スノボで頭を打った後の対処法|頭が痛い・首が痛いとき病院に行くべき判断基準【医師監修】

本記事は、けやき脳神経リハビリクリニック 林 祥史 院長(日本脳神経外科学会認定 専門医)が監修しています。
スノボで頭を打った。今すぐ病院?様子見でいい?
迷った人向けに、結論から示します。
スノボで頭を打った!5秒判断チャート
| 症状 | 危険度 | 行動 |
|---|---|---|
| 強い頭痛 / 持続的な吐き気 / ぼんやり(意識変調) | 高 | 今すぐ受診(救急車を呼ぶor 脳神経外科へ) |
| 首が痛い / 手足がしびれる / 歩きにくい | 高 | 頚椎損傷の可能性 → 早期受診推奨(脳神経外科・整形外科へ) |
| 事故から数時間〜数日後に頭痛・吐き気が出た | 高 | 慢性硬膜下血腫の可能性 → 受診を検討(脳神経外科へ) |
| 頭痛は軽い・吐気なし・意識ははっきり | 低 | 自宅で経過観察可(ただし症状に変化あればすぐ受診) |
目次
- Ⅰ. スノボで頭を打った直後の対処法と危険なサイン:ゲレンデでの緊急対応
- なぜスノボは「頭部・頸部外傷」のリスクが高いのか?
- 【最重要】即救急要請が必要なレッドフラッグサイン
- 頭を打った直後に発生する急性期疾患と初期対応
- 頭が痛い・首が痛い場合の緊急判断:症状別危険度と行動基準
- Ⅱ. スノボで頭を打った後、頭が痛い・症状が遅れて出たときの見極め方:帰宅後~翌日の判断基準
- 遅れて発症する危険な疾患と見逃しやすい初期症状
- 最も危険な「セカンドインパクト症候群」の回避
- 病院に行くべき判断基準(数日後)
- Ⅲ. スノボで転んで首が痛い時と頭部以外で注意すべき点:スノボで多いその他の外傷
- スノボで多い上肢(肩・肘・手首)の外傷
- 下肢(尾骨)と脊椎(胸椎・腰椎)の外傷
- Ⅳ. 命を守るための予防策と専門検査の重要性
- 再発を防ぐ!ヘルメットとMRI検査の重要性
- スノーボード外傷に関するよくある質問 (FAQ)
- スノボ外傷の知識と適切な判断
Ⅰ. スノボで頭を打った直後の対処法と危険なサイン:ゲレンデでの緊急対応
スノーボードでの転倒により頭を強打した場合、外見上の傷がなくとも、脳の内部では命に関わる緊急性の高い病態が進行している可能性があります。スノボで頭を打った後で「どう対処すれば良いか」と不安を感じている方にとって、最も重要なのは、救急搬送が必要な状態か、つまり「直ちに病院に行くべきか」を今すぐ判断することです。
なぜスノボは「頭部・頸部外傷」のリスクが高いのか?

スノーボードは両足が板に固定されているため、転倒時に受け身が取りにくく、とっさに手をつくことが困難です。この特性により、頭部や頸部(首)を雪面に直接強打するリスクが高く、深刻な頭部外傷や頸椎(首の骨)の外傷を招きやすいのです。
【最重要】即救急要請が必要なレッドフラッグサイン

以下の症状が一つでもあれば、命に関わる可能性があるため、即救急要請(+ゲレンデパトロールへ連絡)が原則です。迷ったら救急車を呼びましょう。
- 異常な頭痛:痛みが強まる/これまでにない種類の痛み/持続する頭が痛い状態
- 意識レベル低下:会話がかみ合わない/返事が遅い/意識朦朧/一時的な意識消失
- 神経症状(首+四肢異常):手足のしびれ・脱力・歩行ふらつき・首の強い痛み(首が痛い)
頭を打った直後に発生する急性期疾患と初期対応
強い衝撃により発生し得る、命に関わる緊急疾患とその初期対応です。
| 緊急疾患 | 特徴と危険性 | 初期対処法 |
|---|---|---|
| 急性硬膜外血腫 | 一度意識が戻った後に急変する「意識清明期」が非常に危険。 | 直ちに救急搬送 |
| 急性硬膜下血腫 | 受傷直後から意識障害を伴うことも多く、救命対応が最優先。 | 直ちに救急搬送 |
| 外傷性くも膜下出血 | 激しい頭が痛い状態・嘔吐・光過敏を伴うことが多い。 | 直ちに救急搬送 |
頭が痛い・首が痛い場合の緊急判断:症状別危険度と行動基準
スノーボードで頭を打った時、現場で取るべき初期行動です。
| 症状 | 危険度 | 行動基準 |
|---|---|---|
| 持続的な嘔吐 | 高 | 内出血進行の可能性 → 直ちに救急車 |
| 意識レベル低下 | 高 | 呼びかけ鈍い=重大所見 → 救急搬送 |
| 頭痛が悪化 (頭痛いがひどくなる) | 高 | 出血の増悪リスク → 悪化時は救急 |
| 首痛+しびれ (首が痛い+手が動かせない) | 高 | 頸椎・脊髄損傷の疑い → 絶対に動かさず救急 |
| 一時的意識消失 | 高 | 脳振盪疑い → 滑走中止・慎重な経過観察 |
| 軽度頭痛・めまい | 中 | 脳振盪の可能性 → 滑走中止・慎重観察 |
現場で取るべき初期対応手順
- 動かさない・安静:特に首が痛い場合は動かさない。
- 意識確認:人・場所・時間(ここはどこ?今日は何日?)が答えられるか確認。
- パトロール要請:レッドフラッグサインがあればすぐ救急車を要請してもらう。
Ⅱ. スノボで頭を打った後、頭が痛い・症状が遅れて出たときの見極め方:帰宅後~翌日の判断基準
スノボで頭を打った後、ゲレンデで問題なかったとしても、翌日になって頭が痛い、帰宅後に症状が遅れて出た場合も注意が必要です。これは、症状が時間差で進行する病態が存在するためです。

遅れて発症する危険な疾患と見逃しやすい初期症状
| 病態 | 特徴と注意点 |
|---|---|
| 慢性硬膜下血腫 | 数週間〜数ヶ月後に発症。徐々に悪化する頭痛、片側の脱力、物忘れ・意欲低下など認知症様の症状で現れることも。高齢者や飲酒・抗凝固薬服用者は特に注意。 |
| 脳振盪後症候群 | 頭痛・めまい・倦怠感が数週間〜数ヶ月間、遷延する。 |
| 遅発性外傷性頭痛 | 翌日〜数日後に頭が痛い症状が出現・増悪する。 |
最も危険な「セカンドインパクト症候群」の回避
脳振盪の症状(軽度な頭痛、めまいなど)が残った状態で、再度頭部に衝撃を受けると、致命的な脳腫脹を引き起こす可能性があります。
👉 症状が少しでもあれば、その日の滑走は絶対に禁止です。翌日以降も症状が残る場合は、再度の転倒リスクもあるため、脳神経外科を受診するまで滑走を控えましょう。
病院に行くべき判断基準(数日後)
以下に一つでも該当する場合、時間外でも脳神経外科を受診してください。
- 頭が痛い症状が改善しない/むしろ悪化している
- 一度治った吐き気や嘔吐が再発した
- ぼんやりする/動作が遅い/いつもと違う様子がある
- 感情が不安定/性格変化が見られる

Ⅲ. スノボで転んで首が痛い時と頭部以外で注意すべき点:スノボで多いその他の外傷
スノーボードでは、頭部外傷と並んで、首が痛いと感じる頸部外傷や、上肢・下肢にも特徴的な外傷が多く見られます。
スノボで多い上肢(肩・肘・手首)の外傷
転倒時にとっさに手をつくことができず、肩や手首に強い衝撃がかかることが多いです。
- 肩関節、肘関節:脱臼が多いです。骨折を伴う場合や、鎖骨骨折も頻繁に起こります。
- 手関節:脱臼は少なく、骨折が多いです。
👉 直後から痛み、腫れ、動かせない等の症状がはっきりしている場合は、整形外科への受診が必要です。
下肢(尾骨)と脊椎(胸椎・腰椎)の外傷
- 股関節周囲(尾骨):尻餅をつくことによる尾骨骨折は、初心者によく見られる外傷の一つです。
- 脊椎(胸椎、腰椎)の外傷:普通に転倒した程度では稀ですが、高いエアーの失敗によるものがほとんどで、重症例となる場合もあります。首が痛い場合と同様に、痛みが強い場合はレントゲン検査が必要です。特に上肢のしびれ、吐き気、頭痛を伴う場合は、神経障害の可能性からMRI検査が望ましいです。
Ⅳ. 命を守るための予防策と専門検査の重要性
再発を防ぐ!ヘルメットとMRI検査の重要性
スノーボードにおける再発を防ぎ、命を守るためには、適切な予防策と専門的な検査が不可欠です。
- ヘルメットの着用
- 転倒時の頭部外傷の骨折リスク低減にヘルメットは不可欠です。最近では、脳の回転衝撃を軽減するMIPSなどの技術を搭載したヘルメットもあります。ヘルメットを選ぶ際は、安全基準や機能について専門店で確認し、必ず着用しましょう。
- 転倒時の頭部外傷の骨折リスク低減にヘルメットは不可欠です。最近では、脳の回転衝撃を軽減するMIPSなどの技術を搭載したヘルメットもあります。ヘルメットを選ぶ際は、安全基準や機能について専門店で確認し、必ず着用しましょう。
- 脳振盪の診断に不可欠なMRI検査
- CT検査は急性期の出血評価に有効ですが、脳振盪による微細な損傷は捉えにくい場合があります。症状が長引く(遷延する)、または違和感が継続する場合は、専門的なMRI検査が推奨されます。

スノーボード外傷に関するよくある質問 (FAQ)
頭痛が軽いだけなら翌日も滑れる?
滑走禁止です。 症状がある時点で脳はダメージを受けています。セカンドインパクト症候群のリスクを避けるため、症状が完全に消えるまで滑走を控えてください。
ヘルメットで脳振盪は防げる?
骨折リスクは低下しますが、脳振盪は防ぎきれません。MIPSなどの技術はリスクを下げますが、過信せず、症状がある場合は安静を最優先にしてください。
子どもがスノボで頭を打った場合はどうする?
大人より症状が分かりにくいため、判断基準はより厳しくなります。以下のいずれかがあれば 即受診 が必要です。
- やたら眠がる
- いつもより機嫌が悪い
- 遊ばない・元気がない
- 吐く
- 歩き方がおかしい
子どもは自分の状態を言語化できないため、大人より少しでも異変があれば受診する方が安全です。
痛み止めを飲んで様子見していい?
痛み止めは一時的に症状を隠すだけで、治ったわけではありません。
「痛みが軽いからもう大丈夫」と自己判断しやすくなるため注意が必要です。悪化や新しい症状があれば、すぐ受診してください。
スノボ外傷の知識と適切な判断
- 急性期:頭が痛い(悪化)・意識障害・首のしびれや強い痛み → 一つでもあれば即救急。
- 慢性期:翌日以降の頭が痛い、ぼんやり、再嘔吐 → 病院に行くべきサイン。
- 予防:ヘルメットの着用と、無理せず休む判断能力が命を守ります。
あなたの知識と適切な行動が、重篤な結果からあなた自身、そして仲間を救います。
監修医師プロフィール
監修:林 祥史 院長
私立灘高校卒/東京大学医学部医学科卒
けやき脳神経リハビリクリニック 院長 (東京都 目黒区)
資格・所属学会
【資格】 日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医、日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医
【所属学会】 日本脳神経外科学会、日本脳血管内治療学会、日本脳卒中学会、日本リハビリテーション医学会、日本頭痛学会、日本めまい平衡医学会、American Academy of Family Physicians、Cambodian Medical Association