脳卒中・認知症のリスクをMRIで早期発見!“隠れ出血”が教えてくれる脳のSOS

脳の健康状態を確認するためのMRI検査では、実はさまざまな種類の画像が撮影されます。その中でも、今回ご紹介したいのが「T2*(ティーツースター)強調像」という画像です。
この画像は、脳卒中や認知症のリスクとなる“見えない脳の変化”をとらえるための非常に重要な画像です。言い換えるならば、脳の健康を守るために欠かせない観察レンズなのです。今回は、このT2強調像について詳しくご説明し、その重要性と、そこから見えてくる“隠れた病気”についてもお伝えしていきたいと思います。
脳卒中・認知症を未然に防ぐために
~当院がMRIで“隠れ出血”を観察する理由~
当院ではすべての頭部MRIで「T2*強調像」をルーチンに撮影しています。この画像は、決して「おまけの画像」ではありません。小さな出血や血管の変化を見逃さないための、大切な“観察レンズ”として、私たちはT2*強調像を重視しています。
“隠れ出血”が映るMRI画像:T2*強調像でわかる脳の変化

T2*強調像の一番の特徴は、磁場に対して敏感に反応する物質をとらえやすいという点にあります。脳内で出血が起こると、血液中のヘモグロビン(酸素を運ぶたんぱく質)が徐々に分解されていきます。その過程で生まれるのが、鉄分を多く含んだ“老廃物”のような物質です。この鉄分はMRIの強い磁石に敏感に反応するため、T2*強調像では出血した部分が“黒い影”としてはっきり映し出されるのです。

MRI(T2*画像)で見える「小さな出血」の特徴
黒く見える点が出血のあとです
→ 脳の中で少しだけ出血があった場所には、鉄分がたまります。
→ T2*では、その部分が黒く見えるようになります。
とても小さい出血でも見つけやすい
→ ごく小さな出血も、T2*画像ならわかります。
→ 過去の出血の痕もわかるのが、この撮り方の特徴です。
年齢や血圧が関係することがあります
→ 高血圧や加齢によって、小さな出血が起こることがあります。
→ 認知症や脳卒中のリスクになることもあります。
小さな脳出血が未来の脳卒中リスクに
~1〜2mmの変化もMRIで発見~
このような性質を活かすことで、他の撮像法では発見しにくい、1~2mm程度の小さな出血(微小脳出血)をとらえることが可能になります。MRI検査の中でも、特にT2*強調像が微小な変化の発見に優れているのです。
T2*強調画像で見つかる病気と“隠れ脳出血”
T2*強調画像を用いることで、以下のような疾患や状態を発見できます。
1. 自覚症状がないまま進行する「隠れ脳出血」

隠れ脳出血とは、症状が出るほどではないごく小さな脳出血のことです。
高血圧や脳の老化による血管の劣化が原因で発生しやすくなります。これを放置すると、将来的に脳出血や脳梗塞など重篤な疾患に進展する可能性があります。
MRIのT2*強調像は、この隠れ脳出血の早期発見に非常に有効です。
2. アミロイド血管症

アミロイドという異常なタンパク質が脳の血管に沈着する疾患で、特に高齢者に多く見られます。
この疾患では、微小出血が脳全体に散在して発生します。MRI検査のT2*強調像は、その特徴的な分布を捉えることができます。
3. びまん性軸索損傷

交通事故や転倒による頭部外傷が原因で、脳の深部に小さな出血が起こることがあります。
T2*強調画像は、このような微小出血の検出にも役立ちます。
4. 陳旧性出血(過去の出血)

過去に出血が起こった痕跡もT2*画像で確認することができます。
この情報は、現在の症状と過去の脳出血との関連性を調べる際に重要です。
微小出血が示す3つの未来リスク:認知症・脳卒中・転倒
認知症との関連性
近年の研究では、微小脳出血がある方は将来的な認知症リスクが高いことが明らかになっています。特に、脳の深部や皮質下に多く認められるタイプは、脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症の発症率が高い傾向にあると報告されています。MRI検査による早期発見が、将来の認知症リスク管理に繋がる可能性があります。
脳卒中や脳梗塞のリスク
微小脳出血は、血管がもろくなっているサインでもあります。今は小さな傷でも、将来的に脳出血や脳梗塞といった大きな脳卒中を引き起こす可能性があります。MRIによる定期的な検査で、これらのリスクを早期に把握することが重要です。
転倒・要介護リスクの増加
脳内の微細なダメージが蓄積されることで、歩行時のバランスや注意力にも影響が出ることがわかっています。結果として、転倒や要介護のリスクが高まるケースも少なくありません。MRI検査は、このような将来的なリスクの早期発見にも貢献します。
CT検査では見つからない? “隠れ出血”をMRIで捉える理由
微小脳出血をMRIで発見する理由
この微小脳出血、実はCT検査ではほとんど写りません。CTは急性期の大量出血や骨の評価には優れていますが、わずか1〜2mmの出血を捉えるには限界があります。その点、MRIのT2*強調像は「磁場に反応する成分の変化」を敏感にキャッチします。健康診断でCTに異常なしとされた方でも、MRI検査で初めて小さな変化が見つかるケースは少なくありません。
ゴムホースの傷みと血管の老化:血管の変化とリスクの関係

こうした脳血管の変化は、たとえるなら古くなったゴムホースのようなもの。外見は問題がなくても、内部には小さなヒビや傷ができていて、ある日突然、水漏れを起こすかもしれません。T2*強調像が映し出す微小出血は、その「水漏れの兆し」にあたります。MRI検査によって、このサインを早期に捉えることが、将来の大きな病気を防ぐために重要です。
MRI検査で“黒い点”が見つかったら?隠れ出血の対策
T2*画像で隠れ脳出血が見つかった場合、以下の対策が推奨されます。
1. 血圧管理
高血圧は隠れ出血の最大の原因です。適切な降圧薬や減塩生活で血管を守りましょう。定期的なMRI検査での経過観察も重要です。
2. 生活習慣の改善
禁煙、適度な運動、栄養バランスの取れた食事が大切です。MRI検査の結果を参考に、生活習慣を見直しましょう。
3. 定期的な検査
進行を見逃さないために、定期的にMRI検査を受けましょう。
当院がMRIで“隠れ異常”を見逃さない理由
当院では、どなたの頭部MRIでもT2*強調像を欠かさず撮影しています。それは、自覚症状のない「小さな異変」にこそ、大きな価値があると考えているからです。たとえば、脳ドックでまったく症状のない方の脳でも、T2*画像をよく見ると「黒い点」が見えることがあります。それは将来の病気リスクを予測する重要なサインかもしれません。
「まだ症状がない今だからこそ」意味があるのです。
症状が現れる前に早期対策を
医療では、「症状が出てから治療する」ことが多いですが、脳の病気は、症状が出たときにはすでに手遅れになっていることもあります。だからこそ、「何も起きていない今」、体の中で始まっているかもしれない小さな変化を見逃さず拾い上げること。それが将来の大きな病気の予防につながります。当院のMRI検査とT2*強調像は、そのための重要なツールです。
MRI検査は安全・無痛:未来を守るための定期検査を
MRI検査は、音は大きいですが痛みもなく、放射線も使わない安全な検査です。T2*強調像はその中でも、未来の脳を守るための大切なレンズのひとつなのです。当院では、安心してMRI検査を受けていただけるよう、丁寧なご説明を心がけています。
脳卒中・認知症を防ぐ鍵は“早期発見”にあり
微小な変化が未来のリスクのサインかもしれません
T2*強調像が映し出すのは、ただの“黒い点”ではありません。それは、あなたの脳からの小さなSOSかもしれません。早期発見のために、MRI検査をご検討ください。私たちけやき脳神経リハビリクリニックでは、未来のトラブルを未然に防ぐという視点を大切にしながら、日々の検査に取り組んでいます。「脳の健康が気になる方は、お気軽にご相談ください。
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