退院後の上肢のリハビリの重要性
こんにちは。作業療法士の伊藤です。
けやき脳神経リハビリクリニックでは、脳梗塞・脳出血後のリハビリに、積極的に取り組んでいます。
今回は、退院後のリハビリの重要性についてお話したいと思います
突然動かなくなる、しびれる、自分の手じゃなくなる
いつも何気なく使っている利き手。ある日突然、動かなくなったらどうしますか?
これから先、どうやって食事をしよう・・・。背中がかゆいときに、掻けないよ・・・。パソコンを使うのも、大変だな・・・。着替えもうまくいかないな・・・。
本当に、いろいろな「大変さ」に直面します。
利き手でも、利き手でなくても、私たちの日常生活では両手を使う、ということは生活上必要なんです。
脳梗塞は、ある日突然起こります。
脳梗塞での入院
脳梗塞が見つかると、多くの場合即日入院となります。
家のこと、仕事のこと、学校のこと、急に入院なんて言われても・・・と思うと思いますが、即時入院を言い渡される場合が9割です。私も長年二次救急病院で働いていましたのでよく分かります。
検査、点滴、などで、短い場合でも一週間から10日間は入院となります。
治療が終わると
身体の麻痺がある場合、多くは回復期リハビリ病院への転院を行い、集中的なリハビリを行います。しかし、足に麻痺がほとんどなく、手の麻痺のみの場合、自宅に帰ってリハビリしながら生活する、という選択肢もあります。
入院よりは、慣れ親しんだ自宅での生活のほうがいいと思う気持ちはよく分かります。歩ける場合、自宅でのリハビリを希望することも多いようです。
自宅退院後のリハビリ
自宅に帰ると、自由な生活が待っています。リハビリをしなきゃな、とは分かっていてもなかなか取り組めないことも多かったり(夏休みの宿題をなかなかやらない、子どもと同じですね。)、生活をするのに精いっぱいでリハビリにまで手が回らないことも多くなるようです。
リハビリは時期が大切
脳梗塞後のリハビリは、発症から3カ月ぐらいまでは集中的に行うことで回復が期待できます。それ以降も改善はしていくことが多いですが、改善のスピードは緩やかになります。
そのため、自宅退院になった場合、すぐにリハビリを行う必要があります。
どうやって行うのか
リハビリは麻痺の回復度合いに合わせた方法で適切に行うと、機能は改善します。変化はほんの少しずつみられてきます。しかし、ほんの少しの変化も見逃さないことが重要になります。
今、いろいろな本や、YouTubeでの動画配信があり、リハビリの方法を知ることができますが、セラピストが患者さまの手を実際にみて、触って、分かることが沢山あるのです。
そして、今やるべき運動をスモールステップで適切に行っていくことで、回復していきます。
どこで行うのか
入院をしていた、救急病院では外来患者のリハビリは行っていないところが多いです。回復期リハビリ病院でも、入院していた方が退院した後のリハビリは行っていますが、入院をしたことのない人のリハビリを受け付けることは難しいようです。
そのため、当院のような「クリニック」でのリハビリになります。
また、介護保険を利用するか、医療保険を利用するか、という選択にもなります。
介護保険を利用する場合、医療保険でのリハビリは受けることが出来ません。これは、国が決めたことなので仕方ありません。介護保険でのリハビリは時間も日数も、介護度によって限られてしまいます。
けやき脳神経リハビリクリニックでのリハビリ
当クリニックでも、急性期病院退院後の上肢のリハビリに積極的に取り組んでいます。医療保険の場合、毎日通うことも可能です。はじめは頻回に通っていただき、自宅で行う運動もお伝えします。自宅での運動が進められてきたら、徐々に通院回数を減らし、それぞれの目標達成に向けて取り組んでいきます。
右手の麻痺を乗り越えて、寿司が握れるようになった
当クリニックに通われていた患者様のご紹介をしたいと思います。(ブログに掲載させていただくことにつきましては、患者さまからのご了承を得ております。)
突然の右手の麻痺、入院
Mさん、63歳。寿司職人として自分のお店を構えていました。近所の常連さんからはもちろんですが、恵比寿という土地柄、外国からの観光客にも人気の寿司屋で、忙しい毎日を送っていました。
ところがある日、突然の右手の麻痺が生じ、救急車搬送されました。
幸いにも、治療はスムーズに進み、入院は二週間、という短期間の治療で終了となりました。
治療終了時には、足の麻痺はほぼなかったのですが、右手の麻痺はまだ指の動きも悪く、力も全くないため、右手でスプーンを持って食事をすることも大変でした。
自宅退院
前述しましたが、Mさんの右手は、お寿司を握るどころかスプーンを持って食事をすることも大変でした。持ちやすく、太柄にしたスプーンでも、数回使うだけで疲れてしまう、といった様子です。しかし、Mさんは3~4週間後にはお店を再開したい、という思いがありました。
リハビリ通院開始
退院日にクリニックに受診にいらしてくださいました。その日から早速、リハビリ開始となりました。Mさんの目標である「お店の再開」に向け、はじめは毎日の通院から始まり、徐々に週に3回のリハビリ通院と合わせて、状態にあわせた自宅での運動方法を毎回お伝えし行っていただきました。
OTとの二人三脚のはじまりです。
入院していないとは言え、毎日リハビリです。徐々に回復していくため、自主トレも細かく変更する必要があります。Mさんは、毎日しっかり行ってくださいました。
また、再発予防のための生活管理も一緒に行っていきます。
右手も徐々に改善し、普通のスプーンが使えるようになり、自助具箸が使えるようになり、包丁が握れるようになり、箸が使えるようになり・・・最終的には、字を書くこともできるようになりました。字を書くことは、注文をメモするのに絶対できないと困る、とMさんが言っていましたが、「そこまで改善するかはやってみないと分からない」とお伝えしていました。Mさんの頑張りで、目標が達成でき、お店の再開にも漕ぎつけました。
仕事再開後もしばらくリハビリは続きます
まだ手が完全に良くなったとはいえない状態での、お店の再開です。メンテナンスと、フォローのリハビリの時期です。この時期に、急にリハビリを止めてしまうと、使えるようになった右手に無理がかかったり、右手をかばって腰が痛くなったり、様々な身体の不調が出てきてしまうことが多くあります。また、仕事をしていくなかで、「こんなことが大変だった」「こんな事が出来るようになりたい」など問題点が出てきます。それを一緒に解決していきます。仕事の都合に合わせて、リハビリ回数は減りますが、右手での作業ができるようになってきているので、大丈夫でしょうという判断で、回数を減らしてのリハビリを続けました。
無事にリハビリ卒業
Mさんは、脳梗塞発症後4カ月が経過し、無事にリハビリ卒業となりました。「まだ前の感じじゃやないな」とおっしゃっていますが、毎日お店に立ち、ランチも夜の営業もこなしています。握りはもちろん、巻物も、刺身も、全部行っています。退院直後すぐより、リハビリを集中的に進められたこと、自宅での運動を頑張ってくださったこと、ご本人の目標に向かう姿勢がぶれなかったこと、が目標達成には重要だったのではないかと考えます。
まとめ
退院後も、自宅で安心して専門的なリハビリを行える、これが機能回復には重要となります。当クリニックでは、発症すぐの患者様へのリハビリから、復職後のフォローまで、一緒に取り組んでおります。入院中のリハビリから引き続き、生活リハビリまで行っていきます。特に、手(上肢)のリハビリは、様々な動きを行うため」、難しいと言われています。リハビリ専門のスタッフがしっかり評価を行い、個人個人に合わせたリハビリを行っていきます。
当クリニックでは、どこの医療機関からの患者さまでもリハビリを行うことは可能です。医療保険でのリハビリはもちろんですが、介護保険サービスを利用されている場合は、自費のリハビリを行っています。一人で行うのは、大変なことです。目標にむかって、一緒に頑張りましょう!
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