頭痛・姿勢の問題、脳神経外科スタッフの親としての悩み|スマホは「悪」?

子供がスマホを使っている姿を見ると、親として不安になることがありますよね。スマホは確かに便利な道具ですが、使い方次第では体や心、さらには脳の健康にまで影響を与える可能性があると言われています。では、スマホは本当に“悪”なのでしょうか?ここでは、スマホの利用が子供に与える影響と、それに対する親としてできる対策について考えてみたいと思います。
スマホが引き起こす問題とは?
スマホの使い過ぎが引き起こす問題は、体だけでなく、脳や心の健康にも広がっていることがあります。特に子供たちの成長に影響を与える問題として、以下のような点が挙げられます。
1. 姿勢の問題:スマホ首(ストレートネック)

スマホを使うとき、首を前に傾ける姿勢が「スマホ首(ストレートネック)」を引き起こす可能性があります。首の前傾角度が15度増えるごとに、首にかかる負担は2~3倍に増えると言われています。例えば、15度前傾すると、首に約12kg、30度では約18kgの重さが加わると言われています。
頭をボーリングの球と想像してください。棒の上にバランスよく球が乗っている分には安定しています。少し傾き球が落ちそうになると、首の筋肉は必死に引っ張り、落ちないように落ちないようにしている状態となります。


この状態では首に何が起こっているのでしょうか?


この負担が続くと、頭痛や肩こりが慢性化し、大人でも頭痛や頚部痛の原因となってしまいます。成長期の子供たちにとっては頸椎(首の骨)の歪みや血流への影響が心配となります。冒頭の息子の姿勢はダメな例代表ですね…
2. 内斜視や視力低下
スマホの画面を長時間近距離で見ることで、「内斜視」や視力低下を引き起こす可能性もあります。特に成長期の目は適応能力が高い反面、負担が積み重なると目の疲れやピント調節機能の低下が起こりやすくなります。もしお子さんの目の疲れや視力に不安がある場合は、当院の目のリハビリを活用することで、内斜視や目の疲れを軽減する方法について相談できます。
3. スマホ指
スマホを持つ際、小指でスマホを支える癖がある人は「スマホ指」に注意が必要です。長期的には、指関節に変形を引き起こすことも考えられます。これも体に負担がかかる一例です。娘の指を例に見てみます。


右手の小指がやや外側に開いているのがわかるかと思います。スマホ使用歴(小2~現在中2)。弟はまだ片手で小指にかけて持つことが出来ないためこのような変形は見られません。
尚、娘に指の変形について言った結果・・・
「ピアノ弾く時、指開く方が良いから!✌」
だそうです...
4. 頭痛とブルーライト
日々、脳神経外科で働いていると、スマホ関連頭痛で来院される患者さんが年々増えていることを感じています。特に、以下のような症状が目立ちます。
- 緊張型頭痛:スマホ利用時の悪い姿勢が首や肩の筋肉を緊張させ、血流を悪化させることで起こります。
- 片頭痛:ブルーライトなど何らかの光刺激が脳を刺激し、頭痛や目の疲れを引き起こすことがあります。暗い部屋でスマホを使用すると症状が悪化させる可能性もあります。
これらの頭痛の背景には、首から脳への血流や神経の圧迫といった問題が関わっているかもしれません。脳神経外科では、頭痛がスマホ関連だけでなく、脳血管疾患などの病気が隠れていないか確認することも重要です。
親としてできること|スマホ利用のルールを作る?
スマホの問題点を防ぐために、親として子供に適切な使い方を提案することが大切なのかなと思います。単に「ダメ」と制限するだけではなく、無理なく取り入れられる具体的なルールや代替案を考えてみるとよいのかもしれません。
⌚ 時間を決める
• スマホの使用時間を30分や1時間といった短いスパンで区切り、タイマーを活用する。
• 休憩を挟む習慣をつけることで、目や体への負担を減らせます。
🙍姿勢に気をつける
• 寝転がりながらスマホを使わない:仰向けや横向きで使う姿勢は首や目に負担がかかりやすいです。
• 目線の高さを意識して、スタンドやクッションを使い、スマホ画面を目線の高さに合わせるようにしてみましょう。
📺デジタル機器を活用する場所を工夫する
• YouTubeはテレビで見る:家族と共有できる環境で視聴することで、スマホ利用が自然と制限されます。
• 食事中はスマホを使わない:食事中の利用を避け、家族での会話を優先するルールを作りましょう。
とはいえ、私も含めて「そんなルール聞きやしない!」というのが現実なのも悩みの種なのですよね…
スマホ関連頭痛への対応
当院では、頭痛で来院された患者さんに対し、まずMRI検査を行い、脳に異常がないか確認しています。もし脳や血管に異常がない場合は、姿勢や習慣を改善するアプローチを提案しています。
例えば
• 筋肉の緊張を解消するリハビリの案内
• 首や肩をほぐすリラクゼーション法
• 画面を見る際の姿勢改善 etc
頭痛の原因を正しく把握し、症状に合った対応を行うことで、スマホを便利に活用しながら健康を守ることができます。
また、長引く頭痛や突然の頭痛、いつもと違う頭痛などの場合は、スマホ頭痛と決めつけずに医療機関を受診することが大切です。
答えをスマホで探している私…
子供たちのスマホ利用をどうすべきか悩みながら、その答えやヒントをスマホで検索している自分がいます。まるで「スマホを使いすぎている子供にスマホの使い方を教えるために、スマホで調べている自分」という逆転現象。今の時代、親も時には子供から学びながら、時には試行錯誤しながら育てていくものだと感じます。(ことデジタル機器やアプリについては子供に教えてもらう場面が多いという切なさ…)
スマホ自体は悪ではなく、使い方が大切だと思います。親が一方的に制限するのではなく、ルールを話し合いながら決めていくことで、子供たちも納得して使うようになるでしょう。(そのためにはまず自分が…です)
便利なスマホと上手に向き合い、子供たちが健康的に未来を生きていける環境を整えていくことが、私たち親の役目だと思っています。