最近忘れっぽいのはなぜ?「何しようとしてたんだっけ?」と忘れる原因・受診の目安

「あれ?何しようとしてたんだっけ?」
スマホを開いたのに、何を調べようとしていたのか忘れる。
別の部屋まで来て、「何しに来たんだっけ?」となる。
こんな「あれ?」が増えると、
「最近、忘れっぽくなったかも」 、「これって認知症?」
と心配になることがあります。
でも、こうした「あれ?」があるだけで、認知症と判断することはできません。
「忘れた=記憶力が落ちた」とは限らず、疲れているときや、いろいろなことを同時に考えているときにも「あれ?」は起こります。
大切なのは、忘れた回数だけではなく、
「何を忘れた?」
「以前と比べてどう?」
「いつから?」
を見ることです。
この記事では、日常のちょっとした「あれ?」から、一度相談した方がよい変化まで、この3つの視点から分かりやすく解説します。
目次
「あれ?何しようとしてたんだっけ?」はなぜ起こる?
「何をしようとしていたか忘れる」と、「記憶力が落ちたのかな?」と思うかもしれません。
でも、少し違う見方もできます。たとえば、
「冷蔵庫から牛乳を取ろう」
と思ったとします。
冷蔵庫まで歩いている間も、「牛乳を取る」という目的を頭の片隅に置いておかなければなりません。
ところが途中で、
スマートフォンに通知が来た。
家族に話しかけられた。
別の用事を思い出した。
そんなことが重なると、冷蔵庫の前に着いた瞬間、
「……何を取りに来たんだっけ?」
となることがあります。
私たちが普段ひとことで「忘れた」と言っているものすべてが、単純な記憶力の問題とは限らないのです。
「思いつく」から「行動する」まで
何かをしようと思ってから実際に行動するまでには、
「これをやろう」と思う
↓
その目的を頭に置いておく
↓
途中で別のことに気を取られない
↓
目的を思い出して行動する
という流れがあります。
この途中で意識が別のことへ向けば、
「あれ?何するんだっけ?」となることがあります。
医学的に見ると、この一連の行動には記憶だけでなく、注意や物事を順序立てて行う力など、複数の認知機能が関係しています。
仕事のことを考えながらスマホを開く。
そこへメッセージが届いたので返信する。
その途中で別の通知が目に入る。
そして、
「ところで、最初に何を調べようとしていたんだっけ?」
忙しい毎日の中では、こんな経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。

「忘れっぽい=認知症」ではありません
認知症では、記憶だけでなく、注意、判断、言葉、物事を順序立てて行う力など、さまざまな認知機能に変化がみられることがあります。
一方で、「何しようとしてたんだっけ?」が時々あるというだけで、認知症とは判断できません。
そこで次に、
「最近忘れっぽい」と感じる背景には何があるのかを整理してみましょう。
最近忘れっぽいと感じる原因は?
「最近忘れっぽい」と感じる背景は一つではありません。
たとえば、
- 睡眠不足
- 疲労
- ストレス
- いろいろなことを同時にしている
- 加齢に伴う変化
- 薬や飲酒の影響
- 身体や心の不調
- 認知機能に影響する病気
など、さまざまな要因が考えられます。
疲れていたり睡眠が足りなかったりすると、いつもより集中しにくくなることがあります。仕事、家事、育児などで次々に別のことを考えていると、
「やろうと思っていたことが途中で抜けてしまった」
ということも起こります。
一方で、認知症をはじめとした認知機能に関係する病気や、脳の病気、身体の病気などが背景にある場合もあります。
つまり、
「最近忘れっぽい」という症状だけから、原因を一つに決めることはできません。
そこで原因を考えるときに役立つのが、
「何回忘れたか」ではなく、「どんな忘れ方をしているか」を見ることです。
忘れた回数より「忘れ方」を見てみよう
「最近、物忘れが増えた気がする」。。。そう思い始めると、
「あれも忘れた」
「今日もまた忘れた」
と、忘れた回数が気になってしまうことがあります。しかし、
「1日に何回忘れたら病気」という明確な線引きはありません。
そこで、まず見てほしいのが、
「何を忘れたのか?」
たとえば、
「昨日の夕食、何を食べたっけ?」となかなか思い出せないことと、「昨日、夕食を食べたこと自体を覚えていない」ことでは意味が異なります。
また、
「約束の時間を忘れてしまった」ことと、「約束したこと自体を覚えていない」ことも同じではありません。
加齢に伴う物忘れでは、体験の一部を忘れても、手がかりがあると思い出せることがあります。
一方、認知症による物忘れでは、体験そのものを忘れたり、手がかりがあっても思い出せなかったりすることがあります。
もちろん、この違いだけで認知症かどうかを自分で判断することはできません。
「忘れた後」も見てみる
もう一つのヒントが、忘れた後にどうなるかです。
「あれ?あの人の名前、なんだっけ?」と思っても、しばらくして、
「あ、そうだ!」と思い出す。
誰かにヒントをもらったら、
「そうそう、その人!」とつながる。
こうした「すぐには思い出せなかった」という状態と、出来事そのものが抜けていて、ヒントを出されても分からない状態は同じではありません。
物忘れが気になったときは、
「忘れた」という一言だけでなく、「何を」「どのように忘れたのか」
を見てみることが一つのヒントになります。

「忘れた」を、全部マイナスにしなくてもいい
物忘れを意識し始めると、
「あれも忘れた」、「また忘れた」と、できなかったことばかりが目につくことがあります。
たとえば、以前観た映画だということを忘れて、同じ映画をもう一度観てしまった。
そんなとき、
「新鮮な気持ちで2回楽しめたなら、それも悪くない」
という見方もできます。
もちろん、生活に困るほどの物忘れや、以前とは明らかに違う変化まで「気にしなくて大丈夫」と考える必要はありません。
心配な変化は、きちんと医学的に確認することが必要です。
でも、日常のちょっとした「あれ?」まで、すべて悪い変化として数え続けなくてもいいのかもしれません。
「困っている変化なのか。それとも、日常の中のちょっとした『あれ?』なのか」
そんなふうに見てみるのもよいでしょう。
では、どんな変化なら一度相談した方がよいのでしょうか。
そこで次に見てほしいのが、
「以前の自分と比べてどうか?」です。
「以前の自分と違う」は受診を考える一つの目安
物忘れが心配になると、
「この年齢なら普通なのかな?」と考えることがあります。
けれど、同じ年齢でも生活環境や仕事、普段していることは人それぞれです。そのため、
「○歳ならこのくらい忘れても普通」と単純に決めることはできません。
むしろ変化に気づくヒントになるのは、
「以前の自分と比べてどうか?」
たとえば、
- 同じことを何度も聞くようになった
- 大切な予定そのものを忘れることが増えた
- 仕事で今までしなかったようなミスが増えた
- 家事や仕事の段取りが以前より難しくなった
- 慣れている場所なのに道に迷うようになった
- お金や薬の管理が難しくなってきた
- 家族や同僚から「最近、同じ話が多い」と言われる
- 言葉が出にくい、判断に時間がかかるなど、物忘れ以外の変化も出てきた
こうした変化が続く場合には、一度医療機関へ相談する目安になります。
「忘れること」だけが認知機能ではありません
認知症というと、
「記憶力が落ちる病気」という印象が強いかもしれません。
しかし、認知機能には「覚える・思い出す」以外にも、
- 注意を向ける
- 言葉を使う
- 判断する
- 順序立てて行動する
- 場所や時間を把握する
といったさまざまな働きがあります。
そのため、
「物忘れはそれほど目立たないけれど、料理の手順がおかしくなった」、「以前なら簡単にできた仕事に時間がかかる」、「慣れている場所なのに迷う」
といった変化が目立つこともあります。
認知症を考えるうえでは、こうした変化によって日常生活や社会生活に支障が出ているかどうかも重要です。
「今日は何回忘れた?」だけではなく、
「以前は普通にできていたことが、最近やりにくくなっていないか?」という視点でも振り返ってみてください。
「いつから?」急に忘れっぽくなった場合は要注意
ここまで、「何を忘れた?」「以前と比べてどう?」という2つの視点から見てきました。
もう一つ確認したいのが、
「いつから?」
数か月、数年かけて徐々に気になってきた忘れっぽさと、「この数日〜数週間で明らかに様子が変わった」場合は、分けて考える必要があります。
特に、
- 急に物忘れが増えた
- 急にぼーっとするようになった
- 会話がかみ合わなくなった
- 性格や行動が急に変わった
- 歩き方がおかしくなった
- 頭痛など別の症状も出ている
- 頭をぶつけた後から様子がおかしい
といった場合には、認知症だけでなく、脳卒中や慢性硬膜下血腫など、脳の病気を含めた評価が必要になることがあります。
「最近ちょっと忘れっぽい」と、「短期間で明らかに変わった」は同じではありません。
特に急な変化に、
- ろれつが回らない
- 片側の手足が動かしにくい
- 意識や会話がおかしい
- 突然の激しい頭痛
などを伴う場合には、緊急性の高い脳疾患も考える必要があります。このような場合には、速やかな救急受診を検討してください。
また、短期間で明らかな変化がみられる場合にも、「年齢のせいかな」と長く様子を見ず、医療機関へ相談してください。
短期間で急に物忘れが増えた場合は、こちらの記事で詳しく解説しています。
👉「急に物忘れが増えた・ぼーっとする場合の原因と危険サイン」
最近忘れっぽいときは何科に相談する?
「病院に行くほどなのか分からない」、「物忘れは何科に行けばいい?」という方もいると思います。
物忘れや認知機能の変化は、脳神経内科、脳神経外科、もの忘れ外来などが相談先になります。
どこへ相談すればよいか迷う場合には、まずかかりつけ医へ相談する方法もあります。
特に、
- 以前と比べて明らかに変わった
- 生活や仕事に影響が出始めた
- 家族から変化を指摘された
- 忘れっぽさが続いていて心配
といった場合には、一度相談を検討してみてください。
また、睡眠、気分の変化、服用している薬、飲酒、身体の病気などが、物忘れや認知機能に影響していることもあります。そのため、
「忘れっぽい=年齢」、あるいは、
「忘れっぽい=認知症」と最初から決めつけず、その人の症状や経過に合わせて原因を考えていくことが必要です。
MRIを撮れば「忘れっぽい原因」が分かる?
脳神経外科というと、「MRIを撮れば認知症かどうか分かるの?」と思われるかもしれません。
しかし、忘れっぽさの原因をMRIだけで判断することはできません。
どのようなことを忘れるのか。いつから始まったのか。以前と比べてどう変化したのか。生活にどの程度影響しているのか。
こうした経過を確認し、診察や認知機能の評価などを行ったうえで、必要に応じて血液検査やMRIなどの検査を組み合わせて原因を調べていきます。
MRIは、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍、正常圧水頭症など、認知機能の変化に関係する脳の病気がないかを調べたり、脳の形態的な変化を評価したりする際に用いられます。
つまり、
「忘れっぽい → とりあえずMRI」ではなく、「どんな変化なのかを確認する → 必要に応じて脳の状態も調べる」
という考え方です。
脳萎縮の症状や原因、について詳しく知りたい方はこちら。
「脳萎縮があるとなぜ危険?あなたの生活はどう変わるのか(初期症状・進行・MRI診断)」
目黒区の対象となる方は、当院で実施している「目黒区もの忘れ検診」についてもご確認いただけます。
「目黒区のもの忘れ検診についてはこちら」
よくある質問
「何しようとしてたんだっけ?」と忘れるのは認知症ですか?
「何しようとしてたんだっけ?」と時々忘れるだけで、認知症とは判断できません。
何かをしようとしている途中で別のことに気を取られると、もともとの目的が一時的に抜けてしまうことがあります。疲労や睡眠不足、いろいろなことを同時に考えているときにも起こります。
一方で、以前より明らかに増えた、生活や仕事に支障が出ている、出来事そのものを忘れることが増えた場合には、一度医療機関へ相談してください。
最近忘れっぽいのはなぜですか?
最近忘れっぽいと感じる背景には、睡眠不足、疲労、ストレス、加齢、薬や飲酒の影響、身体や心の不調、認知機能に関係する病気など、さまざまな要因があります。
原因は一つとは限りません。
「忘れっぽい」という症状だけで原因を決めるのではなく、どのようなことを忘れるのか、以前より変化しているか、いつから始まったのかを見ることが重要です。
若いのにすぐ忘れる・忘れっぽいのは病気ですか?
若い方の物忘れも、それだけで病気とは限りません。
睡眠不足、疲労、ストレス、忙しさなどによって集中しにくくなり、「やろうとしていたことを忘れる」と感じることがあります。
年齢にかかわらず、物忘れが続いて悪化している、仕事や日常生活に支障がある、ほかの症状も伴う場合には医療機関へ相談してください。
「さっきのことを忘れる」のは危険ですか?
何を忘れているのかによって意味が異なります。
「さっき何をしようとしていたか忘れた」という場合と、「数分前に起きた出来事そのものを覚えていない」という場合は同じではありません。
直前の出来事そのものを覚えていない、同じ質問を何度も繰り返すなどの変化が続く場合には、専門医への相談を検討してください。
物忘れと認知症はどう違いますか?
物忘れがあるだけで認知症というわけではありません。認知症では認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障が生じます。
たとえば、「昨日の夕食のおかずを思い出せない」ことと、「夕食を食べたこと自体を覚えていない」ことでは、忘れ方が異なります。
加齢による物忘れでは、体験の一部を忘れても手がかりで思い出せることがあります。
ただし、この違いだけで認知症かどうかを自己判断することはできません。
物忘れで病院を受診する目安はありますか?
以前より明らかに忘れっぽくなった、生活や仕事に影響が出ている、家族など周囲から変化を指摘された場合は、受診を考える一つの目安です。
同じことを何度も聞く、予定そのものを忘れる、慣れた場所で迷う、お金や薬の管理が難しくなったといった変化にも注意してください。
また、数日〜数週間で明らかに様子が変わった場合には、早めに医療機関へ相談してください。
物忘れは何科を受診すればいいですか?
物忘れは、脳神経内科、脳神経外科、もの忘れ外来などに相談できます。
どこを受診すればよいか迷う場合には、かかりつけ医に相談する方法もあります。
急な物忘れに、ろれつが回らない、片側の手足が動かしにくい、意識や会話がおかしい、突然の激しい頭痛などを伴う場合には、救急受診を検討してください。

「あれ?」が増えたら3つだけ確認してみてください
「あれ?何しようとしてたんだっけ?」
そんな瞬間があるだけで、すぐに認知症と決まるわけではありません。
日常の小さな「あれ?」まで、一つひとつ数えて不安になる必要もありません。
ただ、「最近、以前とは少し違う気がする」そんなときには、次の3つを振り返ってみてください。
① 何を忘れた?
名前や予定の一部が思い出せないのか。
やろうとしていたことが途中で抜けたのか。
それとも、出来事そのものを覚えていないのか。
② 以前と比べてどう?
仕事、家事、予定、お金や薬の管理など、これまで普通にできていたことに変化はありませんか?
家族や周囲から指摘されることが増えていませんか?
③ いつから?
徐々に気になってきたのか。それとも、短期間で明らかに変わったのか。
物忘れで見てほしいのは、「忘れた」という事実だけではなく、“忘れ方の変化”です。
日常のちょっとした「あれ?」なら、必要以上に自分を責めなくてもいい。
一方で、
「以前の自分とは少し違う」、「生活に困ることが増えてきた」、「家族からも変化を指摘される」
そんなときには、その違和感をそのままにせず、脳神経外科・脳神経内科・もの忘れ外来などへ相談してみてください。
医師プロフィール
林 祥史 院長
私立灘高校卒/東京大学医学部医学科卒
けやき脳神経リハビリクリニック 院長
資格・所属学会
【資格】 日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医、日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医
【所属学会】 日本脳神経外科学会、日本脳血管内治療学会、日本脳卒中学会、日本リハビリテーション医学会、日本頭痛学会、日本めまい平衡医学会、American Academy of Family Physicians、Cambodian Medical Association
クリニック情報
けやき脳神経リハビリクリニック
院長:林 祥史(・日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医・日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医)
所在地:東京都目黒区下目黒2-14-13下目黒HAPPYビル1~3階(受付2階)
診療科目:脳神経外科・リハビリテーション科・内科
検査設備:MRI、レントゲン、超音波など
公式サイト:https://keyaki-nrc.com/