【MRI検査とタトゥー・刺青(入れ墨)】やけどするの?受けられる?安全性・リスク・注意点を解説

MRIとタトゥー・刺青(入れ墨)|検査は受けられるのか?【まず結論】
MRI(磁気共鳴画像診断)は、強力な磁場を用いて体内の詳細な画像を撮影する検査です。しかし、「刺青やタトゥーがあるとMRI検査を受けられないのでは?」と不安に思う方も少なくありません。
結論として、刺青やタトゥーがあるからといって、必ずしもMRI検査ができないわけではありません。 ただし、刺青のインクに含まれる金属成分がMRIの磁場に反応し、皮膚の発熱や軽度の火傷が生じる可能性があるため、安全性に最大限配慮しながら検査を行うことが非常に重要です。
当院では、できる限り多くの患者さんに安全にMRI検査を受けていただけるよう、1.5T(テスラ)のMRIを導入しています。一般的な3T MRIと比較して、1.5T MRIは刺青やタトゥーへの影響(特に発熱リスク)を抑えられるため、よりリスクを軽減しながらMRI検査を受けていただくことが可能です。
MRI検査での刺青・タトゥーのリスクと安全対策

発熱や皮膚刺激の可能性(タトゥーインクの影響)
刺青やタトゥーのインクには、酸化鉄やチタンなどの金属成分が微量に含まれていることがあります。MRIの強力な磁場とRF波にこれらの金属成分が反応することで、刺青やタトゥーのある部分が発熱したり、ピリピリとした皮膚刺激を感じたり、ごく稀に軽度の火傷が生じたりするリスクがあります。
特に、古い刺青(1980年代以前など)や、金属成分を多く含むインク(赤や黒など、特定の色のインクに多い傾向)が使用されている場合、熱感のリスクが高まる可能性が考えられます。一方で、近年のタトゥーでは、金属成分の含有量が少ない、あるいは含まないインクが使われることが多くなっており、比較的リスクは低い傾向にあります。
発熱や皮膚刺激は、タトゥーの大きさや濃さ、部位、MRIの機種(磁場の強さなど)によっても影響が異なります。検査中は、皮膚の違和感に注意することが重要です。
MRI画像に影響を与える「アーチファクト」とは?
刺青やタトゥーに含まれる金属成分は、MRI画像にも影響を与える可能性があります。金属が磁場に反応することで、撮影された画像にノイズや歪み(これを「アーチファクト」と呼びます)が発生し、本来見たい病変が見えにくくなるなど、診断精度に影響を与えるケースが報告されています。
アーチファクトの発生の有無や程度は、刺青に含まれる金属成分の量や種類、タトゥーの範囲などによって大きく異なります。広範囲にわたる大きな刺青ほど、画像への影響が出やすい傾向があります。
ただし、当院の頭部MRI検査においては、これまでに刺青が原因で画像に影響が出て診断が困難になったという経験はありません。多くのケースでは、アーチファクトが診断の妨げにならない程度に留まります。
MRI検査中に熱感や刺激を感じたら?患者さんの安全対策
MRI検査中に、刺青やタトゥーのある部分に熱感や皮膚刺激、ピリピリ感、かゆみなどの異常を感じた場合は、我慢せずにすぐに技師にお知らせいただくことが最も重要です。
MRI検査室には、患者さんが検査中に技師と連絡を取れるように、ブザーが備え付けられています。少しでも不安を感じたり、いつもと違う症状を自覚したりした場合は、無理をせず、迷わずブザーを押して検査を中断・確認してもらいましょう。安全にMRI検査を受けていただくために、患者さんと技師とのコミュニケーションが不可欠です。
MRI検査を受けるべきか?タトゥー・刺青によるリスクを比較検討

MRI検査を受けるリスク(火傷や皮膚刺激の可能性)
前述の通り、刺青やタトゥーがある方がMRI検査を受ける際に考えられるリスクとして、刺青部分の発熱や皮膚刺激、そしてごく稀に軽度の火傷が発生する可能性があります。
ただし、このリスクはすべてのタトゥーに当てはまるわけではなく、タトゥーの種類やインクの成分(特に金属成分の含有量)、入れた年代、部位、大きさなどによって程度が異なります。当院では1.5T MRIを使用し、このリスクを最小限に抑えるための対策を講じています。(大学病院など3Tと1.5Tを併せ持つ施設では安全のため1.5Tに限定して検査を行っている場合もあります。)
MRI検査を受けないリスク(病気の発見遅れ・診断の遅れ)
一方で、頭痛、めまい、手足のしびれ、脱力感など、何らかの気になる症状があるにも関わらず、刺青やタトゥーがあることを理由にMRI検査を受けない(入れ墨を理由に検査を断られる)という選択をした場合、その症状の背後に隠れている重大な疾患の発見が遅れてしまうという、別のリスクが発生します。
例えば、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍といった、一刻も早い診断と治療が必要な病気が原因である可能性も否定できません。診断や治療が遅れることは、病状の進行を招き、予後(病気の経過や回復の見込み)に大きく影響する可能性があります。
検査を受けるリスク vs 受けないリスクの比較
MRI検査を受けることで発生しうる刺青・タトゥーに関連するリスク(発熱や火傷など)と、MRI検査を受けないことで発生しうるリスク(病気の発見遅れや診断の遅れ)を比較検討することは非常に重要です。
多くの場合、特に症状がある方にとっては、MRI検査を受けないことで重大な疾患を見逃してしまうリスクの方が、刺青・タトゥーによる偶発的なリスクよりも、健康にとってより深刻な結果をもたらす可能性が高いと考えられます。
そのため、刺青やタトゥーがある場合でも、必要性がある際には、医療機関と十分に相談し、リスクを理解した上で、慎重に安全を確保しながらMRI検査を実施することが強く推奨されます。
刺青・タトゥー|安全にMRI検査を受けるためのポイントと当院の対策
なぜ1.5T MRIは刺青・タトゥーの影響が少ないのか?
MRIは強力な磁場とRF波(ラジオ波)を利用して体内の画像を撮影します。刺青やタトゥーのインクに含まれる金属成分は、このRF波に反応して発熱を引き起こす可能性があります。
1.5T(テスラ)のMRIは、3T(テスラ)のMRIに比べて磁場の強さが弱く、使用するRF波のエネルギーも相対的に小さいため、刺青やタトゥーの金属成分が反応して生じる発熱や皮膚刺激といった影響を抑えることができます。これにより、MRI検査に伴うリスクを軽減し、より安全な検査を提供することが可能になります。
当院で行う、タトゥー・刺青のある方のためのMRI安全対策
当院では、刺青やタトゥーがある患者さんでも、できる限り安心して安全にMRI検査を受けていただけるよう、以下の点を徹底しています。
- 事前の問診で刺青・タトゥーの有無を確認する
- 検査前に、刺青やタトゥーの有無、部位、大きさの情報など、安全な検査に必要な情報を可能な範囲で詳しくお伺いします。
- タトゥーの影響が少ない1.5T MRIを使用
- 前述の通り、3T MRIと比較して刺青・タトゥーによる発熱リスクを軽減できる1.5T MRIを検査に用いることで、物理的なリスクを抑えます。
- 検査中の患者さんとのコミュニケーション
- MRI検査中は、患者さんが熱感や皮膚刺激、痛み、かゆみなどの異常をすぐに技師に伝えられるよう、いつでも押せるブザーを必ずお渡ししています。何か違和感があれば、我慢せずにすぐにブザーで知らせていただくよう徹底しています。
- 検査を受けるべきかどうか、リスクとメリットを十分に説明する
- 患者さんと情報を共有し、納得の上で検査を進めます。
これらの安全対策により、当院では刺青やタトゥーがある方でも、より安心してMRI検査を受けていただける体制を整えています。
よくある質問(FAQ)|タトゥー・刺青とMRI検査
小さなタトゥーでもリスクはありますか?
はい、小さなタトゥーでもリスクが全くないとは言い切れません。タトゥーによる発熱や皮膚刺激のリスクは、タトゥーの大きさだけでなく、インクの成分や形状、MRIの機種など、複数の要因によって左右されます。タトゥーの大小に関わらず、必ず事前に申告し、医療機関の指示に従ってください。
眉毛やアイラインのアートメイクでもMRIは受けられますか?
アートメイクの色素にも、刺青やタトゥーのインクと同様に金属成分(特に酸化鉄など)が含まれている場合があります。そのため、MRI検査の際に発熱や皮膚刺激を感じたり、まれに画像に影響(アーチファクト)が出たりするリスクが考えられます。アートメイクをされている場合は、必ず事前に申告してください。アートメイクとMRIに関するさらに詳しい情報は、以下の記事で解説しています。
歯の矯正器具(ワイヤー、ブラケットなど)がある場合も同じように発熱リスクがありますか?
はい、歯の矯正器具(ワイヤー、ブラケットなど)やその他の歯科用金属(インプラント、大きな詰め物など)も、金属を使用しているため、MRI検査の際に発熱したり、アーチファクトが発生して診断画像が見えにくくなったりするリスクがあります。特に頭部MRIなど、金属がある部位に近い検査では影響が出やすい傾向があります。必ず事前に申告し、医療機関にご確認ください。歯列矯正とMRIに関するさらに詳しい情報は、以下の記事で解説しています。
過去にMRI検査で問題がなかったタトゥーでも、今後問題が起こる可能性はありますか?
過去のMRI検査でタトゥーに何も問題がなかった場合、同じ機種・設定での再検査であれば、同様に問題が起こるリスクは低いと考えられます。しかし、別の機種(特に磁場強度が異なる場合、例:1.5Tから3T)で検査を受けたり、異なる撮影条件(RF波の当て方など)で検査を行ったりする場合は、反応の仕方が変わる可能性もゼロではありません。安全のため、MRI検査を受ける際は、過去の経験に関わらず、毎回必ずタトゥーの存在を申告することが重要です。
タトゥー・刺青があってもMRI検査は可能!リスクを理解し、安全な検査を
ポイント
- 刺青やタトゥーがあるからといって、必ずしもMRI検査ができないわけではない
- タトゥーインクの金属成分による発熱や皮膚刺激、アーチファクトなどのリスクがある
- 古いタトゥーや金属成分が多いインクはリスクが高まる可能性がある
- 当院では1.5T MRIの使用、詳細な事前問診、検査中のコミュニケーションなど、安全対策を徹底している
- MRI検査を受けるリスクよりも、受けないことによる病気の発見遅れや診断の遅れのリスクの方が重大な場合が多い
刺青やタトゥーがあることで、MRI検査を受けることに不安を感じる方は少なくありません。確かに発熱や皮膚刺激といったリスクは存在しますが、それはタトゥーの種類やインク、そしてMRIの機種や安全対策によって大きく左右されます。
当院では、患者さんの安全を第一に、「検査を受けることのリスク」と「受けないことのリスク(病気の発見遅れなど)」の両方を医療機関として真剣に比較検討し、必要な方には最大限安全に配慮した上でMRI検査を実施することを大切にしています。
「自分のタトゥーでもMRIは受けられるのだろうか?」「どんなリスクがあるか具体的に知りたい」など、MRI検査に関して少しでもご不安や疑問がある方は、どうぞお気軽に当院にご相談ください。