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顔面痙攣とは?まぶたのピクつき・口元の引きつりは何科?【原因と治療法を解説】

顔面痙攣 症状

「最近、目の周りがピクピクけいれんする…」 「笑うと口元が引きつってしまう…」 そんなお悩み、ありませんか? 最初は「疲れているだけ」「寝不足かな」と思っていても、症状が顔の片側に広がり、自分の意思と関係なく動くようになると、日常生活にも大きな支障をきたします。

人と会うのが億劫になる 、表情に違和感が出て、人間関係に影響しないか心配 … 外出や仕事に集中できず、つらい この症状、もしかしたら「顔面痙攣(がんめんけいれん)」かもしれません。放置しても自然に治ることは稀で、徐々に進行する可能性があります。

この記事では、顔面痙攣の診断と治療について、症状のセルフチェックから原因、そして治療法(治し方)まで、皆さんの疑問に一つひとつお答えします。

顔面痙攣の症状とは?まずはセルフチェック

顔面痙攣とは、顔の片側の筋肉が、自分の意思とは無関係に収縮する病気です。多くの場合、以下のような経過で症状が進行します。

初期症状: 目の周り(特に下まぶた)がピクピクする。

進行期: 痙攣が頬や口元、あごへと広がる。口が片方に引きつられる、目が開けにくくなる。

重症期: 痙攣が持続し、顔が歪んだような状態になる。話したり、食事をしたりするのも困難になることがある。

<重要ポイント>

ストレスや疲れで起こる一時的なまぶたのピクピク(眼瞼ミオキミア)との違いは、「症状が頬や口元まで広がるか」「数週間〜数ヶ月以上続くか」です。もし頬や口元にも症状があれば、顔面痙攣の可能性がより高くなります。

顔面痙攣の主な原因|神経を圧迫する血管の存在

顔面痙攣原因

顔面痙攣の最も一般的な原因は、顔の筋肉を動かす「顔面神経」が、脳の血管によって圧迫されることです。

顔面神経は、脳幹の「橋(きょう)」という部分から出てきます。そのすぐ近くを前下小脳動脈(AICA)や椎骨動脈といった血管が走行しており、加齢による動脈硬化などで血管が蛇行すると、神経に接触・圧迫しやすくなります。 血管からの圧迫で刺激された神経は、異常な電気信号を発生させ、それが筋肉に伝わることで「痙攣」という症状を引き起こすのです。

つまり、神経と血管の接触という物理的な原因がある限り、症状が自然に治ることはほとんどありません。

血管と神経 正常
正常な血管と神経の関係
血管と神経 圧迫
痙攣の原因となる血管と神経の接触

顔の痙攣や引きつりは、何科を受診すべき?

「目のピクピクくらいで…」とためらわれるかもしれませんが、症状が続く場合や口元に広がる場合は、専門医への相談が不可欠です。 顔面痙攣が疑われる場合、まずは脳神経外科を受診してください。 脳神経外科では、精密検査(MRI)によって神経と血管の状態を正確に診断し、薬物療法から根本治療である手術まで、一貫した治療を案内することが可能です。

診断にはMRIが不可欠|原因を「見える化」する

顔面痙攣の確定診断と治療方針の決定には、MRI検査が極めて重要です。 当院では、3D-FIESTA(フィエスタ)やCISS(キス・シス)といった、神経と血管を非常に鮮明に映し出す特殊な撮像法を用いて、以下の情報を正確に把握します。

MRIでわかること

  • 責任血管の特定
    • 神経を圧迫している血管の種類・位置・方向
  • 圧迫部位の確認
    • 顔面神経のどの部分が圧迫されているか
  • 他の病気の除外
    • 脳腫瘍や脳動脈瘤、多発性硬化症など、他の病気が原因でないかを確認します。稀に、動脈以外の静脈やくも膜が神経を圧迫しているケースもあります。

これらのMRI画像を3次元で再構成することで、神経と血管の位置関係を立体的な「設計図」として捉え、診断の精度を高めるだけでなく、安全な手術計画にも繋げています。

顔面痙攣の治し方|3つの治療法のメリット・デメリット

治療法は、症状の程度、原因、そして患者様のご希望を総合的に考慮して、専門医が最適な選択肢を提案します。

治療法メリットデメリット・注意点
① 薬物療法 ・手軽に始められる・効果は一時的・限定的
・眠気、ふらつきなどの副作用
・根本治療ではない
② ボツリヌス療法・外来で短時間に実施可能
・数日で効果が現れる
・効果は3〜4ヶ月で切れる
・繰り返し注射が必要
・根本治療ではない
③ 手術療法 (MVD)・唯一の根本的治療法
・成功すれば痙攣が消失する
・高い治癒率
・入院と全身麻酔が必要
・聴力低下などの合併症リスク(稀)

① 薬物療法 軽症の場合、神経の異常な興奮を抑える内服薬(カルバマゼピンなど)で症状を和らげます。ただし、効果は限定的で、根本的な解決には至りません。

② ボツリヌス療法(ボトックス注射) 痙攣している筋肉にボツリヌストキシンを注射し、筋肉の動きを麻痺させることで症状を抑えます。 外来で手軽に受けられますが、効果は3〜4ヶ月で切れるため、定期的な注射が必要です。根本治療を望まない方や、手術が難しい方にとって良い選択肢となります。

③ 手術療法(微小血管減圧術:MVD) 顔面痙攣を根本から治す唯一の治療法です。 耳の後ろの髪の生え際に約4cmの皮膚切開を行い、頭蓋骨に小さな穴を開けます。手術用顕微鏡を用いて、顔面神経を圧迫している血管を慎重に剥がし、テフロンというクッション材を間に挟むことで、再度の接触・圧迫を防ぎます。 経験豊富な脳神経外科専門医が執刀することで、合併症のリスクを最小限に抑え、非常に高い治癒率が期待できます。

症例

主訴:数年前からの、”右まぶた”から”頬”にかけてのピクつき

正常では…

”右まぶた”から”頬”にかけてのピクつきということでMRI検査を施行すると…

顔面痙攣MRA
血管がループしている
顔面痙攣CISS
ループ血管が神経を圧迫
圧迫された神経はピクつきなどの症状を出す

よくあるご質問(Q&A)

ストレスや疲れだけでも顔がピクピクしますか?

はい、「眼瞼ミオキミア」と呼ばれる生理的なまぶたのピクピクは、ストレス、睡眠不足、カフェインの過剰摂取などでも起こります。通常は数日から数週間で自然に治まります。しかし、症状が口元に広がったり、長期間続いたりする場合は顔面痙攣の可能性が高いため、一度専門医の診察をおすすめします。

MRI検査は痛いですか?時間はどのくらいかかりますか?

MRI検査に痛みは全くありません。横になっているだけで終わります。検査時間は10~15分程度です。検査中は工事現場のような大きな音がしますが、耳栓やヘッドホンで対応しますのでご安心ください。

手術は怖いのですが、本当に安全なのでしょうか?

手術と聞けば、誰でも不安に思うのは当然です。しかし、微小血管減圧術(MVD)は顔面痙攣の治療法として世界的に確立された標準的で安全な手術です。手術のリスクや期待できる効果について、丁寧に詳しくご説明します。不安な点は何でもご相談ください。

その顔の悩み、専門医と一緒に解決できます

顔面痙攣は、放置して自然に治ることはほとんどなく、進行するとQOL(生活の質)を大きく低下させます。 「この程度の症状で病院に行っていいのかな…」 「顔のことだから、誰にも相談しにくい…」 そのお気持ち、よく分かります。しかし、顔の表情はあなたの印象を左右する大切なものです。長年の悩みを解消し、心からの笑顔を取り戻すために、ぜひ一度、脳神経外科にご相談ください。