なんか、しゃべりにくい」

「いつものように話せない」

こうした言葉や話し方の異変が突然現れた場合には、脳梗塞などの脳卒中が隠れていることがあります。

覚えておきたいのが、

FASTの「S=Speech」

です。

「ろれつが回らない」だけではありません。

言葉が出ない。
うまくしゃべれない。
相手の言葉を理解できない。

こうした変化も、脳卒中を疑う重要なサインです。

そして、本人が自分の症状をうまく説明できるとは限りません。

本人の、

「なんか変」

そして家族や友人、同僚が感じる、

「いつもと違う」

その気づきが、早期受診につながることがあります。

一度症状が治った場合でも、TIAの可能性があります。

突然の言葉や話し方の異変を認めた場合には様子を見続けず、FASTを思い出し、速やかな対応につなげてください。

医師プロフィール

林 祥史 院長
私立灘高校卒/東京大学医学部医学科卒
けやき脳神経リハビリクリニック 院長

資格・所属学会
【資格】 日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医、日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医

【所属学会】 日本脳神経外科学会、日本脳血管内治療学会、日本脳卒中学会、日本リハビリテーション医学会、日本頭痛学会、日本めまい平衡医学会、American Academy of Family Physicians、Cambodian Medical Association

クリニック情報

けやき脳神経リハビリクリニック

院長:林 祥史(・日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医・日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医)
所在地:東京都目黒区下目黒2-14-13下目黒HAPPYビル1~3階(受付2階)
診療科目:脳神経外科・リハビリテーション科・内科
検査設備:MRI、レントゲン、超音波など
公式サイト:https://keyaki-nrc.com/

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