頭痛
頭痛の分類
準頭痛は大きく3つのタイプに分類されます。
- 一次性頭痛
一次性頭痛は、他に明らかな原因がない頭痛で、代表的なものには以下が含まれます。- 片頭痛:拍動性で、光や音に敏感になり、吐き気を伴うことが多い。
- 緊張型頭痛:首や肩の緊張が原因で、締め付けられるような痛みが特徴です。
- 群発頭痛:非常に強い痛みが片側に集中し、涙や鼻水が出ることが多いです。
- 二次性頭痛
二次性頭痛は、他の疾患や状態に起因する頭痛です。- 風邪やインフルエンザなどの感染症
- 脳腫瘍や動脈瘤などの頭の中の重篤な疾患
- 薬物の副作用や過剰使用
- 頭部外傷による頭痛
- 神経病性頭痛
神経痛のように、神経が損傷したり刺激を受けたりすることで生じる痛みです。顔面神経痛や後頭神経痛がこれに該当します。
危険な頭痛のサイン
以下のような症状を伴う頭痛は、特に注意が必要です。すぐに当院を始めとする医療機関での受診をおすすめします。
- 突然の激しい頭痛(バットで殴られたような激しい痛み):くも膜下出血などの可能性があります
- 発熱・意識障害・けいれんを伴う:感染症や脳炎の可能性があります
- 頭痛とともに視覚や運動に異常がある:脳卒中や脳腫瘍の可能性があります
- 年齢とともに悪化する頭痛:特に50歳以上で初めて発症する頭痛は注意が必要です
片頭痛の予防
片頭痛は生活の質に大きな影響を与えるため、適切な治療と予防が重要です。
片頭痛予防薬は、特に以下のような方に使用を推奨します。
- 片頭痛発作の頻度が多い人
通常、月に4回以上の片頭痛がある方や、1回の発作が長時間続く方には予防薬が適していると考えられています。発作が頻繁に起こると、生活や仕事、日常活動に大きな影響が出るため、予防薬で発作の頻度を減らすことが目的です。 - 片頭痛の症状が重い人
発作が起こると日常生活が著しく困難になるような方や、痛みが強く、一般的な鎮痛薬では効果が十分でない場合、予防薬の使用が効果的です。また、発作が続くと服薬回数が増え、薬物乱用頭痛のリスクが高まるため、予防的なアプローチが推奨されます。 - 片頭痛がない時でも不安で生活に支障がある人
片頭痛の発作がいつ起こるかわからないという不安から、仕事や外出などが制限されるケースがあります。日常生活に支障が出るほど片頭痛の不安が強い場合、予防薬によって発作の頻度や強度を減らすことで、生活の質が改善されます。
片頭痛予防薬の使い方とメリット
予防薬は効果が現れるまで数週間かかることが多いですが、使用を継続することで発作の頻度や強さを軽減し、発作に対する不安を軽減します。一般的にはバルプロ酸ナトリウム(商品名デパケン)、塩酸ロメリジン(商品名ミグシス)、プロプラノール(商品名インデラル)、アミトリプチリン(商品名トリプタノール)などを利用いたします。また、後述する抗CGRP抗体などの新しい予防薬は、従来の治療で効果が不十分だった方にも有効とされています。
どの予防薬を使用するかどうかは、症状の程度や患者さんの生活への影響、副作用リスクなどを考慮し、相談して決定します。
予防薬としてのCGRP関連薬
片頭痛の発症には遺伝的要因や神経伝達物質が関与しており、近年、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)受容体が片頭痛に深く関わっていることが分かってきました。CGRPは、片頭痛が発生すると血中で増加し、頭の血管を拡張させたり、痛みの伝達を助長する働きがあります。そのため、CGRPと直接結合したり、CGRP受容体の活性を抑えることで片頭痛の予防効果が期待されています。
CGRP関連薬は従来の予防薬と異なり、月に1回から数カ月に1回の注射で効果を発揮するため、服用の負担が軽減され、長期的な片頭痛管理に有効です。
- 使用のメリット:発作の頻度や強さの低減が期待でき、特に従来の治療で効果が見られなかった方にも効果があるとされています。
- 副作用:注射部位の軽い痛みやアレルギー反応などが報告されていますが、比較的安全性が高いとされています。
CGRP関連薬として現在日本で発売されているのは、エムガルディ、アジョビ、アイモビーグの3種類があります。エムガルディとアジョビはCGRPに直接結合し、その活性を弱める薬であり、アイモビーグはCGRP受容体をブロックすることで活性を弱める薬です。
治療を始める場合、まず1か月に1回の注射を行います。3か月試してみて十分効果が得られると判断した場合、3か月に一度、3本投与を行うことが可能です。また在宅自己注射を行っていただくことも可能です。
生活習慣による予防
片頭痛の発生を抑えるためには、日常生活においてもいくつかの予防策を講じることが大切です。
- 規則正しい生活:睡眠時間の確保やストレスの管理が片頭痛の頻度軽減に効果的です。
- 適度な運動:軽いエクササイズが血行を促し、ストレスの解消にもつながります。
- 誘発因子の回避:チョコレート、チーズ、赤ワインなど、個々の誘因を特定して避けることも重要です。
片頭痛発作の治療
発作時のトリプタン系薬剤投与
スマトリプタン(商品名イミグラン)、ゾルミトリプタン(商品名ゾーミック)、エレトリプタン(商品名レルパックス)は、片頭痛発作時に使用される即効性のある治療薬で、トリプタン系の薬剤です。血管収縮作用を持ち、頭痛や関連症状の緩和に効果を発揮します。
- 作用機序:セロトニン受容体に結合することで痛みの信号を抑制し、片頭痛特有の血管拡張を収縮させます。
- 使用方法:発作が始まった際に服用し、必要に応じて追加の服用が可能です。
- 注意点:服用のタイミングが重要で、発作の初期段階で使用することでより高い効果が得られます。また、高血圧や心疾患がある方は慎重な使用が必要です。
小児の片頭痛
10歳前後のお子様で慢性的な頭痛で悩まれている方は結構多くいらっしゃいます。診察の結果、片頭痛が疑わしい場合、発作時の治療としてはイブプロフェン(商品名ブルフェン:1回5~10mg/kg)やアセトアミノフェン(1回10~15mg/kg)を推奨しています。
そでれも痛みのコントロールがつかない場合はトリプタン製剤の使用や予防薬を検討します。大人の場合と異なり、保険適応の選択肢は少なく、また副作用にも十分注意した投与量で経過を見る必要があるものの、うまく使うことで生活に支障をきたす片頭痛発作をコントロールすることができます。トリプタン製剤では6~12歳ではリザトリプタン(商品名マクサルト:20-39kgで5mg、40kg以上で10mg)の使用、13~17歳では他のトリプタン製剤を1錠内服を検討します。ガイドライン上ではスマトリプタン点鼻も嘔吐を伴う小児では推奨されておりますが、なかなか使い方が難しい印象です。
予防薬としては睡眠前のシプロヘプタジン(商品名ペリアクチン:0.1mg/kg)投与、もしくはバルプロ酸ナトリウム(商品名デパケン:1回200mg 1日1~2回)を利用することがあります。バルプロ酸ナトリウムのばあいは生活支障度が高く他の薬剤が無効の場合で、慎重に行います。
このように、片頭痛の治療には予防薬、発作時の対処薬、そして生活習慣の改善が欠かせません。患者さんが自分の症状やライフスタイルに合わせた治療法を選べるよう、情報をわかりやすく提供することが大切です。
筋性頭痛の治療と予防
筋性頭痛(緊張型頭痛)とは
筋性頭痛は、首や肩、頭の筋肉が緊張することにより生じる頭痛です。長時間のデスクワークやストレス、不良姿勢などが原因で筋肉が固くなり、血流が悪化して痛みを引き起こします。多くの方が経験する頭痛のタイプで、「締め付けられるような鈍い痛み」が特徴です。片頭痛と異なり、毎日夕方に痛くなる、もしくは毎朝起床時に痛くなるなど、筋肉へのストレスがかかる状況で持続的に起こるのが典型的な症状です。
治療方法
- 薬物療法
筋性頭痛に対する薬物療法としては、痛みを和らげる鎮痛薬や筋肉を和らげる薬を用います。特に症状が軽度から中程度の場合に使用されます。慢性的に頭痛が続く場合は、予防的に抗うつ薬や抗けいれん薬が処方されることもあります。 - 物理療法
筋肉の緊張をほぐすため、温熱療法やマッサージが有効です。温かいタオルやホットパックを使うことで、血行が促進され、筋肉のこわばりが和らぎます。また、ストレッチや姿勢矯正も治療の一環として行われます。 - リラクゼーション
リラクゼーション療法には、深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラックス法が含まれます。筋性頭痛はストレスとも関係が深いため、心身をリラックスさせることで、症状の軽減が期待できます。
予防方法
- 適度な運動
運動は筋肉の血流を改善し、緊張を和らげる効果があります。特に肩や首回りを動かすストレッチや、ウォーキングなどの軽いエクササイズを日常に取り入れると効果的です。 - 正しい姿勢の維持
長時間のデスクワークでは、背筋を伸ばし、肩がリラックスした状態を保つように意識しましょう。定期的に姿勢を見直し、正しい姿勢を保つことで筋肉の緊張を防ぎます。また寝ている間の姿勢も重要で、適切な枕・マットレスの選択をお勧めいたします。高すぎる枕や、柔らかすぎるマットレスを使用している場合、睡眠中ン頸部の負担がかかりますので、なるべく低い枕や、固めのマットレスの使用を推奨いたします。 - 休憩を取り入れる
同じ姿勢でいる時間が長いと筋肉が硬直しやすくなります。1時間ごとに休憩を取り、首や肩のストレッチを行うことで、筋性頭痛の発症を防ぎます。 - ストレス管理
筋性頭痛の予防には、ストレスを溜めない工夫も重要です。リラクゼーション法や趣味、家族や友人との交流を通じて、心身のリフレッシュを心がけましょう。
おわりに
筋性頭痛は日常生活に影響を与えることが多いため、予防と治療のバランスを取りながら生活することが大切です。症状が改善しない場合や、頻度が増えてきた場合には