【当院MRIで診断】目の症状、実は脳や目の奥が原因かも?眼科連携で視神経炎・眼窩内腫瘍を早期発見へ

目次
- 目の症状とMRI検査|脳や目の奥の病気が原因かもしれません
- 【目の症状の主な原因3つ】眼球・眼窩・脳のどこに異常がある?
- 【脳の病気が原因で起こる目の症状】MRIで原因を特定
- 【眼窩内疾患による目の症状】眼窩内腫瘍や炎症をMRIで発見
- 【なぜ目の症状で「頭のMRI」を撮るの?】脳神経外科医がわかりやすく解説
- 【MRIで眼窩内病変を明瞭に描出】脂肪抑制法が診断の鍵
- 【症例紹介】MRIで視神経炎・眼窩内腫瘍を診断した実例
- 【診断後の流れ】MRI検査後の治療方針と眼窩連携
- 【よくある質問:Q&A】
- あなたの目の症状、まずはかかりつけ医、または当院にご相談を
目の症状とMRI検査|脳や目の奥の病気が原因かもしれません
「最近、目がかすむ」「視力が落ちた気がする」——そんな目の症状、多くの方はまず眼科を受診されるでしょう。しかしその症状、実は脳や目の奥(眼窩)の病気が原因かもしれません。
当院は脳神経外科のクリニックですが、高性能のMRIを院内に完備しており、視神経炎や眼窩内腫瘍など「目の症状の背景にある脳・眼窩の病気」を正確かつ迅速に診断できます。
また、地域の眼科クリニックと密に連携し、「眼科→脳神経外科」「脳神経外科→眼科」と専門をまたいだ診療体制を整えています。MRIによる画像診断は、こうした専門医の連携を強固にし、早期発見・早期治療につながる重要な武器なのです。
【目の症状の主な原因3つ】眼球・眼窩・脳のどこに異常がある?
「目の不調」と一口にいっても、原因はさまざまです。大きく分けると次の3つに分類されます。
① 眼球そのものの異常(白内障・緑内障など)
② 眼窩内(目の奥)の病変
③ 脳や視神経(目から脳へ情報を伝える神経)の異常
このうち②眼窩内や③脳の異常は、通常の眼科検査では見つかりにくく、MRI検査が有効です。
【脳の病気が原因で起こる目の症状】MRIで原因を特定
視覚は「目だけの機能」ではなく、脳が情報を処理することで成り立ちます。そのため、脳の異常が「目の症状」として現れるケースは少なくありません。
視力低下・視野の欠け
- 脳腫瘍(下垂体腺腫など)
- 視神経交叉部(左右の視神経が交わる場所で、視覚情報が脳へ送られる手前の重要な中継点)に腫瘍ができると、視野の欠損や視力低下を引き起こすことがあります。
- 脳梗塞・脳出血
- 後頭葉など視覚野の障害により、視野の一部が見えなくなる「半盲」などが起こります。
- 多発性硬化症(MS)
- 視神経に炎症(視神経炎)を起こすことで、急激な視力低下や目の奥の痛みが生じることがあります。
複視(物が二重に見える)
- 脳動脈瘤・脳腫瘍
- 動眼神経(目を動かしたり、まぶたを開けたりする働きに関わる神経)などを圧迫し、眼球の動きが制限されて起こることがあります。
まぶたの下がり・痙攣
- 脳腫瘍や脳梗塞で顔面の運動神経が障害されると、まぶたの下垂や動きの異常が出ることがあります。
眼振(眼球が揺れる)
- 小脳の病変で、意図せず眼球が左右に揺れることがあります。
【眼窩内疾患による目の症状】眼窩内腫瘍や炎症をMRIで発見
眼窩とは、眼球を支える頭蓋骨のくぼみ部分のこと。ここに腫瘍や炎症が起こると、以下のような症状が出現します。
眼球突出(片目が飛び出す)
- 眼窩内腫瘍
- 腫瘍が眼球を前方に押し出すことで突出します。良性から悪性まで様々です。
- 甲状腺眼症
- バセドウ病などで眼窩内の脂肪・筋肉が腫れ、眼球が前に出てきます。
視力低下・視野異常
- 腫瘍や炎症による視神経の圧迫・障害が原因となることがあります。
目の奥の痛み・複視・眼球運動障害
- 眼球を動かす筋肉や神経が障害されると、物が二重に見えたり、動かしにくくなったりすることがあります。
その他の症状
- 眼球運動制限、まぶたの腫れ・下垂なども見られることがあります。
【なぜ目の症状で「頭のMRI」を撮るの?】わかりやすく解説
多くの方が「目の症状なら眼科で、頭の症状なら脳神経外科でしょ?」と考えるかもしれません。しかし、目の症状の裏に脳や眼窩内の深刻な病気が隠れているケースがあるため、頭のMRI検査は非常に重要な役割を果たします。
視神経は、眼球の奥から脳へと直接つながる、いわば「情報ハイウェイ」のようなものです。そのため、視神経に異常がある場合、その原因が脳の疾患である可能性も考慮しなければなりません。
頭のMRIでは、脳、視神経、そして眼窩内の詳細な画像を撮影でき、視神経炎や脳の病変、眼窩内腫瘍の位置や性質などを精密に捉えることができます。通常の視力検査・眼底検査では見逃されることがありますが、MRIなら直接かつ精密に観察可能です。
【MRIで眼窩内病変を明瞭に描出】脂肪抑制法が診断の鍵
眼窩には脂肪組織が豊富に存在します。通常のMRIではこの脂肪が白く明るく写るため、小さな病変を見落とすことがあります。そこで重要となるのが「脂肪抑制法」です。
この撮影技術を用いることで、脂肪の信号を抑え、炎症や腫瘍といった病変をより鮮明に描き出すことが可能になります。当院のMRIでは、この脂肪抑制法を駆使した専門的な撮影に対応しており、より精度の高い診断を可能にしています。さらに、造影剤と併用することで、より確実に診断できます。
【症例紹介】MRIで視神経炎・眼窩内腫瘍を診断した実例
実際にMRI検査によって、目の症状の本当の原因が明らかになった症例をご紹介します。
症例1:急な「視野欠損」の原因は『視神経炎』
- 患者さん:81歳 女性
- 主訴:「夕方から急に、左目の内側が見えにくくなった」という視野障害を訴え来院されました。
- 検査と診断:眼科検査では異常が見つかりませんでしたが、MRI検査を実施。脂肪抑制法を含む撮影で、左視神経に炎症による腫れを示唆する所見を確認しました。これにより「左視神経炎」と診断しました。

正常視神経に比して視神経炎では高信号(白く)に描出される。

視神経炎では高信号(白く)、太く写っていることが明瞭に描出される。

視神経炎では高信号(白く)、太く写っていることが明瞭に描出される。
- その後の対応:視神経炎の専門的な治療が必要であるため、診断結果とMRI画像を添えて、眼科クリニックへ速やかに紹介となりました。突然の「見えづらさ」や「視野の欠け」は、視神経の炎症が原因かもしれません。MRI検査は、このような視神経の状態を直接観察できるため、的確な診断と迅速な治療開始に不可欠です。
症例2:眼科から紹介された「目の突出」の原因は『眼窩内腫瘍』でした
- 患者さん:66歳 女性
- 主訴:ご家族から「右目が飛び出してきているようだ」と指摘され、ご自身でも気になり来院されました。
- 経緯:事前に眼科を受診し、甲状腺機能の検査も受けられましたが、特に異常は見つからず、眼科より紹介され検査を行いました。
- 検査と診断:診察上も明らかな右眼球の突出を認め、目の奥、すなわち眼窩内の病変を強く疑いました。そこで、頭部MRI検査を実施。特に、眼窩内の脂肪組織の影響を抑えて病変を鮮明に映し出す「脂肪抑制法」を用いた撮影を行いました。その結果、右目の裏側(外直筋の上方)に、明瞭に描出される眼窩内腫瘍を確認することができました。

眼球後面に腫瘍(➡)を認める

眼球後面に腫瘍(➡)を認める

眼窩内の脂肪信号が抑えられ、腫瘍がより明瞭に描出される。

他断面においても腫瘍がより明瞭に描出される。
- その後の対応:MRIで診断がついたため、診断結果を患者さんに詳しくご説明し、今後の治療方針についてご相談の上、専門の医療機関と連携して対応を進めました。「眼球突出」といった症状で、眼科的な検査で明らかな異常が見つからない場合でも、MRI、特に眼窩に特化した撮影を行うことで、原因となる腫瘍などが発見できることがあります。
【診断後の流れ】MRI検査後の治療方針と眼窩連携
目の症状で当院を受診された後、MRI検査で診断がついた場合の一般的な流れをご説明します。
- 診断結果のご説明: MRIの画像を見ながら、脳神経外科専門医が分かりやすく丁寧にご説明します。
- 治療方針の検討:
- 脳神経外科での治療が必要な場合: 当院で最適な治療計画をご提案します。必要に応じて、より高度な医療機関への連携も迅速に行います。
- 眼科での治療が必要な場合: 信頼できる眼科へスムーズにご紹介します。診断情報やMRI画像を共有し、円滑な連携を図ります。
- 専門医間の連携: 当院と眼科で患者さんの情報を密に共有し、最適な専門医による継続的なケアを受けられるようサポートします。
【よくある質問:Q&A】
目の症状があるのに脳神経外科に行くべきですか?
はい、その症状は脳からのサインかもしれません。特に、急な視力低下や視野障害、物が二重に見える、まぶたが下がるなどの症状がある場合は、当院のようなMRIを保有する脳神経外科での精密検査も選択肢の一つとしてご検討ください。地域の眼科クリニックと連携し、最適な診断・治療ルートをご提案いたします。
MRI検査は痛いですか?時間や費用はどれくらいかかりますか?
MRI検査はX線を使用しないため、被曝の心配がなく、痛みもありません。検査時間は約15~20分程度です。費用は保険診療の範囲内で可能ですが、症状や検査内容によって異なりますので、受付にてお気軽にご相談ください。
MRI検査を受けるにあたり、何か注意することはありますか?
強力な磁力を使用するため、ペースメーカーなど体内に金属がある方、タトゥーやアートメイクをされている方は、事前に必ずお申し出ください。安全確認を行います。
あなたの目の症状、まずはかかりつけ医、または当院にご相談を
目の症状は、単なる疲れだけでなく、視神経炎や眼窩内腫瘍、さらには脳の病気が隠れている可能性があります。特に、以下のような症状がある場合は、自己判断せず速やかに専門医を受診することが重要です。
- 視野の欠け
- 急な視力低下
- 目の奥の痛み
- 片目の突出
- 物が二重に見える
「目の症状なのに頭のMRI?」と疑問に思うかもしれませんが、それは病気の原因を正確に特定し、適切な治療へとつなげるための大切なステップなのです。
当院は、MRIを用いた精密な画像診断と、地域の眼科クリニックとの強固な連携により、患者さんの目の症状の根本原因を究明し、最適な治療へと導くことを全力でサポートいたします。目の症状で気になることがあれば、かかりつけの眼科医、または当院まで、お気軽にご相談ください。