• TEL03-5747-9280
ブログ

高血圧で脳が壊れる?頭痛・めまい・視覚異常…危険なサインと脳卒中・認知症を防ぐ方法

見逃さないで!「高血圧」とあなたの「脳」の意外な関係 ~症状がないからと放置していませんか?~

「血圧が高い?でも、特に症状はないから大丈夫でしょう?」

もしかしたら、あなたもそう思っていませんか?あるいは、健康診断で高血圧を指摘されたものの、「まだ基準値ギリギリだし」「薬は飲み始めたら一生やめられないって聞くし…」と、見て見ぬふりをしているかもしれません。

しかし、この「自覚症状がない」ことこそが、高血圧の本当の恐ろしさです。実は、日本人の3~4人に1人は高血圧に該当すると言われています(厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」より)。そして多くの場合、何のサインも出ないまま、体の中で静かに、そして確実にダメージが進行します。

高血圧と聞くと、「心臓病」「動脈硬化」「血管の病気」といったイメージが強いかもしれません。もちろんそれらは正しいのですが、実は高血圧は私たちの「脳」にとっても、非常に深刻なリスク要因であることをご存知でしょうか?

血圧が高い状態が続くと、脳の非常にデリケートな血管はじわじわとダメージを受け、気づかないうちに静かに、そして確実に弱っていきます。その結果、取り返しのつかない重大な脳の病気を引き起こす可能性が高まるのです。

例えば、

  • 突然、意識を失ったり、体に麻痺が残ることもある脳卒中(脳出血・脳梗塞)
  • 記憶力や判断力が衰えてしまう認知症(特に血管性認知症)

これらは、いずれも高血圧と密接に関わっています。

さらに、普段の生活で感じる「なんとなく頭が重い…」「立ちくらみが頻繁に…」といった症状。これらは単なる疲れではなく、高血圧によって脳が危険信号を送っているSOSサインである可能性も少なくありません。残念ながら、高血圧の初期段階では自覚症状がほとんどないことが多いため、「自分は大丈夫」と安易に考えるのは非常に危険です。

そして、高血圧が原因で引き起こされる脳の病気の中には、これまで述べてきたものとは異なり、急激な血圧の上昇によって突如として脳が危険な状態に陥るケースがあります。それが「高血圧性脳症」と呼ばれる病気です。これは頻度は高くありませんが、放置すれば命に関わることもある、まさに脳の緊急事態であり、その存在を知っておくべき重要な病気です。

この記事では、なぜ高血圧が脳にとって危険なのか、具体的にどのような影響があるのか、そして特に知っておいていただきたい高血圧性脳症について、分かりやすく解説します。あなたの脳を守り、健康な未来を築くために、ぜひ最後までお読みください。


高血圧があなたの脳血管を傷つけるメカニズム:なぜ放置が危険なのか?

高血圧が続くと、脳の血管はどのように変化してしまうのでしょうか?

例えるなら、私たちの血管は本来、弾力のあるしなやかなホースのようなものです。しかし、常に高い圧力がかかり続けると、その弾力性が失われ、硬く、そしてもろくなっていきます(これが動脈硬化です)。

特に脳の血管は非常に細いため、高血圧によるダメージを受けやすいのです。傷ついた血管は、さまざまな問題を引き起こします。具体的には、血管が破れやすくなったり(出血)、詰まりやすくなったり(梗塞)、あるいは小さなダメージが蓄積して脳機能の低下を招いたりします。この状態を放置することは、脳に静かな時限爆弾を抱えているようなものです。

特に脳の血管は非常に細いため、高血圧によるダメージを受けやすいのです。傷ついた血管は、さまざまな問題を引き起こします。具体的には、血管が破れやすくなったり(出血)、詰まりやすくなったり(梗塞)、あるいは小さなダメージが蓄積して脳機能の低下を招いたりします。この状態を放置することは、脳に静かな時限爆弾を抱えているようなものです。


放置できない!高血圧が招く3つの重大脳疾患とそのサイン

高血圧によって脳の血管が傷つくと、次のような深刻な病気のリスクが飛躍的に高まります。

1. 脳出血(脳内出血):高血圧を放置すると血管が破裂する危険

高血圧を放置することで、もろくなった脳の血管が、高い圧力に耐えきれずに突然破れてしまい、脳の中で出血が起こる病気です。特に、収縮期血圧の高値が続く場合にリスクが高まります。

出血した場所や量によっては、脳の神経細胞が破壊され、

  • 突然の激しい頭痛やめまい
  • 体の片側の麻痺(手足が動かない、しびれる、脱力感)
  • 言葉が出にくい、理解できない(失語症、呂律が回らない)
  • 意識障害(意識が朦朧とする、呼びかけに反応しない)

といった重い症状が現れます。一命を取り留めても、後遺症が残ることが少なくありません。突然の激しい頭痛とともに上記のような症状が出た場合は、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。

2. 脳梗塞:高血圧で血管が詰まり、脳の一部が壊死する

高血圧を放置することは動脈硬化を進行させ、血管の壁を傷つけやすくします。傷ついた場所にはコレステロールなどが溜まりやすくなり、さらに血栓(血の塊)ができやすくなります。

この血栓が脳の血管を塞いでしまうと、その先の脳組織に血液が届かなくなり、栄養や酸素が供給されずに脳細胞が死んでしまいます。これが脳梗塞です。

特に高血圧と関連が深いのがラクナ梗塞と呼ばれる小さな脳梗塞ですが、血管が詰まる場所によっては、

  • 片側の手足のしびれや脱力
  • 呂律が回らない
  • 物が二重に見える、片方の目が見えにくい(視覚異常)
  • 突然のふらつきやめまい

など、「あれ?おかしいな…」といったサインから始まることもあり、見逃されがちです。これらの症状が一時的であっても(一過性脳虚血発作:TIA)、高血圧による脳梗塞の前触れである可能性があるため、すぐに医療機関を受診することが重要です。放置すれば、より広範囲な脳梗塞へと進行する恐れがあります。

3. 認知症(血管性認知症):高血圧放置が招く脳機能の低下

高血圧は、アルツハイマー型認知症のリスクも高めることが知られていますが、特に血管性認知症と呼ばれるタイプの主要な原因です。

高血圧を放置することによって脳の細い血管に小さな脳梗塞や微小な出血が繰り返し起こると、少しずつ脳の神経ネットワークが破壊されていきます。このダメージが蓄積することで、

  • 記憶力の低下
  • 判断力や実行機能の障害(物事の段取りができなくなる、集中力の低下)
  • 感情のコントロールが難しくなる(怒りっぽくなる、意欲がなくなる、性格の変化)
  • 手足の麻痺や排尿のトラブルを伴うことも

といった症状が現れます。特に、働き盛りの40代〜50代から高血圧を放置していると、将来的に血管性認知症になるリスクが非常に高くなります。認知症の予防には、若いうちからの血圧管理が不可欠です。


【脳の緊急事態!】見逃すと危険な高血圧性脳症とは?

前述した脳卒中や認知症は、多くの場合、長年の高血圧放置によってじわじわと進行する病気です。しかし、高血圧による脳への影響の中には、急激な血圧上昇によって突如として発症する、より緊急性の高い状態があります。それが「高血圧性脳症」です。

高血圧性脳症は、急な血圧上昇が脳をむくませる病気

私たちの脳血管には、血圧がある程度変動しても脳への血流を一定に保とうとする「自動調節機能」が備わっています。しかし、血圧が異常に高くなると、この自動調節機能が破綻してしまいます。

すると、脳の血管は血圧の高さに耐えきれず、血管から水分が漏れ出し、脳がむくんでしまいます(脳浮腫)。特に、脳の後方部分(後頭葉や頭頂葉)に起こりやすいのが特徴です。この脳のむくみが、さまざまな神経症状を引き起こすのです。

早期に適切な治療(血圧を下げること)を行えば、比較的短期間で回復し、脳のむくみも消失することが多いですが、治療が遅れたり、血圧のコントロールがうまくいかないと、脳出血や脳梗塞を合併したり、重篤な後遺症を残したり、命に関わることもあります。

こんな症状が出たら要注意!高血圧性脳症の危険なサイン

以下のような症状が突然現れた場合は、高血圧性脳症の可能性を強く疑い、すぐに医療機関を受診する必要があります。

  • これまでに経験したことのないような、激しい頭痛(特に後頭部が多い)
  • 視覚異常(急に見えにくくなる、物がぼやける、二重に見える、視野の一部が欠ける、光がチカチカ見えるなど)
  • 吐き気や実際に吐いてしまう(嘔吐)
  • 意識がはっきりしない、ぼうぜんとしている、混乱する、言動がおかしい(意識障害、意識混濁)
  • 手足の震えや全身のつっぱり(けいれん発作)
  • 突然の強いめまいやふらつき

これらの症状は、「寝不足かな?」「風邪っぽいかな?」「肩こりがひどいだけ」などと自己判断して見過ごされやすいものもあります。「いつもと違う」「急におかしい」と感じたら、「高血圧のせいかも?」と疑うことが非常に重要です。

高血圧性脳症になりやすいのはどんな人?

以下のような方は、高血圧性脳症を発症するリスクが高いと考えられています。

  • 高血圧を指摘されているのに、治療を受けていない、または自己判断で治療(薬)を中断した方
  • 急に血圧が上昇しやすい状態にある方(強いストレス、脱水、特定の薬剤の使用など)
  • 腎臓の病気(腎不全など)がある方
  • 妊娠中や分娩後で、妊娠高血圧症候群や子癇を起こした方
  • 特定の免疫抑制剤や抗がん剤を使用している方

ご自身やご家族に上記に当てはまる方がいる場合は、特に注意が必要です。

診断の決め手は「MRI検査」

高血圧性脳症が疑われる場合、最も有用な検査はMRI検査です。MRIで脳の詳しい状態を調べることで、脳のむくみ(脳浮腫)の有無やその範囲を確認できます。特に、特定の撮影方法(T2強調画像やFLAIR画像)で、脳のむくんでいる部分が白く明るく写るのが高血圧性脳症の特徴的な画像所見です。

緊急性が高い場合は、まずCT検査で脳出血など、他の病気ではないかを確認することもあります。

「激しい頭痛が続く」「急に目が見えにくくなった」など、気になる症状があれば、迷わず医療機関を受診し、医師に相談しましょう。特に高血圧を指摘されている方は、その旨を必ず伝えてください。


【症例紹介】高血圧治療の自己中断が招いた「脳の危機」

ここで、実際にあった高血圧性脳症の症例をご紹介します。

40代 男性

この男性は、数年前に健康診断で高血圧を指摘され、降圧薬を処方されました。しかし、特に自覚症状がなかったため、「大丈夫だろう」と自己判断で服薬を中止してしまいました。

ある日の午前中、仕事中に突然、これまでに経験したことのないような激しい後頭部の頭痛に襲われました。「なんだか左目が見えにくい…」「右目もかすむような気がする…」。さらに、立っていられないほどの強いめまいも出現し、同僚に支えられながらなんとか救急車を呼びました。

救急隊が到着した時の血圧は、なんと250/179 mmHgという極めて危険な数値でした。搬送先の病院で緊急MRI検査を行ったところ、脳の脳幹部を中心に広範囲に脳のむくみ(脳浮腫)が認められました。

これらの症状と画像所見から、「高血圧性脳症」と診断。すぐに点滴による血圧を下げる治療が開始されました。

搬送時 MRI

集中的な治療の結果、数日のうちに血圧は落ち着き、頭痛や視覚異常、めまいといった症状は劇的に改善しました。そして、約1ヶ月後に再度MRI検査を行ったところ、脳のむくみはほぼ消失していました。

3日後
30日後

もし、この男性が病院への受診をためらったり、血圧を下げる治療が遅れていたら、脳出血やけいれん発作を合併し、命が危なかったり、重い後遺症が残っていた可能性も十分に考えられます。

この症例は、「自覚症状がないから大丈夫」と高血圧を放置したり、自己判断で治療を中断することが、いかに危険かを物語っています。症状がないからこそ、定期的な血圧測定と医師の指示に従った適切な管理が重要です。


高血圧と脳のSOSサインを見逃さないで!あなたの未来を守るために

高血圧は、心臓だけでなく、私たちの「脳」にとって非常に重大な脅威です。長期間の高血圧を放置することは、脳の血管を傷つけ、脳出血や脳梗塞、そして認知症のリスクを高めます。

また、急激な血圧上昇は、頻度はまれであっても、命に関わる緊急疾患である高血圧性脳症を引き起こす可能性もあります。

「ただの肩こりだろう」「疲れているだけかな」と思っていた症状が、実は高血圧によって脳が助けを求めているSOSサインかもしれません。そして、症状がないからといって安心せず、日頃からの血圧管理が何よりも大切です。

あなたの脳を守り、健康な未来を築くために、以下の点を心に留めておきましょう。

  • 高血圧を指摘されたら、放置せず必ず医師の指示に従いましょう。
  • 自己判断での減薬や中断は絶対にやめましょう。
  • 薬物療法だけでなく、食生活の見直し、適度な運動、禁煙、節度ある飲酒、ストレス管理などの生活習慣の改善も積極的に行いましょう。
  • 普段から血圧を測定し、ご自身の状態を把握しましょう。家庭血圧の測定も重要です。
  • 急な激しい頭痛、視覚異常、めまい、意識の変化など、「いつもと違う」脳関連の症状が出たら、すぐに医療機関を受診しましょう。

早期発見と適切な管理・治療が、あなたの脳を危険から守る何よりの鍵となります。高血圧を甘く見ず、定期的な健康診断や医師の診察を怠らないようにしましょう。

この記事が、高血圧と脳の健康について考えるきっかけとなり、あなたの行動変容につながることを心から願っています。

当院は脳神経外科として、MRIを完備し、頭と身体のトータルケアが可能です。

高血圧に関する疑問や不安、または頭痛、めまい、しびれなど、少しでも気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。早期の検査と専門的な診断、そして適切な治療で、あなたの健康な未来をサポートいたします。


よくある質問(Q&A)

高血圧の薬は一度飲み始めたら一生飲み続けなければいけませんか?

基本的には、血圧を適切にコントロールするために飲み続けることが推奨されます。しかし、生活習慣の改善(減塩、運動、減量など)によって血圧が安定し、医師の判断で薬の量を減らしたり、中止できるケースもあります。自己判断で中止することは絶対に避け、必ず医師と相談してください。

家庭での血圧測定はなぜ重要ですか?

家庭血圧は、医療機関での測定よりもリラックスした状態で測れるため、より日常的な血圧の状態を把握できます。また、医療機関での測定時に緊張して血圧が高くなる「白衣高血圧」や、逆に医療機関では正常なのに家庭では高い「仮面高血圧」を発見するためにも重要です。毎日決まった時間に測定し、記録を残すことをお勧めします。

高血圧の初期症状にはどのようなものがありますか?

高血圧の初期には自覚症状がほとんどないことが多いため、「サイレントキラー(静かなる殺人者)」とも呼ばれます。しかし、血圧が非常に高くなると、頭痛、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸、息切れ、鼻血などの症状が現れることがあります。これらの症状は他の病気でも見られるため、高血圧によるものと気づかずに見過ごされがちです。少しでも気になる症状があれば、血圧を測定し、医療機関を受診しましょう。