なるべくきれいに傷の縫合を行います!
けやき脳神経リハビリクリニック 院長の林です。開院から6日目を迎え、院内の設備や運営方針も大分整ってまいりました。
本日は顔のケガで縫合処置が必要な患者様が来院してくれました。私も脳神経外科救急に長く携わってきて、頭のケガの方はたくさん診てきましたので、クリニックでもきれいに傷を治せるよう、準備しておりました。
頭皮は血液が豊富なのと、頭蓋骨がピンと張っているため、出血しやすく、また傷が開きやすいです。もし頭にけがをして出血してしまった場合、まず行ってほしいのは「圧迫止血」です。タオルなどで傷を覆いながら、ぐっと手で押さえて1-2分待ってください。血液サラサラのお薬をお飲みの方は、5分ほど圧迫したら安全です。家の中であればアイスノンなどで冷やしていただいても構いませんが、早く圧迫するのが先決です。
圧迫が十分行えれば、大抵の場合の出血はいったん収まります。その上で、なるべく早く病院を受診してください。病院では傷をきれいに洗ったうえで、縫合が必要な場合は縫合処置を行います。
その際、一番大事なのは、「きれいに傷を洗う」ことです。昔は消毒を行っていたと思いますが、まだ感染していない傷に対して消毒を行うのは、創傷治癒の過程を邪魔してしまうのでお勧めできません。とにかくきれいに洗う!砂などがついていたら、お水でよいのでジャブジャブ洗います。傷が大きい場合や、お子さんで耐えられない場合には、痛み止めの注射をしてから洗いますので、ご安心ください。小さな砂が入ってしまっている場合は、滅菌した歯ブラシをやさしく当てて、砂をとります。
傷をきれいにあらったら、縫合に入ります。きれいに傷を治すには、「傷の表面をきれに合わせること」が大切です。一本の線で切れてしまっている場合は簡単ですが、ギザギザになっている場合は、パズルをあわせるように何処と何処がくっついていたのかを考えながら、丁寧に縫合します。
この時、なるべく小さな針・細い糸をつかうと、針の穴と糸による傷跡が残らなくてよいです。当院では6-0ナイロン(針つき)をメインに用いて縫合します。細い糸だと太い糸とくらべて引っ張る力が弱いのも、頭部や顔面にとってはちょうどよいです。強すぎると、やはり糸の跡がのこってしまいます。
手で縫合する以外では、ステープラー という医療用ホッチキスで止めることもあります。当院では頭の中(髪の毛にかくれるところ)の傷に対しては、ステープラーを用いています。ステープラーのよいのは簡単に縫合できることで、10秒~0秒で縫合が終わってしまいます。一方、傷の面はきれいにあわせないと、感染のリスクがあがったり、傷跡がのこってしまいます。ステープラーでうまく縫えなさそうで、手で縫ったほうがきれいに治りそうな場合は、髪の毛の中の傷でも手で縫合を行います。
縫合処置が必要な部分以外で、表皮が剥離している場合もあります。この場合は「デュオアクティブ」という創傷被覆材で覆うのが良いです。そうすると傷から出る体液で少し湿った状態で傷が保たれ(湿潤環境といいます)、それが傷をはやくきれいになおるコツとなります。ただし、感染してくる可能性がある汚い傷や、1-2日経ってしまった乾いた傷にたいしては、かえって感染を助長していまうので被覆材は用いません。
そのようなことを考えながら、外科の先生たちは傷の治療をおこなっています。当院でも「傷がきれいに治る」と皆さんに満足いただけるよう、引き続き精進していきたいと思います!頭でなくても手足の傷にも喜んで対応いたします。