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MRIで金属があるとどうなる?外す理由と画像への影響をわかりやすく解説

なぜMRI検査で金属を外すの?その理由を知っていますか?

MRI検査を受けるとき、「ピアスやネックレスなどの金属類を外してください」と言われた経験はありませんか?金属が強い磁石に引き寄せられて危険、やけどのリスクがある、という話を聞いたことがあるかもしれません。もちろんその通りなのですが、実はそれだけではありません。それは、「MRI画像が大きく乱れてしまう」からです。 この記事では、金属があるとMRI画像に大きな乱れ(金属アーチファクト)が生じる理由を、分かりやすく解説します。MRI検査の注意事項や、金属があるとどうなるのか、疑問に思っている方はぜひお読みください。

【影響①】金属があるとMRI画像が乱れる!その理由とは?

MRIは、体の中の構造を詳細に映し出すために、強い磁場とラジオ波を使って体内の様々な原子から微弱な信号を受け取り、その信号を元に、どの場所からどのような情報が出ているのかを特定して画像を作り出します。
このとき、体内や体の周囲に金属があると、信号が乱れて、画像が歪んだり、見えなくなったりします。
これを「金属アーチファクト」と呼びます。 例えば、歯の詰め物や金属製のインプラントが原因で、画像がぼやけたり、黒く抜けてしまったりすることがあります。
そのため、金属がある場合、画像が不正確になり、医師が正しい診断を行うことが難しくなるのです。

【わかりやすく例える】MRIの世界=静かなコンサートホール


MRIがどのようにして画像を作るかを、少しわかりやすい例えで説明してみます。
MRIでは、体内の各組織が発する信号を使って、その組織が体のどの「場所」にあるのか、どのような「状態」なのかを正確に捉え、画像として表現しています。
これを、「静かなコンサートホールで、様々な楽器がそれぞれの音色を奏でている」様子に例えてみましょう。

● MRI画像のしくみを音楽にたとえると…

• 静かで均一なコンサートホール → MRIの磁場が体全体に均一にかかっている状態
• 様々な楽器の音色(バイオリン、ピアノ、フルートなど) → 各部位の原子が出す微弱な信号(組織の種類や状態によって異なる音色)
• 楽器の配置場所 → 各信号の正しい位置情報(どの組織が体のどこにあるか)
このように、すべてが整っていると、正しい音(信号)が、正しい場所から届く=正確なMRI画像が得られます。

【影響②】金属があると、コンサートは大混乱! 金属が入り込むとどうなるか?

金属は磁場やラジオ波に強い影響を与えるため、それぞれの楽器から発せられる音色や、その音色がホール全体に響き渡る様子が大きく乱れます。まるで、静かで美しいコンサートが、突然めちゃくちゃになってしまうような状態です!

  • 金属がある部分は、本来の楽器の音(信号)が正しく反響しない
    • 金属の周囲では特定の音色が聞こえなくなったり、小さくなったりする
  • 金属によって歪んだ反響が、実際とは違う場所から音が聞こえるように錯覚させる
    • 本来バイオリンの優しい音が聞こえるはずの場所から、トランペットの荒々しい音が聞こえてくるように、信号が誤った場所に配置され、画像が歪みます。
  • さらに、金属自体がザーッというノイズのような不要な音を発する
    • 本来の信号とは異なる不要な信号が混ざり込み、画像が乱れます。

金属は、音の反響(信号)を不自然に変えコンサートが突然ぐちゃぐちゃになるようにMRI画像の「乱れ」や「ノイズ」の原因になります。

【専門的だけどやさしく】なぜ金属はMRI画像を乱すの?

では、金属がなぜこのようにMRI画像を乱してしまうのでしょうか?
その原因は、金属と体内組織が持っている磁場やラジオ波への反応の違いと、渦電流という現象にあります。これらを分かりやすく説明します。

①【磁化率の違い】で磁場が歪む(=反響が乱れ、楽器の配置がめちゃくちゃに)

まず、金属と体の組織では、磁化率(磁場への反応の強さ)が異なります。
強い磁場の中で、金属はあたかも強力な磁石のように振る舞い、周囲の磁場を大きく歪ませてしまいます。

楽器から発せられる繊細な音(信号)の反響を乱し、それぞれの楽器の音がどこから聞こえてくるのか、判別しづらくしてしまうのです。

現象原因影響
信号が失われる磁場の歪み黒く抜ける(特定の楽器の音が聞こえなくなる)
信号の位置がズレる磁場の乱れ歪んだ画像になる(楽器の配置が実際と違うように見える)
信号が集中する位置認識の誤認白く光る部分になる(特定の楽器の音が異常に大きく聞こえる)

②【渦電流】が発生し、さらに磁場が乱れる

MRIは、強い磁場の力を利用して体内の原子を特定の方向に並べた後、短いラジオ波(電波の一種)を当てることで、それらの原子が共鳴して、それぞれの組織に応じた微弱な信号(特有の音色)を放出させます。 このラジオ波は、体内の情報を引き出すための「呼びかけ」のような役割を果たします。

しかし、金属があると、このラジオ波が金属内部に渦電流(うずでんりゅう)という不要な電流を生み出します。
この渦電流は、金属内で勝手に小さな磁石のような働きをし、新たな磁場を作り出します。
この新たな磁場が、もともとのMRIの均一な磁場をさらに乱し、本来の信号の反響(それぞれの楽器の音色)をさらに歪ませてしまうのです。
まるで、コンサートホールに予期せぬノイズが響き渡り、それぞれの楽器の音色を正確に聞き取ることができなくなるような状態です。

最終的にMRI画像はどうなる?

金属があると、画像の中に異常が現れます。
これらは、先程説明した「反響の乱れ」による影響です。

例えば、ヘアピンが原因で、脳の一部がまったく映らない(本来聞こえるはずの重要な楽器の音が聞こえない)場合もあります。
あるいは、人工関節周囲の信号が強調され、異常があるように見えてしまう(本来は静かなはずの場所から、大きなノイズのような音が聞こえてくる)こともあります。

正常FLAIR
正常な画像
金属アーチファクト
ヘアピンが付いた画像
(黒抜け、歪み、白く高信号化)

MRI画像に金属が与える影響とは?

MRI画像を正確に得るためには、体内の各組織から発せられる信号(それぞれの楽器の音色)が、歪みなく、正しい場所から反響してくることが大切です。
金属があると、この繊細な反響が乱れ、正しい画像(コンサートホールの正確な音響)が得られなくなります。

• 磁場の歪みや渦電流によって、金属の周りの信号の反響が不自然になり、画像が歪んだり黒く抜けたりします。
• 金属アーチファクトは、まさに「反響の歪み」や「ノイズ」の原因となるものです。

金属アーチファクトのイメージ

MRI検査前に金属を外すのは、安全はもちろん、正確な診断のため!

金属を外すように言われるのは、安全面だけでなく、画像の乱れを防ぎ、正確な診断を行うためです。
金属があると、重要な部分が映らない、または誤って映ることがあるため、診断に支障をきたします。
MRI検査を受ける際には、金属を外すことで正確な画像を提供し、より正確な診断に繋げることができます。
「静かなコンサートホールと様々な楽器の音色」の例えを参考に、少しでも理解が深まったことを願っています!