脳梗塞退院後の復職支援も、外来リハビリの役割です

脳卒中(脳梗塞や脳出血)や脳腫瘍などを患って入院された方は、入院中に様々なリハビリを受けてこられたと思います。多くの患者さんは「急性期病院」に入院し、点滴を含む投薬や、場合によっては手術治療を受けられ、合わせて急性期のリハビリをされたと思います。状態が落ち着きましたら、そのまま自宅退院できる場合もありますが、「回復期リハビリテーション病院」へ転院されることもあります。そこでしっかりと自宅に帰るためのリハビリを行った上で、自宅退院されていかれます。
ではその後自宅に帰ったあとはどうなるのでしょうか?全く元と同じような生活とはいかない中で、どのようなことを気をつけて、どのように暮らしていけばよいのでしょうか?そのあたりをご支援するのが「生活期リハビリテーション」といい、外来リハビリテーションや、介護リハビリテーションの役割となっています。
その中でも、これまでお仕事をされていた方がどのように復職していくか、復職できるのか、というのは、ご本人にとっても、会社の方々にとっても非常に重要なことだと思います。
ここでは復職支援のためのリハビリについてご説明いたします。
社会生活復帰・復学・復職に向けたリハビリとは
お仕事をされている年齢の方が脳卒中を発症してしまった場合、まだお若いということもあり自宅に復帰できることが非常に多いです。20年ほど前の日本での報告では、発症前に自立していた就労年齢 890例の脳卒中患者(くも膜下出血を除く)においては、発症3ヵ月後の時点で既に約75%が自立した家庭生活 を送っていました。
参考:平成16− 17年度厚生労働科学研究費補助金:「わが国におけるstroke unitの有効性に関する多施設共同前向き研究」 (主任研究者:国立循環器病センター 峰松一夫)
一方で復職状況については決して良好とはいえず、脳卒中発症後の最終的な復職率は、50~60%といわれています。
参考:(事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン 令和6年3月版 厚生労働省)
ではどうすれば就労されていた方が脳卒中後に復職できるのでしょうか?こちらのガイドラインでは、
①復職的な方向性を持った リハビリの提供
②雇用主の柔軟性
③社会保障
④家族や介護者からのサポート
が重要な要因とあげられています。
前述の研究結果にて、早期に復職できた方は ①発症時よりADL能力が高い、②易疲労性がない、 という要素に加え、③医療機関の復職支援があった、という項目で有意差を認めたという結果がでているように、退院後のリハビリおよび復職支援が重要となります。
入院中の復職支援ではわからないことがあります
もちろん、入院中にも復職にむけた相談や対話はなされていることも多いと思います。しかしながら多くの場合、急性期病院では「治療」が最優先であったり、回復期病院では「身体的回復」が主要な目標となっておりますので、それ以上に踏み込んだ復職への計画はなされにくい状況にあります。
身体機能も改善途中であり、どの程度の支援が必要か検討することは時期尚早と判断することもあります。復職の計画について書面にて具体的に提示された患者は、病院側からは10%、職場側からは8%であった、という報告もあります。そのため、復職や復学に本格的に取り組んでいくのは、退院後からということになります。また、退院後に社会生活が始まってからはじめて、入院中は分からなかった問題点が見えてくる場合も多くあります。
退院後の外来リハビリでの復職支援
はじめに、当院の作業療法士による「復職支援」は医療保険の「保険診療」で行うことが可能です。作業療法士として復職支援の経験が豊富なスタッフが対応しますが、特別な費用が必要なわけではないのでご安心ください。(当院のリハビリテーションについてはこちら)
さて、復職や復学を目的としたリハビリテーションと聞くと、特別な訓練をしているという印象を持つかもしれません。しかし、まずは働く・学ぶために必要な準備からリハビリテーションは始まります。
働く・学ぶために必要なこととは…
- 日常の生活を一人でできること
- 働く、学ぶための体力
- 安全に職場、学校まで行く移動能力
- 自分で体調管理ができること
- スケジュールに合わせて行動すること
などが挙げられます。
また、復学や就労を目標とする場合、身体機能や高次脳機能障害に対する直接的訓練に加えて、学校や職場に類似した環境を作り、その中で高次脳機能障害に由来する問題を認識し、対処方法を獲得することも必要となります。目的地までの移動やスケジュール管理の自立などの「拡大日常生活活動」が獲得できれば、一定期間リハビリを行った後、会社上司や産業医と連携して復職を目指したり、学校側との調整を行っていきます。復職・復学後も、安定して就労・通学が継続できるようになるまで、定期的に適応状態を確認していきます。
外来リハビリではどんなことを行うの?
体力やメンタルを整える
復職・復学のためには、ある程度継続した時間の業務・学習に耐えられるだけの体力が必要となります。就業・通学していた時と比較して、入院中や休職中は体力が低下し、人と関わる機会が減少します。また、脳卒中は易疲労性(疲れやすさ)やメンタルの不調が発生しやすいことが知られており、外来リハビリはこれらの予防や改善に有効です。復職・復学を意識した生活に取り組むことをまずは行っていきます。具体的には、外出の機会を作る、身だしなみを整える、公共交通機関の使用を行う、集中作業を行う、など個々の状態に応じて相談しながらプログラムを組んでいきます。

仕事・学習に必要なトレーニングも行います
仕事内容によって、必要なスキルは違います。また、その方の症状によっても、リハビリの方法は異なります。もとの仕事がそのままできる場合もありますし、修正が必要な場合もあります。まずは、一緒に目標を設定し、適切な評価を行い、必要な練習を相談しながら行っていきます。自宅でも取り組むことが出来るように、課題の提供を行う場合もあります。
職場・学校との調整を行います
また、病気や治療が引き起こす症状は、働く際や学ぶ際にそれまでになかった問題を引き起こすことがあります。完全に対応することは難しくても、環境を整え、対処方法を知っておくと仕事がスムーズにいきます。また、以前と比べ治療による体調の変化があることを職場や学校に説明しておくと、理解が得られやすく、職場からの配慮に結びつきます。自分からある程度説明することが重要ですが、どのように説明したらよいかなど一緒に考えて取り組んでいきます。
復職・復学後は
「思った以上に体力が落ちて驚いた」「今までできていた仕事が思うようにできなくなっていた」など、日常の生活では気が付かなかったけど、仕事を始めたり学校に戻ると改めて気が付くことがあります。そのため、復職後も安定するまでフォローを行っていきます。脳卒中再発予防にも、ストレスの軽減、負荷量の調整(過疲労を防ぐ)、会社や学校への交渉の方法などを一緒に考えていきます。
いつから行うの?
病院(急性期病院もしくは回復期病院)退院後、なるべく早く始めていくことをお勧めします。生活リズムをつける、体力をつけるためにも、入院中のリハビリに継続して行っていくことが大切です。
まとめ
けやき脳神経リハビリクリニックでは、入院治療が終わり自宅へ退院した患者様に、外来での復職・復学のリハビリを行っています。障害手帳などは特に必要ありません。外来リハビリで行えます。
外来で通うことは、屋外歩行や公共交通機関の利用も練習にもなり、体力を戻すためにも非常に有効です、また、個々の症状や障害、復職や復学先の対応に応じた、リハビリプログラムを組んでいくため、個人個人に合わせた対応が可能です。復職・復学後もご希望がある場合には継続してフォローも行っていきます。
会社に戻った後が大変だった、という話もよく聞きます。準備をすることで、安心して無理なく仕事に戻ることができる場合が多いため、一緒に準備をしていきませんか?(リハビリテーション科についてはこちら)
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