「片耳だけ」のキーンとした耳鳴り・耳閉感(耳が詰まる)MRIで早期発見すべき「聴神経腫瘍」とは【医師監修】

「最近、片耳だけキーンと鳴る耳鳴りがする…」
「耳が詰まった感じ(耳閉感)が続いている…」
「電話で聞き返すことが増えた」

そんな症状を「疲れ」「加齢」「ストレス」と思っていませんか?
実はこれらは、聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)という脳の良性腫瘍の初期サインかもしれません。
耳鳴りや難聴は耳の病気と思われがちですが、脳神経の異常が関係していることがあります。
この記事では、「片耳の耳鳴り・耳が詰まった感じ」に隠れる危険な原因と、MRI検査でしか分からない早期発見のポイントを分かりやすく解説します。
聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)とは?良性でも放置できない脳の腫瘍
聴神経腫瘍は、脳から内耳へ伸びる聴神経(蝸牛神経)や平衡神経(前庭神経)を包む「シュワン細胞」から発生する良性腫瘍です。脳腫瘍全体の約7〜10%を占め、ゆっくりと成長するため初期症状に気づきにくいのが特徴です。
この腫瘍の多くは良性であり、早期に発見し適切な治療方針を立てることで、多くのケースで健康な生活に戻ることが可能です。しかし、放置すると次第に聴力・平衡感覚・顔面神経を圧迫し、進行すれば顔面麻痺・強いふらつき・水頭症など命に関わる症状を引き起こすこともあるため、早期発見・早期対応が極めて重要です。
初期症状に多いのは「片耳の耳鳴り」「耳が詰まった感じ」
聴神経腫瘍の初期には、多くの場合、片耳だけに症状が現れます。
ここで重要なのは、「両耳ではなく片側のみ」という点です。
👉 「耳鳴り 片耳」「片方の耳が詰まった感じ 」「ふらつき」といった症状がある場合、早期にMRI検査を受けることが極めて重要です。
顔面神経麻痺が伴うことも
聴神経は脳の中では顔の動きをつかさどる「顔面神経」と一緒に走行しています。そのため、聴神経腫瘍がある場合に顔面神経麻痺も伴い、片方の顔面の麻痺が出現することもあります。耳鳴りや難聴に、顔の動きにくさを伴っていた場合はすぐに脳神経外科を受診し、MRI検査を受けてください。
「耳鳴り」「難聴」「耳が詰まった感じ」─その原因疾患は?
「耳鳴り」や「難聴」「耳の詰まり感(耳閉感)」の原因には、以下のような疾患があります。
| 原因疾患 | 特徴 |
|---|---|
| 加齢性難聴 | 両耳で徐々に進行。高音が聞き取りづらくなる。 |
| 中耳炎・滲出性中耳炎 | 耳閉感や低音の難聴。耳痛や発熱を伴うことも。 |
| メニエール病 | めまいと耳鳴りを繰り返す。両耳性もある。 |
| 突発性難聴 | ある日突然、片耳が聞こえなくなる。耳鳴りや耳閉感を伴う。 |
| 聴神経腫瘍 | 片耳だけの耳鳴り・難聴・ふらつきが続くのが特徴。 進行すると顔面神経や脳幹に影響。 |
特に、片耳だけの耳鳴り・難聴・耳が詰まった感じが続く場合は、聴神経腫瘍を見逃さないよう注意が必要です。
MRIでしか分からない「聴神経腫瘍」の確定診断
「難聴」「耳鳴り」「ふらつき」の原因を正確に突き止めるためには、MRI検査が不可欠です。
当院のようにMRIを完備した脳神経外科クリニックでは、耳の奥の微小な病変を正確に確認できます。
✅ MRIが優れている理由
- CTでは見えにくい骨内部(内耳道)も明瞭に描出できる
- 2〜3mmの小さな腫瘍も検出可能
- 造影MRIにより腫瘍の境界・位置関係が明確化
✅ 特殊撮影法(FIESTA/CISS)でさらに精度アップ

MRIの中でもFiesta(フィエスタ)やCISS(シス/キス)という撮影法を併用することで、聴神経・顔面神経・血管などの位置関係をミリ単位で識別可能。
これにより、早期診断・早期治療・聴力温存につながります。
聴神経腫瘍・症例画像

反対と比べると黒く(低信号)なっているのが一目瞭然

FIESTA同様、黒くなっているのが確認できる。

約2mmの病変も鮮明に描出

FIESTA同様、微小な腫瘍が白く(高信号)として描出
何科を受診すべき?「耳の症状」でも脳神経外科も考慮
「耳鳴りや難聴は耳鼻科では?」と思う方も多いですが、片耳のみの耳鳴り・耳閉感・ふらつきが続く場合は、脳神経外科でのMRI検査を受けることをおすすめします。
耳鼻科で聴力検査を行い異常が見つかった場合も、最終的な診断には脳神経外科での画像検査が必要なこともあります。
放置せず、早めにMRI検査を
「片耳の耳鳴り」「耳が詰まった感じ」「ふらつき」がある場合、それは単なるストレスや疲労ではなく、脳からの警告信号かもしれません。
聴神経腫瘍は、早期に発見すれば経過観察で済むケースも多く、治療による聴力・神経温存の可能性も高まります。
片耳の耳鳴り・耳閉感が続くならMRI検査を
- 片耳だけの耳鳴り・耳閉感は「聴神経腫瘍」の初期サインの可能性
- MRI検査でしか分からない微小な腫瘍も存在
- 脳神経外科での早期診断が、聴力温存のカギ
ご自身の体のサインを見逃さず、早めの受診を。
ご相談・ご予約
当院では、MRI装置と脳神経外科専門医による診断を行っています。
「耳鳴り」「耳の詰まり感」「ふらつき」など気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
監修医師プロフィール
監修:林 祥史 院長
私立灘高校卒/東京大学医学部医学科卒
けやき脳神経リハビリクリニック 院長 (東京都 目黒区)
資格・所属学会
【資格】 日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医、日本脳血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医
【所属学会】 日本脳神経外科学会、日本脳血管内治療学会、日本脳卒中学会、日本リハビリテーション医学会、日本頭痛学会、日本めまい平衡医学会、American Academy of Family Physicians、Cambodian Medical Association