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「赤ちゃんの頭のかたち外来」カメラ測定での評価方法

こんにちは。けやき脳神経リハビリクリニック院長の林です。
前回の記事では、「なぜ赤ちゃんの頭はゆがみやすいのか」「治療は必要なのか」といった点についてお話しました。今回は実際に当院で行っている カメラ測定による重症度判定方法 についてご紹介します。


1.頭のゆがみはどうやって測るのか?

3Dカメラでの頭部計測

当院では、「ベビーバンド」を取り扱っている Berry社推奨の3Dカメラ を用いて赤ちゃんの頭の形を測定しています。

  • 赤ちゃんには保護者の膝の上か椅子の上で座っていてもらい、スタッフが頭全体を360度撮影(5分~10分)
  • 撮影したデータをBerry社に送り、解析(初回撮影時、平日であれば約30分で解析完了)
  • そのデータから、頭の長さ・幅・斜め方向の差や体積率を数値化
  • 「ゆがみ」の程度の重症度を判定

短時間で被ばくもなく、安全に正確なデータが得られるのが大きな特徴です。


2.主な評価指標


赤ちゃんの頭の形を評価をする方法として、見た目上の形から重症度を判断する「Argenta分類」という方法が以前より用いられていました。国際的に広く知られている分類ではありますが、ある程度主観による分類であることがデメリットでした。最近では計測によって客観的な数値を用い、重症度を判定することが主流となってきました。当院では3Dカメラを用い、最大頭囲における以下の項目を測定し、Berry社の指標に則って重症度を判断しています。

(1)斜頭の指標:CVAI (Cranial Vault Asymmetry Index) %

計算式:(長軸ー短軸)/ 短軸 ×100

CVAI (%)判定
<5正常範囲
5~7軽症
7~10中等症
10~14重症
14以上最重症

当院では中等症以上でヘルメット治療を推奨しております。

(2)短頭・長頭の指標:CI (Cephalic Index) %

計算式:左右長/ 前後長 ×100

CI (%)判定
<80長頭
80~94正常範囲
95~101短頭(軽症)
101以上短頭(重症)

当院では重症の場合ヘルメット治療を推奨しております。
なお軽症でも全体の形状から改善が期待できる場合、ヘルメット治療をお勧めするときもございます。

*短頭の指標には中等症はありません。


● 測定上の注意点
これらはもともと「平面」での測定法ですので、メジャーやノギスで計測可能ですが、赤ちゃんが動くことで誤差が出やすいという問題があります。
そのため、当院では 3Dカメラを用いて正確に同じ断面を抽出し、数値化する ことで、安定した評価を行っています。

(3)容積評価:前頭部/後頭部左右対称率 (%)


もう一つ、3Dカメラで撮影を行うことで左右の体積率を評価することが可能です。前頭部および後頭部において、左右の比率を%で表して、重症度を評価いたします。

左右対称率 (%)判定
≧90Level 1 (軽度)
85~90Level 2 (中等度)
80~85Level 3 (重度)
<80Level 4 (超重度)

斜頭症の評価において、CVAIは1平面での評価となりますが、こちらの3Dだと容積全体を評価できます。形にゆがみがある方や、上方にへこみが強い方においては、CVAIでは正常または軽症でも容積評価では重症と判定されることがあります。

Level 3 (重度)以上でヘルメット治療を推奨しています。

まとめ



当院の「赤ちゃんの頭のかたち外来」で行っている3Dカメラ測定の方法と、評価の仕方についてお伝えいたしました。3Dカメラを取る際は5~10分かかりますが、その分正確な数値を出すことができるので大変有用と考えています。重症度については複数の指標を総合的に判断したうえで、ヘルメット治療の適応があるかどうかをお伝えしています。

次回、ヘルメット治療の原理と実際の流れについて、お伝えいたします。

撮影後は各指標が記載されたレポートをお渡しします。
レポートでは重症度のうちどこにあたるか、わかりやすいグラフもついています。治療が始まった場合は、経過をグラフで確認することができます。