20歳から10kg以上太ったら?健診で聞かれる理由と、今から見直したいこと

健康診断の問診票にある、「20歳の時の体重から10kg以上増加している」という質問。
「そういえば、10kg以上増えている……」
「でもBMIは正常。大丈夫?」
「10kg増えたなら、10kg痩せないといけないの?」
気になった方もいるのではないでしょうか。
まず知っておきたいのは、
20歳の頃より10kg以上増えているからといって、それだけで病気と決まるわけではありません。
また、
「増えた10kgを、そのまま10kg減らしましょう」という意味でもありません。
健診で昔の体重を聞くのは、今の体重だけでは分からない「これまでの変化」を見るためです。
確認したいのは、
- いつ、どのように体重が増えたのか
- 今のBMIやお腹まわりはどうか
- 血圧・血糖・脂質などの健診結果に変化はないか
ということ。
この記事では、「なぜ20歳の体重を聞かれるの?」という疑問から、自分に減量が必要なのかを考えるために何を見ればよいのかまで、分かりやすく解説します。
目次
なぜ健診で「20歳から10kg増えたか」を聞くの?
理由はシンプルです。
今の体重だけでは、そこまでどのように変化してきたのか分からないからです。
例えば、現在70kgの人が2人いたとします。一人は、20歳の頃からずっと70kg前後。もう一人は、20歳の頃は60kgで、その後少しずつ70kgまで増えた。
今の体重は同じでも、これまでの経過は違います。
健診では、こうした体重の変化も、現在の健康状態を考える材料の一つとして見ています。
「10kg」が危険と安全の境目ではありません
ここは誤解しやすいところです。
健診で「10kg」という数字が使われているからといって、9kgなら大丈夫で、10kgになった瞬間に危険になるという意味ではありません。
「10kg」は、健診で体重の変化を確認するための一つの目安です。20歳からの体重変化をきっかけに、「今の体格や健診結果も、一緒に見てみよう」と考えると分かりやすいでしょう。
今のBMIが正常なら、10kg増えていても大丈夫?
「健診ではBMI25未満。肥満ではないと言われています」という方もいるでしょう。
そもそもBMIって何?
BMIは、身長に対して体重がどのくらいあるかを見る数字です。健康診断の結果にもよく載っています。
日本では一般的に、BMI25以上を「肥満」と判定します。
例えば、身長170cmの場合。20歳の頃が60kgなら、BMIは約20.8。現在70kgなら、BMIは約24.2です。10kg増えていますが、現在もBMI25未満です。
では、「肥満ではないから、昔より10kg増えていても気にしなくていい」のでしょうか。
そこまで単純には考えられません。
日本人を対象にした研究でも、現在はBMI25未満であっても、20歳から大きく体重が増えた人では、その後の糖尿病発症との関連が報告されています。
もちろん、「10kg増えたら糖尿病になる」という意味ではありません。
私たちがこの結果から知っておきたいのは、今のBMIだけでなく、これまでの体重変化も健康を見る手がかりになるということです。
「BMI25未満だから大丈夫」と現在の数字だけを見るのでもなく、
「10kg増えた。まずい」と必要以上に不安になるのでもなく、
今の自分の状態を一度見てみる。まずは、そこからで十分です。
じゃあ、自分は何を見ればいい?
20歳の頃より体重が増えていたら、いきなり食事を減らす前に、まず3つ確認してみてください。
① いつから、どのように増えた?
② 今のBMIやお腹まわりは?
③ 健診の数字は、以前と比べてどう?

① いつから、どのように増えた?
同じ「10kg増えた」でも、20年かけて少しずつ増えたのと、ここ1年で大きく増えたのとでは、確認したいことが違います。
例えば、
「就職してから少しずつ増えた」
「在宅勤務になって歩かなくなった頃から増えた」
「数年前に増えたけれど、最近はほぼ変わっていない」
「最近になって急に増えた」
といった違いです。
20歳の頃の正確な体重を覚えていなくても構いません。分かる範囲で、
20歳頃 → 数年前 → 昨年 → 現在
と並べてみると、体重の変化が見えやすくなります。

体重が増え始めた頃に、
- 通勤や仕事が変わった
- 歩く時間が減った
- 夕食が遅くなった
- 間食や飲酒が増えた
- 睡眠時間が変わった
- 薬を飲み始めた
などの変化がなかったかも、思い返してみてください。
「太った=食べ過ぎた」と、食事だけで決めつける必要はありません。
② 今のBMIと、お腹まわりはどう?
次に、今の体格を見てみましょう。
BMIと一緒に確認してほしいのが腹囲です。腹囲とは、簡単にいうとお腹まわりの長さです。
「体重は去年とあまり変わらないのに、ズボンがきつくなった」
という方もいます。
体重、BMI、腹囲。
どれか一つだけですべてを判断するのではなく、いくつかを組み合わせて見ると、自分の変化が分かりやすくなります。
③ 健診の数字は、去年と比べてどう?
ここは、ぜひ体重と一緒に見てほしいところです。
例えば、
- 血圧
- 血糖
- HbA1c
- 中性脂肪
- LDLコレステロール
などです。
HbA1cって何?
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、最近1〜2か月ほどの血糖の状態を見る目安として使われる検査です。健診では、血糖値と一緒に載っていることがあります。
LDLコレステロールって何?
LDLコレステロールは、一般に「悪玉コレステロール」と呼ばれているものです。中性脂肪とは別の項目です。
そのため、「脂質が高かった」で終わらせず、LDLが高かったのか、中性脂肪が高かったのかまで確認してみましょう。
脂質についてもう少し詳しく知りたい方は、当院の「脂質異常症の症状は?」でも詳しく解説しています。
体重と健診結果を、並べて見てみる
例えば、20歳の頃より体重が増えた + 血圧も以前より高くなった。体重が増えた + HbA1cも上がってきた。体重が増えた + 中性脂肪も指摘された。というように見ていくと、単に、
「太った」
という話から、「今の健康状態をどう整えていくか」という話に変わります。
もちろん、血圧や血糖、脂質の異常が、すべて体重だけで起こるわけではありません。
だからこそ、体重だけを見るのでもなく、健診の数字だけを見るのでもなく、一緒に見る。
そうすると、自分が次に何を確認すればよいのかが分かりやすくなります。
20歳の体重まで戻した方がいい?
これも、よく気になるところです。
20歳の頃から10kg増えていたら、「では、10kg落とせばいいのでは?」と思うかもしれません。でも、
20歳の体重は、全員が戻るべきゴールではありません。
今55歳の人が、「20歳のときは55kgだったから、何が何でも55kgまで戻さないと」と考える必要はありません。年齢、現在の体格、筋肉量、健診結果、持病などによって、適した目標は変わります。
特に年齢が上がってくると、体重だけを落とそうとして、筋肉まで減ってしまうことにも注意が必要です。
健康のために体重を見直すのであれば、
「昔の数字に戻ること」より、「今、何を改善したいのか」を考える方が大切です。

「少し痩せるくらいでは意味がない」と思っていませんか?
「せっかく痩せるなら、10kgくらい落とさないと意味がない」そう考えて、最初から高い目標を立ててしまう方もいます。
でも、医学的に体重を減らす目的は、体重計の数字を大きく減らすことだけではありません。
例えば、肥満症と診断され、減量が治療として必要な方では、最初から標準体重を目指すのではなく、現在の体重から数%程度の減量を最初の目標とすることがあります。
80kgの3%なら、2.4kgです。
数%の減量でも、血圧・血糖・脂質などの改善につながることがあります。
つまり、
「何kg痩せたか」だけではなく、「何が改善したか」も見るということです。
もちろん、
誰でも3%痩せればよい、という意味ではありません。
そもそも減量が必要ではない人もいます。
体重を減らす必要がない人もいます
「20歳から10kg増えた」と知ると、すぐに食事量を減らしたくなるかもしれません。
でも、全員に減量が必要なわけではありません。
例えば、
- もともと痩せている
- 筋力がかなり落ちている
- 食欲が落ちている
- 意図せず体重が減っている
- 高齢で体力が低下している
といった場合には、
体重を減らすことより、栄養や筋力を保つことを優先した方がよい場合があります。健康のための体重管理は、「軽ければ軽いほどよい」というものではありません。
「自分は何kgまで痩せるべきか」を考える前に、そもそも自分に減量が必要なのかを考えることも大切です。
では、何から始めればいい?
いきなり、「食事を半分にする」、「毎日1時間走る」といった大きな変化を始める必要はありません。
まずは、
体重が増え始めた頃と、今の生活を比べてみるところから始めてみましょう。
例えば、
「以前より甘い飲み物が増えた」
「通勤がなくなって歩かなくなった」
「夕食の時間が遅くなった」
「お酒を飲む機会が増えた」
「間食が習慣になった」
などです。
一つ見つかれば、そこから見直していけばよいでしょう。そして、もう一つ意識したいのが、体重だけを記録して終わらないこと。
「体重は少し減った。血圧はどう?」
「腹囲は変わった?」
「HbA1cや中性脂肪は去年と比べてどう?」
というように見てみてください。
「何kg痩せたか」以外にも、健康状態の変化を見るポイントがあります。
健診で「要受診」「要再検査」と言われたら?
この場合は、まず、その指示を優先してください。
「少し痩せてから、もう一度考えよう」と自己判断で先延ばしにするのはおすすめしません。
体重が増えていたとしても、血圧、血糖、脂質、肝機能などの異常が、すべて体重だけで説明できるとは限らないからです。
健診結果を持って医療機関へ相談すると、
「どの項目を確認すればよいのか」
「生活を見直しながら経過を見てよいのか」
「追加の検査や治療が必要なのか」
を整理しやすくなります。
当院では、高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満症などの生活習慣病についても診療しています。
健診結果について相談したい方は、「一般内科」のページもご覧ください。
健康診断そのものについて確認したい場合は、「健康診断・定期健診・区民健診」でも当院で行っている健診についてご案内しています。
急に体重が増えた場合は、少し別です
今回の記事では、20歳頃から現在までの長期的な体重変化について説明しています。一方で、数週間〜数か月で急に体重が増えた場合は、同じようには考えません。
むくみや息切れなどを伴う場合には、単に脂肪が増えただけではなく、体に水分がたまっている場合などもあります。また、薬が体重増加に関係することもあります。
このような急な変化がある場合は、自己流で減量を始める前に医療機関へ相談してください。
よくある質問
20歳のときの体重を覚えていません
正確に覚えていなくても大丈夫です。
以前の健診結果などが残っていれば参考にできます。
分からない場合は、無理に数字を作る必要はありません。
20歳の時からの変化が10kg未満なら気にしなくてもいいですか?
10kgは、健診の質問で使われる一つの目安です。
9kgなら安全、10kgなら危険、という線引きではありません。
現在のBMI、腹囲、血圧、血糖、脂質などと一緒に見ていきます。
BMIが25未満なら、痩せなくてもいいですか?
BMI25未満だから必ず減量不要、とは言い切れません。
反対に、
20歳から10kg増えたから必ず痩せなければならない、
とも言えません。
今の体格と健診結果を一緒に見て考えます。
20歳の体重まで戻した方が健康になりますか?
全員が20歳の体重に戻る必要はありません。
若い頃の体重は、これまでの変化を知るための参考です。
今の年齢、体格、筋力、健診結果などを踏まえて目標を考えます。
食べる量は変わっていないのに太りました
体重は食事量だけで決まるものではありません。
活動量、睡眠、飲酒、薬、病気などが関係することもあります。
「食べていないのに太った」という場合も、
いつ頃から増え始めたのか
を手がかりに、生活や体調の変化を振り返ってみましょう。
20歳から10kg増えていたら、まず「今」を見てみましょう
健診で聞かれる、「20歳の時の体重から10kg以上増加している」という質問。これは、「10kg増えたから、10kg痩せましょう」という意味ではありません。
一度、20歳頃の体重 → 昨年の体重 → 現在の体重を並べてみてください。
そして、今のBMI・腹囲さらに、血圧・HbA1c・中性脂肪・LDLコレステロールなどの健診結果も一緒に見てみる。
そうすると、「昔より太った」というだけではなく、「今の自分は、何を見直した方がよいのだろう?」と考えやすくなります。
若い頃の体重は、戻るべき数字ではなく、これまでの変化を知るための一つの手がかりです。
大切なのは、「何kg痩せるか」を先に決めることではありません。今の体格と健診結果を見ながら、「そもそも自分に減量は必要なのか」
そして、必要なのであれば、「何を改善するために体重を見直すのか」を考える。
まずは、そこから始めてみてください。
医師プロフィール
林 祥史 院長
私立灘高校卒/東京大学医学部医学科卒
けやき脳神経リハビリクリニック 院長
資格・所属学会
【資格】 日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医、日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医
【所属学会】 日本脳神経外科学会、日本脳血管内治療学会、日本脳卒中学会、日本リハビリテーション医学会、日本頭痛学会、日本めまい平衡医学会、American Academy of Family Physicians、Cambodian Medical Association
クリニック情報
けやき脳神経リハビリクリニック
院長:林 祥史(・日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医・日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医)
所在地:東京都目黒区下目黒2-14-13下目黒HAPPYビル1~3階(受付2階)
診療科目:脳神経外科・リハビリテーション科・内科
検査設備:MRI、レントゲン、超音波など
公式サイト:https://keyaki-nrc.com/