最近、物をよく落とすのはなぜ?片手だけ・しびれを伴う原因と受診の目安

「最近、スマートフォンやコップを落とすことが増えた」
「以前より箸やボタンが扱いにくくなった」
そんな変化はありませんか?
物を落とすことは誰にでもあります。ただ、以前は問題なくできていた動作が繰り返し難しくなっている場合は、単なる不注意ではなく、手の筋力や感覚、神経の働きなどが関係している可能性もあります。
物をよく落とす原因には、疲れや不注意、手の関節・腱の問題、手首や肘の神経障害、首の脊髄の病気、脳の病気などがあります。
特に、片手だけ使いにくい、物を落とす回数が明らかに増えた、細かな作業が以前より難しくなったといった変化が続く場合は、一度診察を受けることをおすすめします。
ここで大切なのは、物をしっかり握れないのか、持っている途中で落とすのか、それとも細かな操作が難しいのかという違いです。
今回は、日常生活で気づく手の変化から、考えられる原因と受診の目安をお話しします。
※突然、片手や片腕に明らかに力が入らなくなった、思うように動かなくなった場合は、脳卒中の可能性があります。顔や言葉に異常がなくても119番へ連絡してください。短時間で改善した場合も同様です。
目次
物をよく落とすとき、どんな動きが難しくなっている?
「最近、よく物を落とすんです」
そんなとき、少し振り返ってみてほしいのが、どんな場面で、どのように落としてしまうのかです。
同じ「物を落とす」という出来事でも、実際には違う動作が難しくなっていることがあります。
① 物をしっかり握れない
コップをつかんでも、しっかり保持できない。
タオルを絞るときに、以前ほど力が入らない。
重い物を持とうとすると、手に十分な力が入らない。
こうした場合は、筋力の低下や、痛みによって力を入れにくくなっている可能性があります。
② 持っている途中で落としてしまう
物をつかむことはできるのに、持っている途中で滑り落ちてしまう。
しっかり持っているつもりでも、いつの間にか指の力が緩んでいるように感じる。
こうした変化では、握る力だけでなく、指先の感覚や力加減の調整にも目を向けます。
③ 箸やボタンなど、細かな操作が難しい
箸で小さな物をつまみにくい。
シャツのボタンを留めるのに時間がかかる。
小銭を財布から取り出しにくくなった。
このような場合は、単純な握力とは別に、手指の細かな動きを調整する働きに問題がないかを確認します。

物を落とす原因を考える3つのポイント
落とし方に加えて、確認したいことが3つあります。
① いつから始まった?
昨日まで普通に使えていた手が、突然動かしにくくなったのか。
それとも、数週間から数か月かけて、少しずつ変化してきたのか。
症状の始まり方は、受診の緊急性や原因を考えるうえで重要です。
徐々に進んでいる場合も、神経や脊髄の病気が隠れていることがあるため、長く放置しないようにしましょう。
② 片手だけ?両手とも?
「右手で持った物だけ落とす」
「左手の指先がうまく動かない」
「両手とも細かい作業が難しくなった」
こうした左右の違いも確認します。
片手だけの症状は、脳から腕・手の末梢神経まで、どこに問題があるのかを考える手がかりの一つです。
ただし、片手だけなら脳の病気、両手なら首の病気という単純な区別はできません。
いつから始まったのか、どの動きが難しいのか、しびれなどを伴うかによって考え方は変わります。
③ ほかにも症状がある?
例えば、
- 指先のしびれや感覚の鈍さ
- 手首・肘・首の痛み
- 手の関節の腫れやこわばり
- 箸やボタンの使いにくさ
- 字の書きにくさ
- 歩きにくさや階段での不安定さ
といった変化です。
また、手指の関節や腱に問題があっても、物を握りにくくなることがあります。
例えば、指の曲げ伸ばしで引っかかりや痛みが生じるばね指や、親指の付け根に痛みが出る母指CM関節症などです。
物を落とす原因は、必ずしも神経の病気だけではありません。
箸やボタンも使いにくい場合は首の病気も
「握る力はそれほど落ちていない気がするのに、以前より手先が不器用になった」
そんな変化がある場合は、首の中を通る脊髄の病気が関係していることもあります。
代表的なものに、頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)があります。
頚椎は首の骨のことで、その中を脳から手足へ指令を伝える脊髄が通っています。
加齢などに伴って骨や椎間板が変化し、脊髄が圧迫されると、手指の細かな動きや歩行に影響が出ることがあります。
こんな変化がありませんか?
- 箸で食べ物をつかみにくい
- ボタンを留めにくい
- 小銭など小さな物を扱いにくい
- 以前より字が書きにくい
- 手がしびれる
- 歩くと脚がもつれる
- 階段で手すりを使うことが増えた
すべての症状が一度に現れるわけではなく、首の病気でも首の痛みが目立たない場合があります。
手先の不器用さが続いている、あるいは少しずつ進んでいる場合は、早めに診察を受けてください。
特に、歩き方にも変化が出ている場合は、脊髄の働きに問題がないか確認することが重要です。
指のしびれがある場合は手首や肘の神経も確認
物を落とすことに加えて指先のしびれや感覚の鈍さがある場合は、手首や肘を通る神経が関係していることがあります。
親指・人差し指・中指側がしびれる
手根管症候群などが考えられます。
手根管症候群は、手首にあるトンネル状の部分で正中神経が圧迫される病気です。
親指から薬指の親指側にしびれが出やすく、進行すると親指の付け根の筋肉が弱くなり、細かな物をつまみにくくなることがあります。
小指・薬指側がしびれる
肘部管症候群などが考えられます。
肘の内側を通る尺骨神経が障害される病気で、小指と薬指の一部にしびれが出ることがあります。
進行すると、指を開閉する動きや細かな操作にも影響が出ます。
ただし、しびれる指の場所だけで原因を決めることはできません。首から出る神経の障害などが関係する場合もあります。
朝起きたときにしびれが強い、毎朝同じように手がしびれるといった場合については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▶ 寝起きに手がしびれる原因は?朝だけ・毎朝続く手のしびれを解説
物をよく落とすときは何科を受診する?
「手の症状だから整形外科?」
「脳の病気かもしれないから脳神経外科?」
と迷う方もいると思います。
受診先を考えるときは、症状が突然始まったのか、徐々に進んでいるのかが特に重要です。
突然、片手や片腕に力が入らなくなった
119番へ連絡してください。
脳梗塞や脳出血など、脳卒中の可能性があります。
顔のゆがみや言葉の異常がなくても、突然の明らかな脱力は救急対応が必要です。
一度症状が改善した場合にも、一過性脳虚血発作(TIA)などの可能性があるため、自己判断で様子を見ないでください。
急な片腕のしびれや脱力については、当院の「片方の腕が突然しびれるのは脳梗塞?」の記事でも詳しく解説しています。
徐々に手先が不器用になってきた
箸やボタンが扱いにくい、物を落とすことが増えた、歩き方にも変化があるといった場合は、頚椎や脊髄の病気などを考えます。
脳神経外科・脳神経内科・脊椎を診療する整形外科などが受診先になります。
症状が進行している場合は、早めに評価を受けましょう。
指のしびれや手首・肘の痛みがある
手根管症候群や肘部管症候群、手の関節・腱の病気などが考えられます。
整形外科や手の外科などで相談できます。
原因がはっきりしない場合
「痛みもないし、しびれもない。でも最近、右手だけ物を落とすことが増えた」
こうした場合も、以前にはなかった変化が繰り返されるなら、一度診察を受けてみてください。

MRIを撮れば原因は分かる?
「最近、物をよく落とすのでMRIを撮った方がいいですか?」
と考える方もいるかもしれません。
MRIは脳や頚椎、脊髄などの病気を調べる際に役立ちますが、物を落とすという症状だけで、全員にMRIが必要になるわけではありません。
例えば、
脳の病気が疑われる場合は、状況に応じて頭部CTやMRIなどが検討されます。
頚椎・脊髄の病気が疑われる場合は、頚椎MRIで脊髄や神経の圧迫を調べることがあります。
一方、手首や肘の末梢神経障害が疑われる場合には、神経伝導検査や筋電図などが役立つこともあります。
MRIで何らかの異常が見つかっても、それが現在の症状の原因とは限りません。
まず診察で、どのような動きが難しくなっているかを確認し、必要な検査を選んでいきます。
▶ 当院のMRI検査について
よくある質問
最近スマートフォンをよく落とします。病気でしょうか?
スマートフォンを落とすことが増えただけで、病気とは判断できません。
疲れや不注意、持ち方などが関係する場合もあります。
ただし、以前にはなかった手の使いにくさが繰り返されたり、徐々に悪化したりする場合は、診察を受けることをおすすめします。
しびれがなくても神経の病気のことはありますか?
あります。
神経の病気では、しびれよりも筋力低下や手先の不器用さが目立つ場合があります。
また、握力が保たれていても、指先の細かな動きに問題が生じることがあります。
物を落とす回数が増えたら、どのくらいで受診した方がいいですか?
何回落としたら受診、という明確な基準はありません。
以前と比べて明らかに増えている、片手だけ使いにくい、細かな動作が難しくなったといった変化が続く場合は、早めに相談してください。
突然の明らかな脱力がある場合は、通常の外来を待たず救急対応が必要です。
物を落とすときは、自分で握力を鍛えた方がいいですか?
原因が分からない段階で、無理に握力トレーニングを始めることはおすすめしません。
神経や関節、腱などの状態によって適切な対応が異なるため、まずは症状の原因を確認してください。
「最近、物をよく落とすようになった」
その変化だけで、病気があるとは限りません。
ただ、以前は問題なくできていた動作が繰り返し難しくなっているなら、一度原因を確認してみてください。
診察の際には、「いつから」「どちらの手で」「どんなときに物を落とすのか」を教えてください。
うまく説明できなくても構いません。普段の生活で気になっていることを、そのまま伝えていただければと思います。
医師プロフィール
林 祥史 院長
私立灘高校卒/東京大学医学部医学科卒
けやき脳神経リハビリクリニック 院長
資格・所属学会
【資格】 日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医、日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医
【所属学会】 日本脳神経外科学会、日本脳血管内治療学会、日本脳卒中学会、日本リハビリテーション医学会、日本頭痛学会、日本めまい平衡医学会、American Academy of Family Physicians、Cambodian Medical Association
クリニック情報
けやき脳神経リハビリクリニック
院長:林 祥史(・日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医・日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医)
所在地:東京都目黒区下目黒2-14-13下目黒HAPPYビル1~3階(受付2階)
診療科目:脳神経外科・リハビリテーション科・内科
検査設備:MRI、レントゲン、超音波など
公式サイト:https://keyaki-nrc.com/