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【MRIでスッキリ!】「しこり」は脂肪腫?悪性を見分ける精密検査の重要性

腕や背中、お尻などに、触るとプニプニと柔らかく、痛みもない「こぶ」や「しこり」。鏡を見るたび、服を着替えるたび、その存在が気になっていませんか?「これは一体何だろう?」「もしかして悪いものだったらどうしよう…」そんな漠然とした不安を抱えながら、「脂肪腫 原因」「脂肪腫 放置」「脂肪腫 何科」といった検索ワードでこのブログにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。その「しこり」、もしかしたら「脂肪腫(しぼうしゅ)」かもしれません。

脂肪腫は、その名の通り脂肪細胞が増殖してできた良性の腫瘍(できもの)です。皮膚の下にできることが多く、基本的には急いで治療が必要なものではありません。

当院は脳神経外科ですが、実は「首のしこりが気になる」「腰のあたりに脂肪腫のようなものがある」といったご相談を、他科や近隣クリニックからの依頼でMRI検査としてお受けすることもあります。脂肪腫は良性の腫瘤として比較的よく見られますが、大きくなったり痛みを伴ったりする場合は、念のため画像検査で性状を確認することが重要です。

この記事では、「そのしこり、脂肪腫かも?」という不安に寄り添いながら、MRIで脂肪腫をどう見分けるのか、そして放置してはいけないケースとは何かについて解説します。
あわせて、「MRI=頭の検査」というイメージをくつがえす、意外だけれどとても重要なMRIの役割についてもご紹介します。

脂肪腫とは?症状・原因・受診すべき科を徹底解説

体にできた「しこり」は、多くの人が抱える不安の種ですよね。まずは、脂肪腫についてよくある疑問に答えていきましょう。

脂肪腫ができる原因は?なぜ私にできたの?

「なぜ、私に脂肪腫ができてしまったんだろう?」そう考える方もいるかもしれません。しかし、脂肪腫ができるはっきりとした原因は、実はまだよく分かっていません。遺伝的な要因や体質が関係していると考えられていますが、不摂生な生活や食生活が直接の原因になるわけではありません。「自分を責める必要はない」ということを知っておいてくださいね。

脂肪腫は痛むの?放置しても大丈夫?

基本的に脂肪腫そのものは痛みを伴わない、とされています。ですが、以下のような場合は痛みが現れることがあります。

  • しこりが大きくなり、周囲の神経を圧迫している
  • 「血管脂肪腫(けっかんしぼうしゅ)」など、内部に血管が豊富なタイプの脂肪腫

脂肪腫(しこり)が 痛い」と感じる場合は、必ず専門医に相談しましょう。

また、「脂肪腫を放置」しても大丈夫かという疑問ですが、脂肪腫は良性腫瘍のため、すぐに悪さをすることはありません。しかし、残念ながら自然に消えたり小さくなったりすることはなく、ほとんどの場合、少しずつ大きくなっていきます。

脂肪腫が大きくなってから手術すると、切開範囲が広がり、傷跡が大きくなる可能性も。ただの脂肪腫だろう、と自己判断で長期間放置する前に、一度はその正体を正確に診断しておくことが大切です。

しこりに気づいたら何科へ?脂肪腫の相談先

脂肪腫 何科に行けばいいの?」と迷ったら、まずは皮膚科形成外科を受診するのが一般的です。そこで医師が診察し、より詳しい検査が必要だと判断された場合に、私たちのようなMRI検査が可能な施設へご紹介いただく、という流れがスムーズです。


危険な「脂肪肉腫」との見分け方!MRIが「最強の診断ツール」と呼ばれる理由

しこりを見つけた時、最も心配なのは「悪性のがんだったらどうしよう」ということではないでしょうか。特に、悪性の「脂肪肉腫(しぼうにくしゅ)」との見分け方は非常に重要です。触診やエコー検査だけでは判断が難しい場合でも、MRI検査がその真価を発揮します。

悪性「脂肪肉腫」の疑いがあるしこりの特徴

以下のポイントはあくまで目安ですが、一つでも当てはまる場合は注意が必要です。

  • 急速に大きくなる
  • しこりが硬く、触っても動かない
  • 痛みを伴う
  • 体の深い部分(筋肉の奥など)に存在する

これらの特徴だけで良性・悪性を正確に判断することは、たとえ医師でも困難なケースがあります。そこで、MRI検査が圧倒的な威力を発揮するのです。

メスを入れずに「しこりの正体」を暴く!MRIの秘密

MRIは、メスを入れずにしこりの「中身」を詳しく調べることができる、いわば「魔法の目」です。特に、脂肪抑制(しぼうよくせい)という特殊な撮影技術が、良性・悪性の見分けに絶大な効果を発揮します。

1. 脂肪抑制なしの撮影:しこりの基本的な形と場所を把握

まず、脂肪抑制をかけない通常のMRI撮影で、しこりがどのように見えるかを確認します。

  • T1強調画像(T1WI): 脂肪が非常に白く明るく写るため、良性の脂肪腫であれば、境界がはっきりした均一な白い塊として映し出されます。これで、しこりの存在と大まかな位置を把握します。
  • T2強調画像(T2WI): 脂肪だけでなく、水成分(嚢胞や炎症など)も白く明るく写ります。この画像でも脂肪腫は白く見えますが、他の病変との区別がつきにくい場合があります。

この段階では、「脂肪らしい白いしこりがあるな」という初期評価を行います。

2. 脂肪抑制ありの撮影:悪性成分を見逃さない「切り札」

次に、診断の精度を飛躍的に高める「脂肪抑制」技術を使った撮影を行います。これは、画像の中から脂肪の信号だけを選択的に消し去り、黒く描出する技術です。

  • 良性の脂肪腫の場合
    • 脂肪腫はほぼ100%が脂肪で構成されているため、脂肪抑制をかけると劇的な変化が起こります。T1強調画像でもT2強調画像でも、あれほど白く見えていたしこりが、きれいに真っ黒に変化します。これは、そのしこりが「純粋な脂肪の塊である」ことを決定づける、非常に重要な所見です。まるで、隠し絵の中から脂肪だけがスッと消え去るようなイメージです。 (ここに脂肪抑制MRI画像:良性脂肪腫が黒く抑制されて見える例の画像を挿入し「脂肪抑制をかけると、白く見えていた脂肪(左)が、黒く抑制されて見えます(右)。」といったキャプションをつけます。)
  • 悪性の脂肪肉腫などの場合
    • 脂肪肉腫には、脂肪成分以外にがん細胞、異常な血管、水分、出血といった多様な成分が混在しています。そのため、脂肪抑制をかけても腫瘍全体が真っ黒にはなりません。脂肪成分は黒くなりますが、それ以外の悪性成分は信号が抑制されずに、白くまだらに残ったり、不均一な濃淡(黒い部分と白い部分の混在)を示したりします。

特に造影剤(ぞうえいざい)を使った後の脂肪抑制T1強調画像では、血流の豊富な悪性部分がより一層白く強調され、良性との違いがより明確になります。このように、MRI脂肪抑制画像は、「消えるか、消えないか」という分かりやすい違いで、皆さんの「悪性だったらどうしよう」という不安に、高い精度で答えをくれる診断における非常に重要な手がかりとなるのです。

安全な手術のための「設計図」!MRIと形成外科の連携

しこりの正確な大きさ、深さ、そして隣接する神経や血管との位置関係。これらを立体的に把握できるMRI画像は、形成外科医が手術を行う際の、非常に精密な「設計図」となります。

例えば、しこりが神経や血管に近接している場合、MRIでその位置関係を事前に把握しておくことで、手術中にこれらの重要な組織を損傷するリスクを大幅に減らすことができます。また、しこりが筋肉の奥深くに存在するケースでも、MRIによって正確な深さと広がりを把握することで、必要最低限の切開で手術を行うことが可能になり、患者さんの負担軽減にもつながります。


脂肪腫と間違えやすい?MRIで見分ける類似のしこり

脂肪腫は、体の中にできる脂肪の塊で良性の腫瘍ですが、MRI検査では、これとよく似た他の「しこり」を見分けることもできます。特に、悪性の「脂肪肉腫」との鑑別は非常に重要です。

MRIで見える脂肪腫の画像特徴

MRIでは、脂肪腫は次のように見えます。

  • 形がはっきりしている: 周囲の組織との境目がくっきりしていて、丸くてなめらかな形をしています。
  • 白く見える(T1(T2)強調画像): 脂肪がたくさんあるので、T1、T2という種類の画像では白く光って見えます。
  • 脂肪だけを消す画像(脂肪抑制画像)で真っ黒になる: 脂肪だけを消す特別な画像で見ると、脂肪腫の部分だけが真っ黒になります。これは、脂肪腫が純粋な脂肪でできている証拠なので、診断でとても重要です。
  • 造影剤を入れても光らない: 病変に造影剤という薬を入れても、脂肪腫自体は光りません。

背部にできた脂肪腫

脂肪種MRI T2強調画像
MRI T2強調画像
形のはっきりした、なめらかな白い塊が写る
脂肪種MRI T2脂肪抑制画像
MRI T2強調脂肪抑制画像
脂肪が抑制され、脂肪腫が黒く見える
脂肪種MRI T1強調画像
MRI T1強調画像
形のはっきりした、なめらかな白い塊が写る
脂肪種MRI T1脂肪抑制画像
MRI T1強調脂肪抑制画像
脂肪が抑制され、脂肪腫が黒く見える

脂肪腫と鑑別すべき、他の「しこり」の種類

脂肪腫と似ていて、MRIで見分けるのが重要な病気もいくつかあります。

脂肪肉腫(脂肪のがん)

  • 高分化型脂肪肉腫: 脂肪腫と最も見分けが難しいタイプです。体の深いところにできる場合や、脂肪以外の塊が混じっているように見える場合、厚い壁やしこりのようなものが見える場合は注意が必要です。また、造影剤脂肪以外の部分が光って見えることがあります。
  • 粘液型脂肪肉腫: ドロドロした液体成分が多く、MRIでは非常に白く光り、脂肪を消す画像でも完全に真っ黒にはなりません。

血管脂肪腫(けっかんしぼうしゅ)

  • 脂肪腫に血管が混じっている良性の腫瘍で、脂肪以外の部分が造影剤で光ることがあります。

褐色脂肪腫(かっしょくしぼうしゅ)

  • 褐色脂肪という特殊な脂肪でできた良性腫瘍です。通常の脂肪腫とは見え方が少し異なり、造影剤で光ることがあります。

ガングリオン(ゼリー状のしこり)

  • 関節の近くにできるゼリー状の液体が入ったしこり。触ると硬いこともありますが、MRIでは液体として映り、脂肪の塊とは全く違う見え方をします。

手の甲にできたガングリオン例

ガングリオンMRI T2
T2強調画像:ガングリオン
白く見える(液体成分)
T1強調画像:ガングリオン
周囲の脂肪より暗く見える
脂肪抑制T1強調画像:ガングリオン
脂肪抑制しても消えない

粉瘤(ふんりゅう、アテローム)

  • 皮膚のすぐ下にできる、角質や皮脂がたまった良性のしこりです。見た目は脂肪腫に似ていますが、MRIで見ると脂肪とは違う物質として見えます。

滑液包炎(かつえきほうえん):

  • 関節の周りにある「滑液包」という袋に炎症が起きて液体がたまる病気で、MRIでは液体がたまっているように見えます。

しこりの不安は当院のMRIで「見える化」!今すぐご相談ください

インターネットで検索すると、様々な情報が溢れていて、かえって不安が大きくなってしまうこともあるでしょう。

体に見つけた「しこり」。その正体を知るために最も大切なのは、専門家による正確な診断です。まずは、かかりつけの先生や、お近くの皮膚科や形成外科へご相談ください。そして、より詳しい検査が必要と判断された際には、このMRI検査が非常に有効な選択肢になることを、ぜひ覚えておいていただければと思います。

当院では、脳神経外科の専門知識と最先端のMRI装置を活かし、他科の先生方と協力して、皆さまの体の「?」に明確な答えを出すお手伝いをしています。脳神経外科の領域にとどまらず、他科の先生方とも密に連携を取りながら、MRI装置を最大限に活用して、地域の皆さまの健康に貢献してまいります。

「このしこり、もしかして脂肪腫かな?」と感じたら、まずは形成外科の診察を

「しこりがあるけど、脂肪腫かどうか心配…」
「MRIで詳しく調べたほうがいいのかな…?」

そんなお悩みをお持ちの方は、まずは形成外科・皮膚科での診察をおすすめします。脂肪腫かどうかの見極めや、治療の必要性などについて、専門的な視点から評価してもらうことが大切です。

当院では、連携する形成外科クリニックはもちろんのこと、その他の医療機関からのMRI検査依頼にも迅速に対応しており、スムーズな診断・治療の流れをサポートしています。地域の皆さまの健康に貢献するため、各医療機関との連携を強化し、質の高い画像診断を提供してまいります。

しこりが脂肪腫かどうか、MRIによる詳しい画像診断が必要と判断された場合には、連携体制のもと、当院での検査をスピーディーにご案内可能です。

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放置してよいしこりか、そうでないのか。迷ったときには、まず専門医の診察を受けることが安心への第一歩です。