ヒートショックになりやすい人の特徴9選と起きたらどうする?前兆・対処法を解説

冬のお風呂、「あぁ寒い!早く温まりたい」と急いで湯船に——。
その一瞬が、命に関わる危険を招くことがあります。
毎年、冬に多発する「ヒートショック」。
入浴中や入浴後に「めまい」「ふらつき」「意識消失」を起こし、重症化すると脳梗塞・脳出血・心筋梗塞につながる危険な現象です。
「自分は大丈夫」と思っていませんか?
実はヒートショックは、高齢者だけでなく、血管や自律神経に負担を抱える人なら誰にでも起こりうるのです。
この記事では、脳神経外科の視点から以下を解説します。
- ヒートショックになりやすい人の特徴(危険度チェック)
- ヒートショックが起きたらどうする?(倒れた時・自分が苦しい時の対処法)
- 今日からできる予防法と前兆サイン
目次
ヒートショックとは?原因と起こるメカニズム
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が乱高下し、体がショック状態に陥る現象です。
特に冬場、「寒い脱衣所 → 熱い湯船」という温度差が大きいほど、血圧が急上昇・急降下を繰り返し、心臓や脳の血管に強い負担がかかります。
例えるなら、老朽化した水道管に急に高水圧をかけるようなもの。
血管が耐えきれず破裂(=脳出血)や閉塞(=脳梗塞)を起こすことがあります。
なお、この急激な寒暖差は、命に関わる疾患だけでなく、冬に悪化しやすい「こめかみや後頭部の頭痛」の原因となることもあります。【寒さ・冬】頭痛はなぜ起こる?はこちら
ヒートショックが「脳梗塞・脳出血」を引き起こすメカニズム
血圧の激しい乱高下は、脳の血管にとって致命的なストレスとなります。
脳出血の原因:血圧の「急上昇」と老朽化した水道管の例え
動脈硬化が進んだ血管は、例えるなら「老朽化して錆びついた水道管」のような状態です。

血圧が急上昇したとき
老朽化した水道管に、突然高水圧の水を流し込むのと同じです。
血管の壁がその圧力に耐えきれず、破裂してしまいます。これが脳出血です。
脳梗塞の原因:血圧の「急降下」と送水ポンプの停止の例え
脳は、全身の臓器の中で最も多くの酸素を必要としています。

血圧が急降下したとき
心臓が血液を送るポンプだとすると、血圧の急降下はポンプの力が極端に弱まる、あるいは一時的に停止する状態です。 これにより、末端の脳細胞まで血液(酸素と栄養)が届かなくなり、細胞が壊死してしまいます。これが脳梗塞です。
ヒートショックになりやすい人の特徴9選【リスク要因と予備軍チェック】
以下の項目に当てはまる方は、ヒートショックの危険度が高い傾向にあります。
該当する特徴が多いほど、冬の入浴習慣の見直しが必要です。
| 特徴 | 理由・ポイント | 対策・予防策 |
|---|---|---|
| ① 高血圧・糖尿病・心臓病などの持病がある | 血管反応性が低下し、急な血圧変化(乱高下)に対応できない。脳血管への負担が最も大きい高リスク群。 | 入浴前に血圧を測り、高めなら休んでから入浴。持病の管理が最大の予防。 |
| ② 高齢者(65歳以上) | 自律神経の働きが鈍り、急激な体温調節が遅れるため、血圧の乱れが起こりやすい。 | 家族と声をかけ合い、一人での入浴を避ける。 |
| ③ 熱いお湯(42℃以上)が好き | 交感神経が過剰刺激され、血圧が急上昇する。その後、湯から出た時に急降下しやすい。 | 湯温は40℃前後に設定。かけ湯で体を慣らすことを徹底する。 |
| ④ 夜遅く・一人で入浴する | 事故が未発見となる時間が長くなり、救命が間に合わないケースが多い。 | 家族が在宅中に入浴し、声をかけてから入る。 |
| ⑤ 飲酒後・食後すぐに入浴する | 飲酒は血管を拡張、食後は消化器に血液が集中し、血圧が急降下しやすくなり、意識消失(失神)のリスクが高まる。 | 飲酒は入浴後にする。食後30分~1時間空ける。 |
| ⑥ 脱衣所・浴室が寒い | 居間との温度差が5℃以上あると、血管が急収縮し、血圧が乱れる。 | 脱衣所・浴室を暖房で温め、温度差を極力なくす。 |
| ⑦ 睡眠不足や極度の疲労 | 自律神経が不安定な状態であり、血圧変動に対する防御反応が弱まっている。 | 体調が優れないときは、シャワーで済ませるなど入浴を控える。 |
| ⑧ 降圧剤など特定の薬を服用している | 薬の影響で血圧が下がりやすく、入浴による血圧急降下が重なるリスクがある。 | 主治医に冬の入浴について相談する。立ち上がるときはゆっくり行う。 |
| ⑨ 長時間入浴(10分以上) | 湯温にかかわらず、脱水症状を招き血栓(脳梗塞・心筋梗塞の原因)ができやすくなる。 | 10分以内の入浴を目安に、必ず水分補給を行う。 |
いますぐ確認!ヒートショック危険度セルフチェック
- 冬でも熱めのお風呂(42℃以上)が好き
- 脱衣所が寒い
- 血圧が高め、または薬を服用中
- 夜遅くに一人で入浴することがある
- 飲酒後に入浴する
- 65歳以上、または家族に高齢者がいる
→ 3つ以上当てはまる方は、ヒートショックリスクが高めです。
生活習慣の見直しや温度管理の工夫が必要です。
ヒートショックが起きたらどうする?倒れた時の対処法と救命手順
入浴中のご自身が「めまい・吐き気」を感じたら(セルフ救命)
もし入浴中に異変を感じたら、無理に立ち上がろうとしないでください。立ち上がると血圧がさらに下がり、失神する危険があります。
- すぐに浴槽の栓を抜く(お湯を減らす)
- 水位が下がったら、低い姿勢のまま浴槽から出る
- 桶で壁やドアを叩き、大きな音を出して家族に知らせる
「起きたらどうする?」と迷わず、まずは溺れない状況を作ることが最優先です。
初期症状の警告と対処
ヒートショックの初期段階では、以下のような軽度な症状が出ることがあります。これらは体からの危険信号です。無理せず家族に声をかけるか、緊急連絡先に連絡してください。

- 立ちくらみやめまい(血圧急降下による脳への血流不足)
- 吐き気、気分不良
- 脱力感
これらの症状が出た後、血圧の変動がさらに激しくなると、意識障害や失神(意識を失うこと)につながり、浴槽内で溺れる事故に直結します。
家族が倒れていた場合の緊急対応フロー
家族が入浴中に倒れているのを発見した場合、意識の有無で行動が大きく変わります。

| 状況 | すぐに取るべき行動(手順) | 危険なサイン(即119番通報) |
|---|---|---|
| 【意識がある場合】 | 1.ゆっくりと湯船から出す。血圧の急変に注意。 2.暖かい部屋に移動させ、体温を保つ(毛布など)。 3.水分(スポーツドリンクなど)を少量ずつ補給させる。 | 初期症状が続く 寒気や震えがある 激しい頭痛や胸の痛み |
| 【意識がない場合】 | 1. すぐに浴槽の栓を抜く!(溺水防止) 2. 119番通報し、救急車を呼ぶ。(浴槽から出すのは、可能であれば。) 3. 呼吸が停止している場合は、救急隊が来るまで心臓マッサージ(胸骨圧迫)を実施する。 | 意識がない、呼びかけに反応しない、呼吸が停止している |
浴槽内で倒れた場合、溺水(水を飲み込むこと)が最も危険です。意識がない場合は、まず栓を抜いて水位を下げることが最優先の救命行動です。一刻を争う事態であるため、ためらわずに救急搬送を依頼してください。
今日からできるヒートショック予防策と対策
ヒートショックを遠ざけるための予防:「環境」と「体」の二つの柱
ヒートショック予防は、「環境の改善」と「体の状態の最適化」の二つの柱で成り立ちます。
1. 環境の改善:温度差をなくす具体的な予防対策
| ヒートショック予防策 | 具体的な方法 | ポイント |
|---|---|---|
| 脱衣所・浴室を温める | 入浴前に小型ヒーターなどで温め、居間との温度差をなくす。 | 血圧の急上昇を防ぐ最大の予防策。 |
| お湯の温度 | 41℃以下のぬるめのお湯に設定する。 | 血圧の急降下を防ぐ。長湯はしない。 |
| かけ湯の徹底 | 手足の末端から心臓に遠いところからかけ湯をする。 | 体を温度に慣らし、血圧変動を緩やかにする予防法。 |
| 入浴時間 | 10分以内を目安とし、水分補給をしてから入浴する。 | 脱水による血栓リスクを予防する。 |
2. 体の状態の最適化:持病のチェックと通院による予防
ヒートショックになりやすい人にとって最も重要な予防は、持病の管理です。
- かかりつけ医との連携
- 高血圧や糖尿病などの持病がある方は、医師の指示通りに確実に服薬し、血圧や血糖値を安定させることが、血管の負担を減らす最大の予防策になります。
- 冬場の血圧測定
- 冬は寒さで血圧が上がりやすくなります。日頃から血圧を測定し、変動が大きい場合は主治医に相談しましょう。
当院でできる検査とリスク評価
ヒートショックのあとに「めまい」「ふらつき」「頭痛」が続く場合、一時的な脳血流低下や小さな脳梗塞が起きている可能性があります。
当院ではMRI検査で、脳の血流や血管の状態を詳しく確認できます。
実際、風呂上がりのふらつきをきっかけに「小さな脳梗塞」が見つかることもあります。
※無症状でも、「ヒートショックになりやすい人」に該当する方は一度検査をおすすめします。
早期に血管の異常を見つけることで、重大な合併症を防ぐことができます。
よくある質問(FAQ)
ヒートショックは高齢者だけの問題ですか?
いいえ。高齢者に多いのは事実ですが、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患がある方は、40代・50代でも発症リスクがあります。また、若くても「飲酒後の入浴」や「極度の疲労時」は危険です。
冬場の入浴で、脱衣所や浴室の温度差はどれくらいまでなら安全ですか?
温度差は「5℃以内」に抑えるのが理想的です。暖房器具を使って脱衣所を暖めるほか、シャワーを高い位置から出して給湯することで、蒸気で浴室全体を暖めることができます。
お風呂の温度と入浴時間は何℃・何分が目安ですか?
お湯の温度は41℃以下のぬるめに設定し、入浴時間は10分以内を目安にしましょう。42℃以上の熱いお湯や長時間の入浴は、血圧の急激な低下や脱水症状を引き起こすリスクを高めます。
飲酒後に入浴するのはなぜ危険なのですか?
アルコールには血管を拡張させ、血圧を下げる作用があります。入浴(特に熱いお湯)も血管を広げ、血圧を下げます。これにより、血圧が急激に下がりすぎて意識を失う(失神)リスクが高くなり、浴槽内で溺れる事故につながるため大変危険です。飲酒は入浴を済ませてからにしましょう。
冬のお風呂を“安全に楽しむ”ために
| 特徴 | 理由 |
|---|---|
| 高血圧・糖尿病 | 血管が硬く、血圧変動に弱い |
| 高齢者 | 自律神経の反応が鈍い |
| 熱いお湯が好き | 血圧が急上昇する |
| 夜遅く一人で入浴 | 発見が遅れる危険 |
| 飲酒後入浴 | 意識障害・転倒リスク |
| 浴室が寒い | 温度差で血管が収縮 |
「自分は大丈夫」と思わず、
家庭環境や入浴習慣を見直すことが最も確実な予防法です。
冬の健康を守るために、気になる方は脳や血管のチェックを一度受けてみましょう。
けやき脳神経リハビリクリニックでは、
ヒートショック(急激な温度変化による血圧変動)や冬場の脳卒中・脳梗塞リスクに対して、
MRI・MRAによる脳・脳血管の精密検査と、専門医による血圧・生活習慣の総合管理を行っています。
特に、
- 「お風呂で立ちくらみ・めまいを感じた」
- 「入浴後にふらつく・気分が悪い」
- 「冬になると血圧が高くなる」
といった症状がある方は、ヒートショックによる脳出血・脳梗塞のリスクが高まっている可能性があります。
ご自宅での対策とあわせて、脳の血管の状態を一度チェックしておくことが安心につながります。
クリニック情報
院長:林 祥史(・日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医・日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医)
所在地:東京都目黒区下目黒2-14-13下目黒HAPPYビル1~3階(受付2階)
診療科目:脳神経外科・リハビリテーション科・内科
検査設備:MRI、レントゲン、超音波など
公式サイト:https://keyaki-nrc.com/
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